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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~
第三十話 シルド大公の外遊 9
しおりを挟むあれから、数時間も経過しなかっただろう。
自分の頭と首のしたにぬくもりを感じてアルメンヌはまぶたを開いた。
「‥‥‥大公閣下‥‥‥???」
シルドの顔が自分を見下ろしていた。
まさか!?
彼の膝上で、自分は寝ている!???
そのことにはっ、となり慌てて顔をあげようとするアルメンヌをシルドはいいよ、そう語り掛けた。
「気にするな。
その首の怪我を癒すために必要な距離だっただけだ。
生きていてくれてよかった。」
「旦那様、そんな言い訳ーー天才魔導師が距離なんて関係ないでしょ?
なぜ、こんなに優しくしてくれるのですか??」
まさか、情でも移りましたか?
アルメンヌは悪ふざけを言って退けた。
「そうではないが‥‥‥エイシャにも同じ事をしたことがある。
僕は、あの子の為に償いをしなければならない。
付き合わせてすまない」
「なにが、つきあわせ済まない、よ!?
誰?
抱き上げて愛してる、俺のアルメンヌ。
何て言ったのは?
閣下には演技でも、この、聞いてましたよね?
あの会話?
このアリアには‥‥‥アリアの心は、演技でなくもう閣下に向いていますわ‥‥‥
本当に、罪なお人。
エイシャが羨ましい」
「おっ、おい‥‥‥??」
アルメンヌの両手がシルドの顔をそっと包みこもうとしていた。
それはだめだ、とシルドはその手を引き寄せるアルメンヌに抗う。
「なんでよ!?
こんないい女がキスしようとして、こんなにいい雰囲気なのに!
シルドのばか!!」
ふんっ、知らない。
そう言い、アルメンヌは横を向いてしまう。
そして、静かに。
そう、苦しく辛い思いを漏れ出すかのように、シルドに問いかけた。
「‥‥‥見ました‥‥‥か?」
そう言い、身体を覆うシーツを自分でのける彼女は、止めるシルドを見据えて問いかけた。
「醜いですか!?」
と。
「いやーー」
シルドは瞳を伏せて優しく首を振る。
「綺麗だよ。
だが、そのーーなんだ。
エイシャに叱られるから‥‥‥すまない、あまり見れないんだ」
「なんですか、すぐにエイシャ、エイシャって。
はあー‥‥‥せっかく誘惑しても全部、断られるんだから。
プライドが傷つくわ」
呆れたように言うアルメンヌはそれでいて、エイシャが羨ましいとも思っていた。
こんな男性にもっと早くであえていたら。
あの子爵家で、もっとまともなーーいや、あの傭兵団に入ったことが人生を狂わせたのだ。
「こんなわたしみたいな女を少しでも減らしたい。
それが、閣下の願いですか?」
「そうだよ。
そして、ユニス様やエイシャの希望でもある。
君はどこまで知っているんだい?」
「どこまでも何も‥‥‥殿下の再興をするために、は知ってますよ。
その後はー‥‥‥ねえ、わたしとエイシャと三人で暮らしませんか?
側室でも第二夫人でもいいです。
あなたといたいわ」
あのなあ‥‥‥シルドはそう迫るアルメンヌに冷や汗をかく。
「十年後には貴族じゃないぞ?
単なる平民だ‥‥‥」
「それでもいいわ。
あなたといたいの。
もう決めた!
さ、行きましょ、旦那様!!
‥‥‥逃がしませんからね?」
回復したのは身体だけではなかったらしい。
とんでもない爆弾を抱え込んでしまったとシルドは困惑していた。
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