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閑話 その頃の‥(ロナウ)
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「ロナウ、貴方これからどうするの? 」
呼び出されたフタバちゃんから開口一番言われた言葉がこれだった。
急に呼び出されたから、
これは婚約破棄の話だな。
って思ってたんだけど、フタバちゃんからその話はなかなか出てこない。
こっちは覚悟は出来てるんだから、さっさと言ってくれって思ってるんだけど‥。
かといって僕の方から
「あの話‥白紙に戻そうか」
って切り出すのも変じゃない?
そんなこと思いながらコーヒーを飲む。
フタバちゃんはケーキと紅茶だ。
一口飲んで
「おいし」
とか微笑む彼女の顔はいつも通り作り物かって思うほど美しくって‥なんだか自分と会ってるのが嘘みたいに思えて来る。
だから
僕との婚約なんていう‥僕の友達誰に話しても信じてくれないような「嘘話」さっさと解消してしまわないといけないんだ。
‥教会の同級生もあの時はフタバちゃんの手前
「おめでとう! 」
とか笑顔で言っていたけど、後で
「‥どうせ嘘なんだろ? 」
って聞いて来た。
ハイ嘘です。
とも言えず
「ご縁があってね」
という‥なんとも曖昧な返事をしておいた。
悔しそうな顔をする者。
「君は平凡な僕らの希望の星だよ」
って褒め称える(皮肉かもしれない)者それぞれだ。
そして、皆一様に羨ましそうな顔して
「ベネット嬢によろしくね」
って言って帰っていった。
よろしく言ってどうするんだ。
よくわからんなあ。
僕と別れたら、自分とのこと考えてくれませんか? よろしく。
ってこと??
あり得ないから! でも、僕があるなら自分もワンチャンあるかもって思ったってこと?
‥まあ、それ位あり得ないよね。
そんな「今世紀始まって以来の珍事」も今日で終わる。
って覚悟して来たのに‥
なんか普通にお茶飲んでる。
「これからって? 」
婚約を破棄してからどうする? ってこと?
でも‥そういう聞き方じゃなかったな。
僕が首を傾げて聞くと、
フタバちゃんが
「仕事のことよ。今みたいに出番待ちみたいなことやってるわけにはいかないでしょ? ましてやお兄さんの影武者とか‥あり得ないでしょ。せっかく騎士になったんだから騎士団に入ったらいいのに」
顔を上げて、まっすぐ僕を見て‥真剣な表情で言った。
「騎士団かあ。あれだけ僕が剣を持つのを反対してたフタバちゃんがそんなこというなんて思ってなかった」
僕は苦笑いした。
真剣に心配されてるのになんて変事だって思うけど‥自分でも思うんだけど、咄嗟にそんな言葉しか浮かばなかった。って言うか‥咄嗟にそんな言葉が口から出て来てしまった。
あれだ。ただただ‥びっくりしたんだ。
そんな僕にフタバちゃんは、真剣な表情のままで‥
「父さんがロナウを騎士団に連れてこいって言ってる」
って言ったんだ。
なにそれ、怖い。何されるんだ??
娘に何もしてないだろうな、ってこと??
してないです! 何もホントに何も‥してないです!
でも、騎士団長で、しかもフタバちゃんの父親である人の命令に逆らえるわけもなく‥
僕は次の日、大人しく騎士団に向かった。
勿論、一人でだ。
入口で騎士の人に「さて、なんて言おうか」なんて考えながら、とにかく名前を告げた僕に騎士(なんか女子に人気のありそうなイケメンだった)は「あ、その名前聞いてるよ」ってフランクに言うと、団長の執務室に案内してくれた。
‥個別呼び出し‥。ダメだ、ここで起こったことは誰も関知しない的なプライベート空間‥。
ぎゅっと目を瞑り俯き、(なぜか)殴られる覚悟をした僕の頭上から降ってきた団長の低い声‥。
「あの約束を忘れてないだろうな? 」
‥あの約束?
あの婚約は偽物って話? ‥いや違うか? あれは別に騎士団長に約束したわけじゃない‥よな?
「約束? 」
恐る恐る頭を上げると、怖い顔した騎士団長と目が合った。
‥怖い!!
「君は俺に約束したじゃないか。フタバを守るって。一生」
‥しましたっけ??
何もかもが嘘だから、どういう話をしたかも覚えてないです‥。
「いい‥ましたかね? 」
首を傾げると睨まれた。あまりの怖さに
「はい、‥しました! しました確かに」
って条件反射で言ってしまった僕を許してほしい。
騎士団長は何故か満足げにニヤリと微笑むと、
「騎士が一度約束したことを違えるなんてあってはいけないことだよね」
って‥言ったんだ。
え?? 僕は‥何か‥とんでもない人に捕まった??
