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167.全然笑えない。

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「共同体のシステムについて詳しく教えてくれない? 」
 シークがコリンに尋ねた。
 コリンは頷き
「共同体の目的は「一人では出来ないことでも、協力すれば大きな力となる」ってことです。
 同じような系統の魔法を使う人間が共同体になりやすいのはその為です。
 「魔力が反目しあわない」のが一番考慮される点で、「性格的に相性がいい」というのは考慮されません。
 寧ろ、一緒にいることによって悪い結果を招きそうな人間同士が組むことが無いように‥熟考に熟考を重ねます」
 それはそうだ。
 シークが頷く。
「それでも間違いは起こります。
 共同体内で問題を起こした‥とか、メンバーから苦情が出る‥とかそういった場合は共同体が解散になります。
 ‥そうですね。
 逆にいうと、「そんなことでもない限り共同体は解散にならない」です」
「成程‥まあ、そこまで関与できないし‥たくさんある共同体を管理することなんて出来ないよな」
 アンバーも頷き
「だけど、今までそう問題は起こらなかったんだろ? 」
 コリンに問いかけた。
 コリンは頷き‥コホ‥と小さく咳をした。
 さっきから話通しで喉が渇いて仕方が無い。
「すこし水を飲んでも? 」
 立ち上がろうとしたコリンをシークが制して、お茶を淹れるために台所に向かった。
「‥探査結界を飛ばしてるから、ちょっと魔力の減りがいつもより激しいんだ」
「ああ‥ガーネットの? 」
 ロナウの質問にコリンが頷く。
「何か動きはありそうですの? 」
 フタバがコリンの背中を撫ぜて労わる。
「今のところ‥ないみたいだね」
「共同体の常時通信システムはそれと同じような仕組みなのかな‥」
 ロナウが首を傾げると、コリンは首を横に振った。
「その魔力どこから持ってくるんだよ‥。リーダーが担うにはきつすぎるぞ。ガーネット一人分でもそこそこ魔力使ってるのに、共同体のメンバーは最低でも自分を入れずに2人。‥それを常時‥」
「リーダーだけじゃなくメンバーも魔力を分け合ってるとか? だって、合わせ技とかする時は、チーム全員力を合わせるわけだから‥」
 フタバの意見にコリンははっとした様な表情をした。
「‥そうかも‥。自分の魔力があり余り過ぎてるから‥そんなこと考えもしなかった‥」
「「‥‥‥」」
 思わず黙るフタバとロナウ。

「でも、ホント凄い偶然よね。
 共同体のメンバーは教会が選んで協会が審議する‥反対? 協会が打診して、教会が審議する?? まあ‥とにかく学生が選ぶわけじゃないのに、コリンがリーダー‥なのは分かっていたとして‥メンバーが私とロナウになるなんてね」
「あ~。それは、僕が頼んだ。教会の方でもロナウは比較的あっさり「いいよ」って感じだった。ロナウって似たような魔力の人間がいなかったし‥在学中から卒業後騎士紋に変えるかも‥って相談教会の先生にしてたんでしょ? だから、厄介な奴認定されてたみたい。問題児ってわけじゃないけど、ちょっと取り扱いに困る‥みたいな感じね。だから、僕がお願いしたら、割とあっさり。
 フタバちゃんは結構頑張った。なんせ、フタバちゃんが居なきゃ困るから、寧ろフタバちゃん獲得には力を入れた」
「‥‥」
 ロナウ絶句。
「‥どうやって説得しましたの? 」
 フタバ、恐る恐る。
「結構色々言ったよ。それこそ就職活動より必死だった。頼み込んだり、泣き落とししたり‥。
 で、最終的には暗い顔で
 ‥フタバちゃんがいないと、僕闇落ちしそう‥
 って言ったら、驚くほどあっさり」
 ‥あり得る。ヤバいって思われたんだろうな。
 でも、当時のフタバも「この子ならコリンを救える」って感じじゃなかったと思うんだけど‥。コリンと負けず劣らずの鉄仮面だった。寧ろ‥「似た者同士で実は仲がいいのかも」って思われてた?

