突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

文字の大きさ
105 / 150
新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~

第二十三話 シルド大公の外遊 2

しおりを挟む

「そうですわよ、安くないのがいいですわね、旦那様!!
 とても魅力的ですわ、強く抱かれるのも‥‥‥」
 そう、言いアルメンヌは情婦の演技を始める。
 もっと抱きしめて愛してくださいませ、と。
 その言葉とは裏腹に、見えない場所でのシルドへの反撃は更にひどくなりつつあったが‥‥‥
「では、ただちに子爵様に連絡に参ります。
 しばし、お待ちください」
 そう言い、アルアドル卿がシルドとアルメンヌの横を通り過ぎる時。
 彼は目の端にアルメンヌの片手がシルドの脇腹に触れているのを見た。
 ほう‥‥‥?
 そう、心に何かを残して彼は宿を出る。
 アルアドル卿を避けようとしたシルドの側に立つアルメンヌがそれを軽く避けたことで、最年長のアルム卿もまた、あることに目がいった。
 それに気づかなかったのは、角度的に見えなかったイルバン卿だけかもしれない。
 彼はアルアドル卿が断ったことを、逆に申し出てきた。
「大公様、宜しいですか?」
「な、なにかな、イルバン卿?」
 ちょっと痛いんだがな、アルメンヌ?
 そろそろ離してくれ!!
 そう視線で彼女に訴えるが、彼女は報復の手を緩める気はないようだ。
 にっこりと笑顔で拒否されてしまう。
「先程の、アルメンヌの貸し出して頂ける件。
 本気でございますか?」
「はあ??
 いえ、わたしはその‥‥‥シルド様だけでーー」
 これにはアルメンヌが困惑の声と逃げようとしどろもどろになる。
 シルドは面白そうにニヤリと笑った。
「いいぞ、イルバン卿。
 しかし、なぜさっき言わなかった?」
 それは、とイルバン卿はアルム卿と顔を見合わせた。
「あの、アルアドル卿が最年少ですから。
 上の我らが言い出すよりは彼の方が、アルメンヌにも年齢が近いですしね‥‥‥。
 我らもそんな目で見られたくはありません。
 かと言って、アルメンヌはわたしと同じ赤毛の女性。
 何かこう、共通の感じあえるものを受け取りましてー‥‥‥」
 彼女が気に入っています。
 そう、イルバン卿は申し出た。
 シルドは、アルム卿を見やる。
 いいのか、と。
 彼は、まあ仕方がないでしょう。
 意地悪そうにそううなづいた。
「そうか、ではアルメンヌはいまから、イルバン卿を楽しませてくるがいい。
 ほら、行っておいで」
 うそ、そんな!?
 旦那様!!??
 声に出せない声をシルドは笑顔で受け流すとアルメンヌを、イルバン卿に押し出した。
「では、お借りいたします」
「え、ちょっと、そのーー閣下‥‥‥」
 シルドはニヤっと笑うのみだ。
 見捨てる気!?
 だがこんな初歩の初歩でつまづくわけにはいかない。
 ここは黙ってイルバン卿に抱かれるしかないのか‥‥‥
 アルメンヌはどこか諦めた顔で二階に連れられて行った。

「シルド様、脇腹は痛みますかな?」
 ふう、と椅子に腰かけたシルドにアルム卿は小刻みに笑いながら質問する。
 シルドも隠すことなく、つねられた場をさすっていた。
「ああ、なかなかにキツイ。
 アルメンヌは気性も男以上だ。
 で、どこで気づいた?」
「どこでといいますか、あれほど腕の線などが丸見えな衣装でいれば。
 多少、武術をたしなんだ者ならばどこに力が入っているかは丸わかりですな」
 さすが、最年長。
「なあ、アルム卿。
 あなたは単なる騎士ではないだろう?
 大公軍のどの位置にいられるのだ?
 エイシャ、いや、ユニス様はどこまでを見据えているかはわかるが。
 誰を付けられたかまでは僕にはわからない。
 それは聞いてもいいものなのかな?」
 はて?
 そんな高位の身分ではありませんよ?
 そうアルム卿はとぼける。
「現帝国宰相閣下のお側でいた程度です」
 なるほどな。
 それは精鋭中の精鋭だ。
 シルドは逆に安心した。
 これには、皇帝陛下の御意思も関わっているのだな、と。
「わかった。
 ところで、アルアドル卿もどうやら気づいた気配だし‥‥‥。
 問題は、あれ、だな。
 あの二人、どういう関係だ?」
 シルドは二階を見上げて、アルム卿の返事を待った。
 さきほどのアルメンヌの胸に触れたことをどうか、エイシャには言わないでくれよ、と心でアルメンヌに願いながら‥‥‥

しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さくら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

賢人 蓮
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

処理中です...