呼び出されたフタバちゃんから開口一番言われた言葉がこれだった。
急に呼び出されたから、
これは婚約破棄の話だな。
って思ってたんだけど、フタバちゃんからその話はなかなか出てこない。
こっちは覚悟は出来てるんだから、さっさと言ってくれって思ってるんだけど‥。
かといって僕の方から
「あの話‥白紙に戻そうか」
って切り出すのも変じゃない?
そんなこと思いながらコーヒーを飲む。
フタバちゃんはケーキと紅茶だ。
一口飲んで
「おいし」
とか微笑む彼女の顔はいつも通り作り物かって思うほど美しくって‥なんだか自分と会ってるのが嘘みたいに思えて来る。
だから
僕との婚約なんていう‥僕の友達誰に話しても信じてくれないような「嘘話」さっさと解消してしまわないといけないんだ。
‥教会の同級生もあの時はフタバちゃんの手前
「おめでとう! 」
とか笑顔で言っていたけど、後で
「‥どうせ嘘なんだろ? 」
って聞いて来た。
ハイ嘘です。
とも言えず
「ご縁があってね」
という‥なんとも曖昧な返事をしておいた。
悔しそうな顔をする者。
「君は平凡な僕らの希望の星だよ」
って褒め称える(皮肉かもしれない)者それぞれだ。
そして、皆一様に羨ましそうな顔して
「ベネット嬢によろしくね」
って言って帰っていった。
よろしく言ってどうするんだ。
よくわからんなあ。
僕と別れたら、自分とのこと考えてくれませんか? よろしく。
ってこと??
あり得ないから! でも、僕があるなら自分もワンチャンあるかもって思ったってこと?
‥まあ、それ位あり得ないよね。
そんな「今世紀始まって以来の珍事」も今日で終わる。
って覚悟して来たのに‥
なんか普通にお茶飲んでる。
「これからって? 」
婚約を破棄してからどうする? ってこと?
でも‥そういう聞き方じゃなかったな。
僕が首を傾げて聞くと、
フタバちゃんが
「仕事のことよ。今みたいに出番待ちみたいなことやってるわけにはいかないでしょ? ましてやお兄さんの影武者とか‥あり得ないでしょ。せっかく騎士になったんだから騎士団に入ったらいいのに」
顔を上げて、まっすぐ僕を見て‥真剣な表情で言った。
「騎士団かあ。あれだけ僕が剣を持つのを反対してたフタバちゃんがそんなこというなんて思ってなかった」
僕は苦笑いした。
真剣に心配されてるのになんて変事だって思うけど‥自分でも思うんだけど、咄嗟にそんな言葉しか浮かばなかった。って言うか‥咄嗟にそんな言葉が口から出て来てしまった。
あれだ。ただただ‥びっくりしたんだ。
そんな僕にフタバちゃんは、真剣な表情のままで‥
「父さんがロナウを騎士団に連れてこいって言ってる」
って言ったんだ。
なにそれ、怖い。何されるんだ??
娘に何もしてないだろうな、ってこと??
してないです! 何もホントに何も‥してないです!
でも、騎士団長で、しかもフタバちゃんの父親である人の命令に逆らえるわけもなく‥
僕は次の日、大人しく騎士団に向かった。
勿論、一人でだ。
入口で騎士の人に「さて、なんて言おうか」なんて考えながら、とにかく名前を告げた僕に騎士(なんか女子に人気のありそうなイケメンだった)は「あ、その名前聞いてるよ」ってフランクに言うと、団長の執務室に案内してくれた。
‥個別呼び出し‥。ダメだ、ここで起こったことは誰も関知しない的なプライベート空間‥。
ぎゅっと目を瞑り俯き、(なぜか)殴られる覚悟をした僕の頭上から降ってきた団長の低い声‥。
「あの約束を忘れてないだろうな? 」
‥あの約束?
あの婚約は偽物って話? ‥いや違うか? あれは別に騎士団長に約束したわけじゃない‥よな?
「約束? 」
恐る恐る頭を上げると、怖い顔した騎士団長と目が合った。
‥怖い!!
「君は俺に約束したじゃないか。フタバを守るって。一生」
‥しましたっけ??
何もかもが嘘だから、どういう話をしたかも覚えてないです‥。
「いい‥ましたかね? 」
首を傾げると睨まれた。あまりの怖さに
「はい、‥しました! しました確かに」
って条件反射で言ってしまった僕を許してほしい。
騎士団長は何故か満足げにニヤリと微笑むと、
「騎士が一度約束したことを違えるなんてあってはいけないことだよね」
って‥言ったんだ。
え?? 僕は‥何か‥とんでもない人に捕まった??
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