 しかし、コリン‥無茶苦茶だな。

 呆れるフタバとアンバー
 落ち込んだままのロナウ。
 首を傾げるコリン。
「‥お茶にしよう。‥どうした? 泣いてるのか? ロナウ」
 そこにシークがお茶をお盆に乗せて戻ってきた。
 人数分同じカップが無いから、フタバとロナウは来客用。アンバーとコリン、シークは自分用のカップを使用している。
「ここで一緒に暮らすんだから、カップは自分用のものを購入しよう」
 ってザッカさんが買ってきてくれた色違いのカップだ。
 ナナフルは水色。ザッカはオレンジ。シークは緑。アンバーは赤。コリンは黄色だ。
「‥優しい‥シークさん‥。好きです‥」
 で、普段誰からも優しくされないロナウがシークの優しさに感激し‥ころっと惚れて‥
 アンバーは晴れて自由に。

 ほら、やっぱり顔より人柄でしょ? でも‥シークさんは渡さないよ!

 余計にコリンのロナウに対する扱いが悪くなることが確定した瞬間だった。

「‥ええと。さっきいなかったシークさんの為に話をちょっと戻すね。
 普通はメンバーは教会と協会が選ぶんだけど、僕たちだけは僕が選んだって話。
 僕はほら、成績優秀で‥まあ、それ以上に「何するかわからん」危険人物だったから、大概の我儘は通ったんだよ」
 フタバが微妙な笑顔で頷いた。
 ‥逆らわないでおこうって感じだったのかな。それでいいのか‥教会。
 って苦笑いだ。
「儀式で、リーダーの任命式が行われるんだよね。それってどういうもの? 」
 シークが苦笑いして話を変えた。
「私はこの力を悪用しませんって誓約して、協会から「この力」‥つまり、共同体のメンバーの力を纏める力を授かります」
「誓約って‥コリンも使ってる奴? 」
 シークが首を傾げる。
「そうですよ。でも、僕が使ってる誓約は、『この誓約は、汝の魂との誓約である。誓約を違えたら‥その時は‥無事では済まない。刑法で裁かれる。っていう、一般の人間にも適応される契約だ。
 誓約を違えたら刑罰が即下されるってイメージが強いですけど、実は普通に異議申し立ても可能なんです。‥どう考えても「異議申し立てを聞くまでもなく‥」って奴が多いからこれは案外知られてないんですけどね。
 だけど、誓約の儀式の「誓約」は、魔法省管轄の魔法法によって管理されている。
 ‥普通に、法を犯した瞬間、有無もいわず焼かれる‥そんなレベルの奴で、洒落ならないレベルの奴なんです。
 魔法使いの尊厳と権利を守る為、並大抵の覚悟でリーダーを名乗るな‥ってことですね」

 だって、リーダーとして力を使う際はメンバーの命も預かるわけだから。

「うわ‥絶対嫌だ‥。リーダーなんて任命されたくない」
 ロナウがゾッとしたって顔でのけ反り、アンバーも同意する。
 コリンはふふっと笑って
「だから、勿論拒否する人間の方が多いですよ。もしくは、就職の時にプラスになるからリーダーにはなるけど、一生その力を使わない人間の方が圧倒的に多いですね。
 共同体として年に一回集まって状況報告したりするだけ‥っていう平和な共同体が多いらしいですよ。中にはメンバー同士で結婚する人たちなんかもいますしね。
 平和な共同体が殆どなんですけど、三角関係でややこしいことになって、リーダーがリーダー特権で誓約違反をして‥ってトラブルが過去にあったみたいですね。その時のリーダーも焼かれたみたいです」

 全然笑えないこと言った。
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