孕まされ婚〜こんな結婚したくなかった〜

結婚が嫌だから逃走します

自宅安静を始め、桐谷が仕事から帰ってきてから出勤するまでの間、部屋から出ず引きこもってるわたし。

わたしの気が立ってるから、桐谷も敢えて話しかけてこず、平日は全く顔を合わさなかった。


………
………………

「美結、結婚式と籍を入れる日取りなんだけど……」

土曜日の昼前に桐谷がわたしの部屋をノックして話しかけてきた。

「子供が産まれてからにするか、悪阻が治ってから身内と親しい友人だけ呼んでするか、どっちにする？」

「式なんかあげない！！」

「……じゃ、籍をいつ入れる」

「………………」

桐谷と夫婦になりたくない。
だから籍を入れたくない。
でも、わたしの両親も桐谷のご両親の社長と副社長も、わたしと桐谷が結婚する事と子供ができた事をとても喜んでる。

「………安定期入ってから」

「じゃあ、戌の日のお参りの後に籍を入れるからな」

桐谷はそういうとわたしの部屋のドアから離れ、家から出て行った。


戌の日のお参りは11月22日を予定していて、実家の父と母も東京に出てくる。

今日は10月25日。
1ヶ月半、桐谷と一緒に暮らした。
家事は副社長が派遣してくれた家政婦さんがしてくれて、わたしは桐谷といたくなくて妊娠悪阻が酷い事を理由に部屋のベッドに横になってた。
自宅安静にされてからは桐谷に常に嫌悪感を抱いていて、一緒に暮らしていても不仲で、こんな状態で結婚したら毎日が地獄でストレスでしかなく、妊娠悪阻が落ち着いたらこっそりこのマンションから出て行き、お腹の中の子と2人で生きていく事を決めた。

不思議な事に、桐谷から逃げると決めたら妊娠悪阻が落ちついた。
iPhoneのSafariで移住の地を探し、桐谷が会社に行って留守の間に銀行へ行き預金額を調べた。
保険証は居場所がバレてしまうから使えない。

移住地に引っ越して住民票を移し、母子手帳の差し替えをし、移住先の【妊婦健診審査受診票】と【乳幼児の医療費助成】を貰う。
そして国民保険に加入して、出産育児一時金制度を利用して42万円貰う。

出産に必要なお金とベビー用品代を計算する。
3年半勤めていたけれど1人暮らしをしてるのもあり、貯蓄は328万円しかなく、子供を育てながら派遣に登録をして在宅プログラマーして働く事を決めた。

在宅プログラマーの仕事が多くて子育て支援が充実しているつくば市に移住を決めた。
役所に住民票を取りに行き、3日後の火曜日にわたしは桐谷が出勤した後、逃走を決行した。