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「おーっほっほっほ! 見てくださいまし、シオン殿下! この広間の大理石、私の磨き上げによって鏡面反射率が百パーセントを超えましたわ。おかげで、天井の装飾が床にも映って、まるで宇宙空間に浮いているようですわね!」
アステリア王宮、大舞踏会会場。
本日は、隣国の財政再建という「大掃除」を見事に成し遂げ、凱旋した私とシオン殿下を祝うための祝賀会。
……そして、私たちが公式に「婚約」を内外に発表する運命の日でもありますわ。
「……リオナ。宇宙空間に浮いているのはいいけれど、あまりに滑らかすぎて、さっきから令嬢たちが氷の上のペンギンのように転びそうになっているよ。……というか、君も今日くらいは掃除の成果を確認するのをやめて、主役として大人しくしていられないかな?」
シオン殿下が、呆れ半分、感心半分といった溜息をつきながら私の手を取りました。
本日の殿下は、アステリアの正装である深い蒼色の軍服を纏い、いつにも増して「歩く彫刻」のような美しさを放っております。
対する私は、殿下からの特注品である、純白のシルクに真珠を散りばめた豪華なドレス。
「殿下、私は常に『大人しく』しておりますわよ? ただ、このドレスに仕込んだ『クイック・ワックス・ソール』が、歩くたびに床を仕上げてしまうだけですの。これぞ王妃としての公務と掃除の完全なる並列処理(パラレルタスク)ですわ!」
「……やっぱり仕込んでいたのか、その靴。道理でさっきから、君の歩いた後だけ光の道ができていると思ったよ」
シオン殿下は苦笑しながら、私を会場中央のバルコニーへと導きました。
会場には、アステリアの貴族たちはもちろん、復興の途上にある故国からも、ヴィンス王子(雑巾がけのしすぎで手がカサカサ)や、ミリア様(炊き出しの煙で燻されて性格が丸くなった)が招待されております。
「皆様、静粛に!」
シオン殿下が声を張り上げると、会場の喧騒が波が引くように収まりました。
殿下は私の手を、これ以上ないほど大切そうに、そして力強く握りしめました。
「今日、この佳き日に、私は皆様に宣言したい。……私の隣に立つ、この誇り高き女性、リオナ・エヴァンスを、アステリアの正式な王太子妃として迎えることを!」
会場に、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こりました。
カトリーヌ様たち令嬢連中も、「リオナ様! 最高ですわ!」「お掃除の極意、これからも教えてくださいませ!」と黄色い声を上げております。
「彼女は、かつては『悪役令嬢』と呼ばれ、国を追われた。……だが、私の目に映ったのは、誰よりも勤勉で、誰よりも誠実で、そして誰よりも『自由』を愛する一人の女性だった。彼女の振るう雑巾は、汚れた床だけでなく、淀んだ政治や人々の荒んだ心までをも磨き上げた。私は、彼女こそがこれからのアステリアに必要な、新しい王妃の姿だと確信している!」
シオン殿下の熱い演説に、私は少しだけ……ほんの少しだけ、目頭が熱くなるのを感じましたわ。
掃除を「変人の奇行」ではなく、「気高き精神の発露」として認めてくれる男。
こんな殿下の隣なら、たとえ王妃という重労働であっても、喜んで受けて立ちますわ。
「殿下……。ありがとうございます。……では、私も皆様にご挨拶をさせていただきますわ」
私は一歩前へ出ました。
そして、かつてのヴィンス王子の前で見せていたような、型通りの冷たい微笑みではなく。
心からの、そして「野心」に満ちた高笑いと共に告げました。
「おーっほっほっほ! アステリアの皆様! そしてお集まりの皆様! 私は本日をもって、この国の『首席王宮管理官』……いえ、王太子妃に就任いたしますわ! 私の目標はただ一つ! このアステリアを、世界で一番『埃一つなく、無駄もなく、そして笑顔が溢れる』ピカピカの国家にすることですわ!」
「「おおおおお!」」
「王妃としての公務は、音速で片付けます! 余った時間は全て、この国の隅々まで磨き上げるために捧げますわ! さあ皆様、明日からは全戸一斉清掃の始まりですわよ! 雑巾を高く掲げなさいな!」
私の、プロポーズの返事ともつかない「労働宣言」に、会場は爆笑と熱狂に包まれました。
普通、婚約発表と言えば「愛の誓い」や「恥じらい」が定番ですが、私の場合は「全戸一斉清掃」。
これこそが、私とシオン殿下が作り上げる、新しい時代の形ですわ!
