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第一章 保護されました

第十一話 お見合い?

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 月日は流れて、初等科を卒業し、中等科へ進学した私は、とうとうケインに追いつかれて、同じ学年となる日が来た。中等科二年。その頃には、私は二十歳、ケインは八歳。もはや、ケインのその努力は驚異的だった。そして……。


「お見合い、ですか?」

「うん、どうしても先方がミオとお見合いをしたいとのことで、ミオもそろそろ興味くらいはあるかもしれないと思って、ね」


 その年の夏。とうとう念願の政略結婚のための第一歩とも言うべき話が舞い込んできた。
 そう、浮かれていた私は、話を持ってきたライト様が複雑そうな表情をしていることにも、その隣に立つオリアナ様が静かに憤っていることにも、全く気づいていなかった。

 詳しいことは執務室で話すということで、ライト様の執務室へと向かえば、相手の名前や絵姿、プロフィールに付け加え、相手が提示してきた政略的な条件などが記された資料を手渡された。


「僕達は、無理強いをするつもりはまっっったく無いから、少しでも気に入らなければ断るよ」

「ありがとうございます。ですが、ガルタ運河の関税が撤廃されるのはとても魅力的ですよね。金鉱の譲渡ももちろんプラスで……あと、持参金も不要とありますし」

「ミオ? そこじゃなくて、お相手のプロフィールの方をしっかり読みなさい」


 オリアナ様に促されて、サラッと目を通せば、お相手の年齢は私より三百歳ほど上であり、未だに片翼を諦めていないとある。しかし、身を固めていなければ就けない職への斡旋を受けているらしく、そのために縁談の申込みをしているそうだ。


 つまりは、愛など一切なく、ただただ結婚したという事実が欲しいだけ。そして、それを実現してくれるのであれば、これだけの報酬が得られる、と……。


 こんなに都合の良い話は他にはないだろうと思えるくらいの好条件。
 一応、契約内容に穴が無いか、じっくり読み込む必要はありそうだが、問題なければこれで決めてしまっても良いと思えた。


「一度、部屋に持ち帰ってじっくり読んでみても構いませんか?」

「もちろん。返事は急がないから、しっかりと読んで判断すると良いよ」

「もし断ることになっても、ミオが気にする必要はありませんからね」


 どこか安心したような表情で送り出してくれたライト様とオリアナ様。
 やはり、この縁談はお二人にとっても良いものなのだと、私が勘違いするには丁度良い表情で。部屋に戻ってじっくりと契約の穴を探し、何もないことを理解した私は、その日のうちにライト様へと縁談を受けることを伝えるに至った。

 まさか、そのことでケインが多大なショックを受けるだなんて、欠片も思わずに……。
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