ただの癖じゃ足りない者達へ

暦ちき

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第一章 穴

穴⑩ 番外編『落し穴』

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特殊性癖同士の会員制マッチングアプリ「癖」

アプリを始めてから4ヶ月。
高原鏡子という女に出会った。
彼女は鼻の穴に指を突っ込まれ、玩具のように弄ばれるのが性癖だという。
本当に変な女だ。
常人では理解できない、まさしく変態だ。

だけど初めて出会った日から、彼女も同じ目をしていた。
この特殊性癖に苛まれる自己から救いを求めて、誰かに愛されたい、満たされたい、認めてほしいというような哀れな目を。

そうだ、私が人生で初めて性的な事をした相手の女も全く同じ目をしていた。
その時だ。
初めて自分の性癖を刺激、
強制的に自覚されたのは。
そう、あれは私が中学生の頃。


中学2年生の放課後の出来事だった。
その日は蝉の鳴き声が鬱陶しい時期の、蒸し暑い夏真っ只中の7月の出来事だった。
半袖のシャツに、足に制服のズボンが汗とピッタリくっついて、やたら熱かった事を覚えている。

放課後の委員会活動を終え、その日は部活も何も無かったからまっすぐ家に帰ろうとしていた。
しかし、ふと教室にノートの忘れ物をした事に気がついた。
明日学校に来るからいいか、いやでも明日は土曜日じゃないか。
しかも週明けに小テストもある。
ノートがないと勉強が不便だ。
家まで半分のところまで来て少しめんどくさいが、
学校まで引き返す事にした。

その時に引き返さず、まっすぐ家に帰っていれば私の人生は、今の私は違かったに違いない。

少し走りながら教室に戻ると、そこには驚くべき光景があった。

「ハァ‥ハァ‥ア‥アァん」

女。女が一人教卓の後ろで倒れていた。
いや違う、まるで自分の家かのように横になって寝そべっている。

「アァ‥ハァ‥あ!」

女は寝転がりながら、自分の指で自分の股を触ったり入れたりしていた。
この光景をなんというのだっけ。
この前保健の授業で耳にしたマスターベーション、
またはクラスの男子が言っていたオナニーというのか。

「アァ‥ハァハァ‥あぁアァ」

女はまだ自分の股を、自分の指で弄っている。
この光景はいったいなんだろうか。
教室で女が一人、何をしているのだろう。
やっていることは知っていても、頭が追いつかない。
これは現実だろうか。

女がまるで学校という教師ではなく、自分家の様にくつろいでいるから、まるで僕が場違いの様じゃないか。
こういう時どうしたらいいのだろう。
人を呼ぶ?でも誰を?
目の前にいる得体の知れない女の存在がただ恐怖で、立ち尽くす事しかできなかった。
と、その時。

「熊井‥くぅん、えへ」

女は寝転がりながら僕の事を上目遣いで見る。
僕はこの女を知っている。
教育実習生の田中先生だ。

「熊井くん、ハァハァ‥先生こんな事しちゃってるの、悪い子でしょ‥はぁ、あ、許して」

田中先生は上手く呼吸ができていないような、
苦しそうな吐息を出す。
なんで、なんで田中先生が。

田中先生は一ヶ月前に、数学の教育実習生として来ていた。
長いまつげに大きい黒目に、高い鼻の整った顔立ちで、性格も素直で明るくて教師や生徒からも人気の先生だ。

「先生、なんで‥。こんな所で何をしてるんですか」

私は声が震えていた。
だってこの女は、私の知るいつもの田中先生じゃない。
田中先生のそっくりさんか、田中先生の皮を被った別の獣が自慰行為をしてるんじゃないか。

田中先生に見える女は、火照った顔で目を三角にニヤニヤしながら答えた。

「だって‥先生ね、皆が昼間真面目に授業受けてる教室でオナニーするのが好きなんだもん」

違う。こんなの、これが田中先生の本性だなんて。

「熊井くん‥ごめんね、先生もうイキそうなの‥こんな姿生徒に見られるなんて」

田中先生の指の動きが上下激しく高速する。
火照った顔。汗を伝う頰。
三角の黒目が上を向いた目。
乱れた長い黒髪。
水で濡れたような田中先生の性器。

その時私は下半身、自分の股間が猛烈に熱を帯びるのを全身で感じた。
心臓が高鳴っている。
なんだこの時間は。
なんだこれは。
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで。

