ただの癖じゃ足りない者達へ

暦ちき

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第一章 穴

穴② 欲求不満

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女性には穴が四つある。
 
一つは女性器。

二つはお尻の穴。

三つ目は耳の穴。

四つは鼻の穴。

私の唯一の性癖は鼻の穴だ。

それもゴツイ男らしい長くて太い指に、グイッと奥まで食込み鼻の穴を拡げられ、グリグリと動かされ痛めつけられることだ。

なぜかその瞬間私は、とてつもなく興奮と体に電流が走ったかのような衝撃と共に昇天する。
呼吸も出来ないほどに。

小2の夏休みにそれを自覚して以来、私はその性癖が世間一般でも通ずる正常な癖だと思っていた。
しかし、そこから小中高大……と成長過程の中で、どうやらそれは異質であると知った。

だって鼻の穴が性癖の話や、鼻の穴がテーマのエロを見聞きした機会は中々なかった。

それに鼻の穴を責められるのが好きだと告白すると、珍しいと言った反応や、汚いと言われることもあったから。

私にとっては、お互いの性器を舐めたり、指を入れたり、挿入する方がよっぽど不潔な事をしていると思うのだけど。

そんな 私も一度、大学時代に半年ほど付き合った自称ドSの彼氏に、鼻フックというものを装着された事があった。これはまた快楽を得ることが出来るのでは?と期待をして。しかし、少し違かった。
 
 鼻フックで真上につり上がった鼻は、豚鼻になり、何とも間抜けな姿で不細工だった。そして上にあげる圧力が加わって痛い。
 
彼氏は間抜けな姿だ、この征服してる感じがたまらない、と言い興奮し満足気だったが、私は少ししか満たされなかった。

 違うの。少し違うの。
 
針金のような物で鼻をつり上げられたって、痛みと間抜けな姿は少し性的快感を満たされるが、人工的な物で鼻の穴をいじられたって、まるで病院での診察みたいで快楽には至らない。

 男の人のゴツイ指、力強い指でグリグリと奥まで責められて私はやっと昇天できるの。これまで付き合って来た人に勇気を出して、お願いした事がある。

 こちらがお願いすると決まって、汚いと言い断る者や、引かれるかのどちらかに分かれる。

それでもお願いした。

私の癖は、男らしい指に鼻の穴を突っ込まれてグリグリ責められる事なの――。
 
仕方ないなと言い、みんな嫌々鼻の穴に指を突っ込む。

 来た。太くて硬い指が。
  奥までグイッと突っ込み、拡げられて何とも間抜けで恥ずかしい姿。鼻で呼吸は出来ない息苦しさ。下品で人に見られたくない。

だけど、奥をグリグリと動かされれば動かされるほど性的快楽を得られて気持ちいい。

あぁ、いつだってあの小2の夏休みの時に見たお姉さんの映像が衝撃的で、忘れられない。


「なんでそれでイけるんだよ?汚いし変なの」

 みんな口を揃えて言う。私もわからないの。
でも私からしたらね、私の性器に男性器を突っ込まれることの方が痛くて気持ちよくないし、イけないし、ただただ異物感があって気持ち悪いの。

ただの粘膜の交換で、みんな本当にその世間一般的な性行為の方が気持ちいいの?

 誰か、私を満たして。太い指で奥まで責めて。私の細くて短い指じゃ満たされないの。

ただの癖じゃ足りないの。誰かに満たして欲しい。
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