「……リオナ。本当に君らしい婚約発表だ。……でも、一つ忘れているよ」
シオン殿下が私の腰を引き寄せ、耳元で囁きました。
そして、大勢の観衆の前で、彼は私の指に、大粒のダイヤモンドが輝く指輪を嵌めました。
「愛しているよ、リオナ。……君が雑巾を置いて、ただの私の妻として甘えたい時は、いつでもこの胸を貸そう。……あ、でも、私の服のボタンを『磨きが甘い』と怒るのは、夜だけにしてくれるかな?」
「殿下……。ふふ、努力いたしますわ。……私も、殿下のこと……その、お掃除の次くらいに、大切に思っておりますわよ?」
「……『次』か。まあ、君ならそれくらいが一番信用できるな」
シオン殿下は笑い、私の唇に優しく、そして深い誓いのキスを落としました。
会場の盛り上がりは最高潮に達し、天井からは祝福の花吹雪が舞い散ります。
「あら! 殿下、いけませんわ! この花吹雪、掃除が大変ですわよ! ほら、皆様! 拾って! 今のうちに回収してちょうだい!」
「……ははは、やっぱりこうなるか。……まあ、いいさ。これが私の愛した、最高の王妃様なんだから」
シオン殿下は笑いながら、私の手を取って、光輝くダンスフロアへと踏み出しました。
婚約発表という名の、史上最大規模の「お祭り」。
かつて婚約破棄され、全てを失ったはずの私は。
今、世界で一番美しく磨き上げられた幸せの中に、その身を置いていたのです。
「おーっほっほっほ! 最高の婚約ですわ! さあ殿下、踊りますわよ! 床の汚れ、一粒も残しませんからね!」
私たちの新しい物語は、まだ始まったばかり。
幸せと雑巾の音が響き渡る、アステリアの夜は更けていくのでした。
アステリア王宮、大舞踏会会場。
本日は、隣国の財政再建という「大掃除」を見事に成し遂げ、凱旋した私とシオン殿下を祝うための祝賀会。
……そして、私たちが公式に「婚約」を内外に発表する運命の日でもありますわ。
「……リオナ。宇宙空間に浮いているのはいいけれど、あまりに滑らかすぎて、さっきから令嬢たちが氷の上のペンギンのように転びそうになっているよ。……というか、君も今日くらいは掃除の成果を確認するのをやめて、主役として大人しくしていられないかな?」
シオン殿下が、呆れ半分、感心半分といった溜息をつきながら私の手を取りました。
本日の殿下は、アステリアの正装である深い蒼色の軍服を纏い、いつにも増して「歩く彫刻」のような美しさを放っております。
対する私は、殿下からの特注品である、純白のシルクに真珠を散りばめた豪華なドレス。
「殿下、私は常に『大人しく』しておりますわよ? ただ、このドレスに仕込んだ『クイック・ワックス・ソール』が、歩くたびに床を仕上げてしまうだけですの。これぞ王妃としての公務と掃除の完全なる並列処理(パラレルタスク)ですわ!」
「……やっぱり仕込んでいたのか、その靴。道理でさっきから、君の歩いた後だけ光の道ができていると思ったよ」
シオン殿下は苦笑しながら、私を会場中央のバルコニーへと導きました。
会場には、アステリアの貴族たちはもちろん、復興の途上にある故国からも、ヴィンス王子(雑巾がけのしすぎで手がカサカサ)や、ミリア様(炊き出しの煙で燻されて性格が丸くなった)が招待されております。
「皆様、静粛に!」
シオン殿下が声を張り上げると、会場の喧騒が波が引くように収まりました。
殿下は私の手を、これ以上ないほど大切そうに、そして力強く握りしめました。
「今日、この佳き日に、私は皆様に宣言したい。……私の隣に立つ、この誇り高き女性、リオナ・エヴァンスを、アステリアの正式な王太子妃として迎えることを!」