「ハァ‥ぁ!!イク!イク!イッちゃう!!!」

田中先生の指の動きが激しくなる。
だけど、先生は指の動きを辞めた。

「ハァハァ‥だめだよ熊井くん、先生自分じゃイケないの。いつも‥家でも‥そう」

先生の綺麗な瞳から一筋の涙が流れる。
なんだろうこの光景は。
田中先生はその時私の指を指差した。

「熊井くん‥ね、先生のマンコに指、入れてみて?」

田中先生は悪戯っ子のような、茶目っ気たっぷりの口元をニヤリと笑いながら言った。

「何言ってるんですか、先生!!!?」

「だって、こんなにやってるのに先生イケないんだもん。それに熊井くんの挿れたら先生は淫らな行為で捕まるでしょ」

この時間は淫らな行為ではないのだろうか。

「ねぇ!!!お願い!一生のお願い!!!」

先生はまるで神様にお祈りをするかのように、
指を組み私に頼んだ。

田中先生の涙で潤った目。
救いを求めるような目。
そして、色っぽい大人の女の表情。

私は恐る恐る、その濡れた穴にゆっくり指を入れた。

あったかい。生の生き物のような感覚。
どこまで奥に突っ込めばいいのだろう。
とりあえず指を一本ゆっくり動かす。

「そぅ‥まずは一本、ゆっくりね。鳴らしてから少しずつ激しく動かして」

先生の熱い吐息が自分の顔にかかる。
緊張する。

だけど先生の言葉の通りに、
ゆっくり一本一本動かしていく。

「そう‥いいわ。上手い上手い。次はもう一本入れて」

中指と人差し指をまた穴に入れる。
指が穴の中の水でどんどん湿っていく。

そっとゆっくり動かして、上下に動かす。
温かい田中先生の体温を感じる穴。
指にまるで生き物のように絡みつく。

「ア!!!‥熊井くん、上手いじゃない。
ハァ‥はぁ‥そうもうちょっと奥まで挿れていいよ?‥うん、そう。良い感じ」

田中先生の指導の通り、もう少し奥まで挿れて上下横にゆっくりと、少しを激しくを繰り返しながら動かす。

「あぁ!!!はぁ、気持ちいい!!!イク!
アッ!!ほら見て熊井くん、先生の腰、凄い動いてるでしょ?気持ちくってほら‥勝手に‥動いちゃう!!!!」

私の指が激しく動くのと連動して、先生のくびれのある腰と丸い柔らかそうなお尻が上下に緩やかにうねりだす。

まるでダンスみたいだ。

「あぁ‥はぁ、熊井くぅん気持ちいいい‥もう少し右の方、攻めて‥そう!そこ!!!ぁ!」

田中先生の目には涙が流れていた。
なんだろう、そんなに気持ちいいのだろうか。
でもなんだろう、この支配感は。

自分のたった2本の指で、田中先生という女を快楽の渦に溺れさている。
この時だ。初めて楽しいという感覚になった。

性器を指で突かれるとこんなに気持ちいいんだ。
普段見ることの無い乱れた顔を見る事が出来る。

楽しい、楽しい、楽しい、楽しい。
もっと、もっと、気持ち良くさせてやろう。

「ぁあ‥熊井くん!!!気持ちいい!!
先生、イキそう!!!!」

私は先生の穴の中の指を、先生の顔の反応を見ながら気持ちいいところだけに当てて動かした。
体の中だからどこまで激しくしていいのかもわからない。
下手したら傷つけて血も出てしまうかも知れない。
だから田中先生の反応を見て、激しくも少し加減しながら動かす。

田中先生の腰の動きと吐息がさらに激しくなった。
面白い。穴に指を入れただけでこんなに人間は変わるのか。狂うのか。ずっと、指を穴の中に挿れていたい!!!
そしてずっとおかしくなった田中先生を見ていたい!!!!
もっと、もっと私の指でおかしくなれよ!!!

