婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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討伐の旅 それぞれの夕暮れ

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宿屋にて

「シュタイン、今日の夕食はここで取るのか?」

俺はギシギシと音を立てる廊下にドキドキしながら、平静を装い聞いた。
シュタインは何ら気にする事無く、笑いながら俺よりも音を立てて横を歩いている。

「そうですよ、野営の連中は水に干し肉とパンですよ。私達は暖かいスープに肉にパンにワインです。さっき、聞いておいたんです。楽しみですな!」

パンと干し肉…………それに水…………

「随分と味気ないんだな、それで一月も過ごすのか?」

「まぁ、そうですね………大きな町に寄れれば、酒場に行ったり娼館に行ったり出来ますがね………今回は、無理でしょうな。」

古くて小さな宿屋の1階にある食堂は狭くて薄暗かった、宿屋の奥さんと言う女性が俺達に奥のテーブルを指し示した。

「あっちですよ。」

そう言って俺の背中を軽く叩いて、テーブルに向かう。
古くて汚いテーブルにゲンナリしながら待って、出て来た食事は僅かな野菜が入ったスープとウサギの香草焼き固そうな黒パンと見るからに薄そうなワインだった。
これでも討伐隊の食事より、ずっとマシなのかとため息をつきながら何とか食べ終え部屋に帰る。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

村の外・クズイ子爵令息とその騎士、そして兵士達


「干し肉とパンだけだと!それと水!ふざけるな!俺は子爵家の者なんだぞ!まともな食べ物が無いなんて、どう言う事だ!」

「申し訳ありません。ですが、持ち歩いている食料は干し肉と日持ちのするパンだけです。水も皮袋に入っているものだけで、無くなれば村に行って分けて貰うよう頼みます。他に食料は持って無いので用意出来ません。」

最も身なりの良い若者が声を荒げ、1人の兵士に声高に文句をつけていました。
兵士は平静を装い、若者に説明をしておりました。

「ミヒャエル様、村で何かもう少しまともな物を手に入れて来ます!少々お待ちを!」

若者に良く似た恰好の男が颯爽と馬に乗り、村へと行ってしまいました。
若者は兵士に文句を言うのはやめ、男が帰って来るのを待ちました。
兵士は若者と若者に付き従う騎士達から離れ、同じ恰好をした兵士達の元に行きました。
兵士は小さな声で仲間の兵士達に囁きます「付き合ってられない、規律を乱す者と行動を共にすると死に兼ねない。これ以上規律を無視するなら、しんがりの連中と合流して夜を明かす。」彼等はあの我が儘な若者と騎士達と行動を共にするように言われていた。
兵士達は4つの部隊の1つで先頭としんがりは兵士達だけ、後の2つは貴族令息とその騎士達と行動を共にするようになっていました。
でも、いつ魔物が襲ってくるか分からない野営地……一応魔物除けはしてあるものの、簡易式の魔物除けは中型でも来ればひとたまりもない代物。
自分達の命を守る為にも、兵士達を纏める兵士は貴族令息と騎士達から離れる事に躊躇い無く決断しました。

少し経つと騎士が手に沢山の食べ物が入った籠を持って、帰って来ました。
若い貴族令息は大喜びで受け取りました。

「ミヒャエル様、この村には娼婦もいました。愉しむには持ってこいでしょう!」

兵士達は慌てました、女は野営地に入れてはならない。女を入れれば魔物が寄って来る。そう、シュバルツバルトの領兵から教わっていたからです。

「おい!野営地に女を連れ込むな!魔物が寄って来たら、どうするんだ!」

貴族令息も騎士達も、笑って取り合おうとしませんでした。
彼等は焼いた肉やワインを口に放り込みながら、兵士達をせせら笑っていました。
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