冷然主人は男装騎士に一途

三島 至

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俺の嫁になれ

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「喜んでくれ、“スノウ”! 君との結婚を認めてもらえたんだ!」

 逸る気持ちを抑え切れず、ノックもそこそこに、俺が宛がったスノウの部屋へと入る。
 俺の未来の嫁は、剣の手入れを一度止めて、きょとんと首を傾げた。

 ※

 初日に色んな事が一気に起こったから、疲れが限界だったのだろう、リオートは倒れてしまった。
 俺は大慌ててリオートを抱き上げ、部屋に運ぶと、ベッドに寝かせた。そして横の長椅子に腰掛け、彼女が目覚めるのを待った。

 リオートの美しい瞳を再び拝めたのは、翌朝になってからである。
 結局徹夜で彼女の寝顔を見守ってしまった訳だが、疲れは感じず、俺は歌いだしそうな程機嫌が良かった。

 リオートは女性だった。
 俺の悩みは解消したのである。

 あとは、どうにか結婚してくれるよう口説き落とさねばならないが、「俺のために死ねる」とまで言ってくれた彼女である、正攻法で告白していれば、いずれ頷いてくれるだろう。

 俺の顔を見て飛び起きたリオートは、まだ寝起きで頭が働いていなかったのか、ベッドに寝かされている事を疑問に思っているようだった。
「リオートが昨日倒れたから、俺がここまで運んだんだ。姫抱きで」
 最後の一言が余計だったのか、リオートは若干頬を引きつらせていたように思う。

 結局、雇って一日目で、俺の護衛騎士は女性だったと判明したが、それは全く問題がないどころか、願っても無い事実であった。
 俺は大喜びで、「俺のために何でもしてくれると言ったよね、じゃあ結婚しよう、お願いだから」と必死に言い募り、返事に困っているリオートに、「今すぐ返事をしろとは言わない。明日……明後日くらいまでは待つから! 結婚して!」と、ほぼ無い猶予と、あるようで無い選択肢を示して、半ばむりやり屋敷に滞在させた。

 騎士の道を選ぶために、リオートは相当の努力をしてきたはずだ。矜持もあるだろうし、「俺の嫁になれ」と言われて、騎士を辞めて妻になろうなどと、急に決断出来るものでは無いだろう。
 俺は、騎士として戦うリオートの姿にも惚れているので、彼女に騎士を辞めて欲しいとは思っていなかった。
 リオートに守られるのは嫌いじゃない。
 可愛い上に格好良い嫁、最高じゃないか。

 でもやっぱり、死なれるのは困る。
 俺の知らない所で、勝手に傷つくのも駄目だ。
 そのへんはちゃんと含ませて、騎士としてのリオートを認めていると伝えた。
「俺の事を守りたいなら、騎士兼、嫁で解決だ。嫁、妻、奥さん」
 認めてはいるが、結婚は譲れないので、あくまで「嫁」は強調しておく。

 リオートは、父親との間に問題があって、自分の容姿を醜いと思い込んでいるようだった。
 とんでもない事である。
 これはきちんと否定しておかなくてはならない。
「リオート、これは純然たる事実だから、お世辞でも何でもない。君を見て、美しいと思う人はいても、醜いと思う人は一人もいないよ。断言出来る」
 真実を教えたが、長年染み付いた意識はそう簡単に拭いきれるものでは無いようで、彼女は戸惑うばかりで、中々納得はしてくれなかった。
 俺はしつこいので、「可愛い」「ほんと顔が良い、顔以外も良い」「男装姿も格好良い」「美人」「こんな好みの人見た事無い」と繰り返し言っていたら、段々自覚を持ってきてくれたらしく、褒める度に、「あ、ありがとうございます……」と頬を染めてくれるようになった。
 この調子で口説いていこうと思う。
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