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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~
第二十三話 シルド大公の外遊 2
しおりを挟む「そうですわよ、安くないのがいいですわね、旦那様!!
とても魅力的ですわ、強く抱かれるのも‥‥‥」
そう、言いアルメンヌは情婦の演技を始める。
もっと抱きしめて愛してくださいませ、と。
その言葉とは裏腹に、見えない場所でのシルドへの反撃は更にひどくなりつつあったが‥‥‥
「では、ただちに子爵様に連絡に参ります。
しばし、お待ちください」
そう言い、アルアドル卿がシルドとアルメンヌの横を通り過ぎる時。
彼は目の端にアルメンヌの片手がシルドの脇腹に触れているのを見た。
ほう‥‥‥?
そう、心に何かを残して彼は宿を出る。
アルアドル卿を避けようとしたシルドの側に立つアルメンヌがそれを軽く避けたことで、最年長のアルム卿もまた、あることに目がいった。
それに気づかなかったのは、角度的に見えなかったイルバン卿だけかもしれない。
彼はアルアドル卿が断ったことを、逆に申し出てきた。
「大公様、宜しいですか?」
「な、なにかな、イルバン卿?」
ちょっと痛いんだがな、アルメンヌ?
そろそろ離してくれ!!
そう視線で彼女に訴えるが、彼女は報復の手を緩める気はないようだ。
にっこりと笑顔で拒否されてしまう。
「先程の、アルメンヌの貸し出して頂ける件。
本気でございますか?」
「はあ??
いえ、わたしはその‥‥‥シルド様だけでーー」
これにはアルメンヌが困惑の声と逃げようとしどろもどろになる。
シルドは面白そうにニヤリと笑った。
「いいぞ、イルバン卿。
しかし、なぜさっき言わなかった?」
それは、とイルバン卿はアルム卿と顔を見合わせた。
「あの、アルアドル卿が最年少ですから。
上の我らが言い出すよりは彼の方が、アルメンヌにも年齢が近いですしね‥‥‥。
我らもそんな目で見られたくはありません。
かと言って、アルメンヌはわたしと同じ赤毛の女性。
何かこう、共通の感じあえるものを受け取りましてー‥‥‥」
彼女が気に入っています。
そう、イルバン卿は申し出た。
シルドは、アルム卿を見やる。
いいのか、と。
彼は、まあ仕方がないでしょう。
意地悪そうにそううなづいた。
「そうか、ではアルメンヌはいまから、イルバン卿を楽しませてくるがいい。
ほら、行っておいで」
うそ、そんな!?
旦那様!!??
声に出せない声をシルドは笑顔で受け流すとアルメンヌを、イルバン卿に押し出した。
「では、お借りいたします」
「え、ちょっと、そのーー閣下‥‥‥」
シルドはニヤっと笑うのみだ。
見捨てる気!?
だがこんな初歩の初歩でつまづくわけにはいかない。
ここは黙ってイルバン卿に抱かれるしかないのか‥‥‥
アルメンヌはどこか諦めた顔で二階に連れられて行った。
「シルド様、脇腹は痛みますかな?」
ふう、と椅子に腰かけたシルドにアルム卿は小刻みに笑いながら質問する。
シルドも隠すことなく、つねられた場をさすっていた。
「ああ、なかなかにキツイ。
アルメンヌは気性も男以上だ。
で、どこで気づいた?」
「どこでといいますか、あれほど腕の線などが丸見えな衣装でいれば。
多少、武術をたしなんだ者ならばどこに力が入っているかは丸わかりですな」
さすが、最年長。
「なあ、アルム卿。
あなたは単なる騎士ではないだろう?
大公軍のどの位置にいられるのだ?
エイシャ、いや、ユニス様はどこまでを見据えているかはわかるが。
誰を付けられたかまでは僕にはわからない。
それは聞いてもいいものなのかな?」
はて?
そんな高位の身分ではありませんよ?
そうアルム卿はとぼける。
「現帝国宰相閣下のお側でいた程度です」
なるほどな。
それは精鋭中の精鋭だ。
シルドは逆に安心した。
これには、皇帝陛下の御意思も関わっているのだな、と。
「わかった。
ところで、アルアドル卿もどうやら気づいた気配だし‥‥‥。
問題は、あれ、だな。
あの二人、どういう関係だ?」
シルドは二階を見上げて、アルム卿の返事を待った。
さきほどのアルメンヌの胸に触れたことをどうか、エイシャには言わないでくれよ、と心でアルメンヌに願いながら‥‥‥
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