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同居の御曹司は甘やかすのがお好き
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しおりを挟む「っ……ごめん!」
慌てて離れると優磨くんも「ごめん……」と顔を真っ赤にして、私の横を抜けてリビングに行ってしまった。
「…………」
思わず両手で自分の頬を触る。横の鏡を見ると優磨くんと同じくらい顔が赤い。頬は熱を持っている。
いくらなんでも近寄りすぎた。適度な距離を保つと決めたのに、これはルール違反になりかねない。
リビングに戻ると「今日カレーのつもりだったけどシチューにするね」と寝室で着替える優磨くんの背中に話しかける。今ならまだシチューに方向転換できる。ご飯は炊いちゃったけど明日食べればいいや。
優磨くんは何も言わず寝室から出てきた。私の顔を見ようとしないので怒っているのか不安になる。私がここに居るだけで落ち着かないだろうに、プライベートを邪魔されていい気がしていないかもしれない。馴れ馴れしくしちゃいけない。只の同居人が体を近づけちゃダメだ。
「あの……優磨くんはシチューはパン添える派? それともシチューをご飯にかける派?」
「…………」
「優磨くん?」
「あ、ごめん……どっちでもいいよ。波瑠に合わせる」
「そっか……」
目を合わせてくれなくなって困った。近づいたのがよくなかったよね……パーソナルスペース大事。
「ネクタイはシミ落ちるかやってみるね」
「うん……ごめん」
ごめん、なんて言わなくてもいいのに。優磨くんのためなら私はどんなことでも苦じゃないのだから。
会話の少ないままシチューを食べた。気まずいけれどテレビでバラエティ番組を流してくれたのは救いだ。静かだったら耐えられない。
食べ終わって食器を洗っていると優磨くんが声をかけてきた。
「明日の休みどっか行こうか」
「あ……ごめん、明日面接なの」
「え? もう?」
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