「アァ‥あ!!!熊井くん、もう‥イク!!!
‥ッア!!!イッタ!!イッタ!もうダメやめて」

田中先生は目から激しく涙を流していた。
そして足をバタバタもうやめろと抵抗したので、私も反射的に穴から指を出した。

2本の指には先生の穴の中の液が粘り付いていた。

「ふぅ‥熊井くん、ありがとう。とっても気持ちよかった。もしかして経験あった?」

田中先生はいつの間にか起き上がり、
目の前で正座をしていた。
頬はピンク色に染まっていたが、まるでお祓いでもしたようなスッキリした顔付きになっていた。

「田中先生、この時間はなんです?」

「私のオナニーの時間だよ。熊井くんの指付きの!この事は内緒ね。」

そう言うと、先生は私の頬にキスをして、財布から一万円札を取り出し私の手に握りしめさせた。

「いらないです!!!こんなの!!!」

と断ったが、田中先生はまたねー!と笑顔で何事もなかったかのように教室を出て行った。


その日の夜、何もできなかった。
本当にあれはあの時間は現実だったのだろうか。

だけど、あの穴の中に挿れた指の感触、田中先生の制欲に支配された女の顔。
何もかも初めてだった。

しかし、たった2本の指であそこまで人を変えられるなんて。
私は一種の成功体験のようなものを感じた。



そう、全てはあの中学生のあの夏、教室で起こった奇妙な体験からだったのだ。
私の中でも何かが壊れて、何かが生まれた。

あれから田中先生とはそういった事もなく、
田中先生は良い教育実習生としてサヨナラをした。
私以外にも田中先生と性的な事をした生徒はいたのだろう。
まぁしかし、数年後に田中先生は未成年と性行為をしたとして逮捕されたのは言うまでも無い。

私はそれから高校、大学、就職と順調な人生を送る中で、もちろん性的な体験もたくさんあった。
彼女も出来たし、一般的なセックスをした。

だけど、やはり違う。
私は中学生のあの体験から、もう普通の人間では無いみたいだ。

自分の指で相手が悦ぶ姿、性に溺れる姿が見たい。
対象は性器だけじゃない。
乳首、お尻の穴、耳の穴、口の中‥なんでもだ。
そして全部この指だけで、今まで女を制欲に狂った獣に変えさせてきた。

自分の指だけで、相手が溺れたら私の勝ちだ。
楽しい。人の事を唯一支配できる面白い時間だ。

女達は皆、指だけでいいの?イかせて貰えたから私に挿入もいいよと言うが、必要ない。
目の前にいる女が私の前で狂えばいい。
狂えば狂うほど私は楽しいのだから。

だけど、全員なぜか私にありがとう、と言う。
まるでずっと罪の重さに耐えかねていた罪人が、神に救いを求めるかのように皆私にイかせてくれてありがとうと言う。

高原鏡子もそうだった。
彼女も私と同じで普通のセックスじゃ満足できず、世間からは変態扱いされる自分の癖で悩んでいた。

だから私は指で鼻の穴を玩具のようにいじめてやった。
そしたら喜んでいた。認めてくれてありがとう、と小さな子供が母親に愛情を確かめるかのようだった。

だけど私は女達の救世主でも何でもない。
私自身が、私の指で狂う女の滑稽な姿を見たいだけさ。

これからも!!!ずっと!!!
もう一生普通のセックスなどで、私は快感を得る事はできないだろう!!
この指だけでいい。これからも性に溺れて、狂った女達を見てやる。



よし、私はまた特殊性癖マッチングアプリ『癖』で狂った変態の女達相手に遊ぶとするか。









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