黒板の怪談

星宮歌

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第二章 答えを求めて

第二十九話 合流

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 資料を元の場所へそっと戻した望月は、そのまま二人が居る場所へと戻ろうと立ち上がり……。


「うわっ」

「いたっ」

「っ!?」


 突如として響いた、何かが落ちる音と誰かの声に、望月はビクッと肩を震わせて振り向く。


「えっ……スーちゃんと、中田君……?」


 それは、この学校で、最初にはぐれたはずの二人だった。
 二人は、尻もちでもついたのか、痛そうにお尻を撫でながらも、望月の姿に驚愕を示す。


「っ、望月さん!?」

「えっ? えっ? な、何で……?」


 何が起こったのか分からない、といった様子の杉下と中田。当然、望月の方も似たような状況であることに変わりはない。


「待って、二人は、いつからここに居たの?」

「私達は……いや、ここ、さっきと同じところ?」

「え? え、えっと……うん、確かに、ちょっと違う……?」


 キョロキョロと辺りを見渡して首を傾げる杉下と中田。その姿に、望月は素直に疑問をぶつける。


「同じかどうか分からないって、図書室は一つしかないんだから、ここに居たってことじゃないの??」

「確かに、図書室は一つよ? ただ、恐らくは、私達は十年前の図書室に居たのだと、思うの」


 あまりにも荒唐無稽な話。しかし、それを荒唐無稽と言い切れないというだけの経験は、望月とてしてきている。


「十年前……うん、ひとまず、皆で情報整理しよう。何か、皆で濃ーい体験をしてそうだからさっ」


 二人が立ち上がる姿を確認した望月は、そのまま芦田と鹿野田が居る場所へ向かうべく歩き出す。


「今、芦田君と鹿野田君も向こうに居るから、全員で話そう! ……寧ちゃんが居ないことも含めて」


 清美に何かあったのかもしれない。それはきっと、開かずの教室で清美の姿らしきものを見た時から、予測できたことだったのだろう。
 その予測を誰も話さなかったのは、ひとえにそれを否定したかっただけなのか、それとも、あの時は話しても無駄だと思っていたからなのか……。


「そう、ね。私達もあなた達も、きっと、色々と体験してるし、寧子ちゃんのことも話したい」

「ぼ、僕も、見てきたこと、しっかり、話すからっ」


 そう言いながら、望月とともに杉下と中田はこの図書室の学習スペースとして設けられた机や椅子がある場所へと辿り着く。


「芦田君、鹿野田君、ほら、起きてっ」


 ゆさゆさと望月がそれぞれの肩を揺すれば、二人は一応意識が覚醒したのか、身じろぎをする。


「ふぁあぁぁあふっ………………おう」


 大きな欠伸とともに、目をショボショボさせる芦田。


「んんん……あと五時間ー」

「五時間!? あと十分とかじゃなくて!?」

「優愛ちゃんも、寝るー?」

「ダメダメ。ほら、後五秒だけあげるから、起きようね! でないと、ガッツリくすぐるから。五ーっ、四ーっ、三ーっ「わーっ、待って待ってーっ、起きる、起きるからーっ」よろしい!」


 慌てて顔を上げる鹿野田。

 そして、そんな二人は、ようやく、そこに居るのが望月だけではないということに気づく。


「杉下と、中田、か……?」

「えーっ、嘘っ、もしかして、これで全員揃う!? あれ? でも、清美ちゃんは!?」


 そんな鹿野田の言葉に、杉下と中田は……とりわけ、杉下は、暗い表情になる。


「まだ、見つけられてないの……」


 と、その時、ドサッと、一冊の本が本棚から落ちてきた。
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