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228.フタバのホントのホント。(side ロナウ)

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 ロナウはフタバを見た。
 どんな顔してるかな‥って思った。
 だけど、ちょうどロナウに背を向けて‥コリンと向き合っているフタバの表情はロナウには見えなかった。
 そのことに‥もどかしいって気持ちはあったけど、だからといって、彼女の正面にまで移動してその顔を覗き込むのも変だって思った。
 ‥声を掛けて振り向かせるとかは違う。その表情はきっと「ホントの表情」ではないだろうから。

 ロナウは今の表情‥フタバのホントを想像した。
「そんな怖いことは嫌だ」
 って顔? 
 ‥でもそれは、しない気がする。フタバはそんな子じゃない。人にキツイ役押し付けて、自分は安全な場所‥とか彼女は一番嫌がる。
 だけど、わざわざ危ないことはしない。
 より安全で効率的な方法を考える。
 だから彼女は‥一番頼りになる。
 
 彼女は強い人だ。
 綺麗で賢くて、高嶺の花っていうの? 兎に角僕とは住む世界が違う人間だ。
 学生時代の彼女に対するロナウの認識はこうだった。
 これ以上でも、これ以下でもなかった。
 学生時代はとにかく「コリンが一番好き」って思い込んでた。
 一番可愛いのもコリンで、一緒に居たいて思うのも、コリン。触ってみたいな、も、付き合いたいって思うのも、コリンだけ。‥他の子なんか目に入らなかったんだ。

 好きだとか嫌いだとかとは別に、女性は守らなければいけないって思う心はある。
 だけど、それは「女性が弱いから」とか‥そういう理由があるのではない。
 ただ、それが当たり前だと教えられてきたからだ。
 女性だから‥とか弱いから‥とかじゃない。
 教えられてきたこととは別に、「そうありたい」「そうしたい」があった。
 例えば、愛する人が出来たら、自分は命に代えてもその人を守りたいって思ってきた。そういう自分でありたいって思ってきた。

 ‥僕の理想の人は「最初っから守ってもらうのを当たり前だと思っている人」じゃないけど、だけど、お互いのこころの支えになり、お互いが物理的にも頼りにしあっている‥そういう「信頼関係」に凄く憧れている。
 信頼し合っているパートナーが、お互いに自分の苦手な分野を補い合い、お互いの弱い部分をさりげなくフォローしあうって‥そういうのが理想だ。

 初めっからおんぶにだっこな依存タイプには興味は無いけど、全然信用されてません、期待されてません、何なら「私が守ってあげるわ」って思われる‥とかは問題外なんだよね‥。

 そうだな~「私は大丈夫よ! だけど、‥もし、私がうっかり見落としてる敵とかいたら‥その時は助けてね! (照れながら)私は、ロナウのことを一番信用してるの‥」って感じかな~。で、僕が「分かった。その時は僕が命に賭けても君を守るよ」って言って、相手が「命なんて簡単に賭けないでよ! 私にとって、ロナウは私の命なんかよりもっと大事なんだから‥」って‥顔を真っ赤にして怒って、‥ちょっと泣きそうな顔をするんだ。
 ‥そういうの、いいな~。(だいぶ夢見がち)

 だけど‥
 フタバちゃんと僕はそういうのじゃない。
 フタバちゃんはきっと「私は大丈夫! 」っていうだろうけど、いざとなっても僕を頼ったりしない。「私の命よりロナウが大事」とか‥絶対ない。
 そういうイメージが全然ない。
 ‥そうなると、ちょっと僕も「愛されてる感じするな~」って思えないし、「命に代えて守りたい! 」って思えない。ちょっと人間的にちっさいな~って思えるかもしれないけど、それは‥仕方が無いんじゃない? 
 
 でも‥これは全て「僕のイメージ」であって、フタバちゃんに聞いたわけでは無い。
 フタバちゃんのホントは、フタバちゃんしか知らない訳だし、フタバちゃんの口から聞かないと分からない。‥でも、フタバちゃんが僕らにホントに全部‥ホントを話してくれるかってのは‥分からない。
 強がりで「大丈夫」っていうこともあるだろうし、あんまり信用してなくても「信用してる」って言う事もあるだろう。
 そういう風に言う事がこの場には必要だって判断すれば、フタバちゃんはそういう風に言うだろう。

 フタバちゃんのホントのホントなんて、きっと一生分からない。
 
 そんなことを思いながら、フタバちゃんと向き合っているコリンの表情を見た。
 コリンの表情は‥
 ‥引きつってる? 苦笑い? 

「仕方ないですわね~。コリンもロナウも‥私がいないと何もできないんだから! いいわ、私がコリンのこともロナウのことも守ってあげますわ! 」
 フタバがご機嫌な口調でそう言った、腰に手を当てた。
「いいと思いますわよ。出来ないことは出来ない、で。私、‥無理をすることが一番ダメだって思いますの! 」

 フタバちゃんは、全然「一生分からない」とかじゃなくって、‥僕がさっき想定した「問題外」そのものだったのだった。
 全然信用されてない、期待されてない‥とまでは‥いかないだろうけど。
 そう思いたいロナウだった。
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