会場に、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こりました。
カトリーヌ様たち令嬢連中も、「リオナ様! 最高ですわ!」「お掃除の極意、これからも教えてくださいませ!」と黄色い声を上げております。
「彼女は、かつては『悪役令嬢』と呼ばれ、国を追われた。……だが、私の目に映ったのは、誰よりも勤勉で、誰よりも誠実で、そして誰よりも『自由』を愛する一人の女性だった。彼女の振るう雑巾は、汚れた床だけでなく、淀んだ政治や人々の荒んだ心までをも磨き上げた。私は、彼女こそがこれからのアステリアに必要な、新しい王妃の姿だと確信している!」
シオン殿下の熱い演説に、私は少しだけ……ほんの少しだけ、目頭が熱くなるのを感じましたわ。
掃除を「変人の奇行」ではなく、「気高き精神の発露」として認めてくれる男。
こんな殿下の隣なら、たとえ王妃という重労働であっても、喜んで受けて立ちますわ。
「殿下……。ありがとうございます。……では、私も皆様にご挨拶をさせていただきますわ」
私は一歩前へ出ました。
そして、かつてのヴィンス王子の前で見せていたような、型通りの冷たい微笑みではなく。
心からの、そして「野心」に満ちた高笑いと共に告げました。
「おーっほっほっほ! アステリアの皆様! そしてお集まりの皆様! 私は本日をもって、この国の『首席王宮管理官』……いえ、王太子妃に就任いたしますわ! 私の目標はただ一つ! このアステリアを、世界で一番『埃一つなく、無駄もなく、そして笑顔が溢れる』ピカピカの国家にすることですわ!」
「「おおおおお!」」
「王妃としての公務は、音速で片付けます! 余った時間は全て、この国の隅々まで磨き上げるために捧げますわ! さあ皆様、明日からは全戸一斉清掃の始まりですわよ! 雑巾を高く掲げなさいな!」
私の、プロポーズの返事ともつかない「労働宣言」に、会場は爆笑と熱狂に包まれました。
普通、婚約発表と言えば「愛の誓い」や「恥じらい」が定番ですが、私の場合は「全戸一斉清掃」。
これこそが、私とシオン殿下が作り上げる、新しい時代の形ですわ!
「……リオナ。本当に君らしい婚約発表だ。……でも、一つ忘れているよ」
シオン殿下が私の腰を引き寄せ、耳元で囁きました。
そして、大勢の観衆の前で、彼は私の指に、大粒のダイヤモンドが輝く指輪を嵌めました。
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「殿下……。ふふ、努力いたしますわ。……私も、殿下のこと……その、お掃除の次くらいに、大切に思っておりますわよ?」
「……『次』か。まあ、君ならそれくらいが一番信用できるな」
シオン殿下は笑い、私の唇に優しく、そして深い誓いのキスを落としました。
会場の盛り上がりは最高潮に達し、天井からは祝福の花吹雪が舞い散ります。
「あら! 殿下、いけませんわ! この花吹雪、掃除が大変ですわよ! ほら、皆様! 拾って! 今のうちに回収してちょうだい!」
「……ははは、やっぱりこうなるか。……まあ、いいさ。これが私の愛した、最高の王妃様なんだから」
シオン殿下は笑いながら、私の手を取って、光輝くダンスフロアへと踏み出しました。
婚約発表という名の、史上最大規模の「お祭り」。
かつて婚約破棄され、全てを失ったはずの私は。
今、世界で一番美しく磨き上げられた幸せの中に、その身を置いていたのです。
「おーっほっほっほ! 最高の婚約ですわ! さあ殿下、踊りますわよ! 床の汚れ、一粒も残しませんからね!」
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