婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 4

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俺は部屋に戻り、従僕に昼過ぎに討伐の旅に出る事を伝えた。
従僕は慌てて部屋から出て行った。
討伐………何をすれば良いのか、何一つ分からない。
俺が魔物を討伐するのか?
何で?どの武器を持って?
俺は…………俺は、剣すらまともに握らずに来た………
魔法も………
剣も魔法も、出来なくても大丈夫だと信じて生きてきた。
俺の周りの貴族達も、必要無いと…………
それなのに、どうする?
俺は何のために討伐の旅に行くんだ?
戦う事など出来ないのに?
俺は………本当に魔物を討伐する為に行くのか?
………………やめろ……………考えるな………………
体から力が抜ける………
這々の体でソファに座り、天井を眺める。
エリーゼと婚姻しなかっただけで、俺はこんな扱いになったのか……?
なら、側妃に迎えれば………いや………キンダー侯爵とロズウェル伯爵が許さないか?
俺はただ……ただ可愛い、愛するマリアンヌと一緒になりたかっただけなのに。
それの何が悪いと言うのだ?
エリーゼは祝福してくれたじゃないか!
どこまでもいけ好かない女だと思ってたのに、あいつが真っ先に俺達を祝ってくれて…………
祝ってくれて、それで領地に帰って………
外務大臣だったシュバルツバルト侯爵が、大臣を辞めて領地に帰って………
母上の友人だったシュバルツバルト侯爵夫人も、領地に帰る…………
シュバルツバルト家の家人も領地に帰る?使用人達も殆ど領地に行く?
シュバルツバルト家だけじゃない………婚姻式の為に領地から出て来ていた貴族達も、領地にどんどん帰って行く。
母上は何と言っていた?
行商人だけじゃない、領地に帰る貴族達と共に王都から出て行った……
王都から人が居なくなる?バカな………
王都こそが安全で最も暮らしやすい所だと!
なんで、出て行く必要がある!

「殿下、お考え中に失礼致します。討伐の準備は既に行っております。昼食後に武装にお着換えなさった後、軍馬の引く武装馬車にお乗り頂き討伐の旅に出立せよ。との事でした。それまで、どうぞごゆるりとお過ごし下さい。」

昼食をとった後、作る必要なぞ無いと言ったのに作らされた武装を纏うのか………

「ハハハ………分かった。昼まで1人にしてくれ。」

「はっ!では、失礼致します。」

従僕はさっさと下がり、部屋の中には俺1人と扉に待機している衛兵2人。
………疲れた…………
以前は、女官や侍女が数人やって来て差し入れだと干した果物や珍しい帝国の甘味とやらを持ってきてくれた。
疲れた時に、あの甘い物がとても嬉しかった。
前は10日に1度……いや、7日に1度は持ってきてくれた……
一月、差し入れは来てない……あれもエリーゼからだったのか?
「殿下!お立場を理解為さって下さい!剣を満足に振れなければ、いざという時にお困りなります!」
そうだ……
「殿下、お疲れの時は甘い物が良いと聞きました。偶にですが私の方から何か贈りますね。」
煩い事も言ったけれど、あいつは俺の事を考えてくれていた………
なんで………俺は………………
「ジーク様は王子なんだから、好きにして良いのよ!」
好きにして良い………マリアンヌ………好きにした結果がこれなんだ……………
視界が滲む………涙が溢れる……………
俺はいつ、どこで間違えた?
優しいマリアンヌと幸せになりたかった………
なぁ、誰か教えてくれよ…………
誰か…………
誰か、助けてくれよ……………
誰か……………誰か……………
…………………エリーゼ…………なぁ、いつもみたいに助けてくれよ……………なぁ………………
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