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コレットの怒り 注意!このお話は少し未来のお話です!
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「む、来たか……どれ…………これは酷いな……」
「アリスティアよ、届いたか?」
「はい、コレット様届きまして……此方を。」
「アリスティアよ、アヤツ等はここへ連れて参れ。良いな。」
「畏まりまして。」
白銀の長い髪を結いあげる事もなく、幾つもの房に分け小さな鈴を付け白いドレスの上に鮮やかな色とりどりの刺繍を施された変わった形のガウンを数枚羽織った老婆は木造の大きな屋敷へと入っていく。
見送った淡い金髪の熟女は朱色のドレスに同じような朱色の変わった形のガウンを数枚羽織っていた。熟女の名前はアリスティア、夫は帝国宰相アーネスト・コレミツ・ド・シルヴァニア公爵。
「誰ぞ、ここに。」
「お呼びで。」
いつの間にやらアリスティアの足元には、紫紺の髪を持つ若い女が跪いていた。
「うむ、大婆様がお怒りじゃ。これを……こやつ等二人は里へ連れて参れ。ご禁制の薬に近い物を作ったようじゃからな。」
「これは……なる程、大婆様がお怒りになるのも分かります。首を送った後でよろしいですか?」
「当然じゃ、首の行方は捕まえたようじゃからの。私の小姫が上手い事運んでくれるじゃろう。」
「フェリシア様が動いて下さると?」
「小姫からの依頼もあったが、思いのほか外道。何ぞあの国も焦臭い事よ。」
「では、そのように動きましょう。」
紫紺の髪の女は音も無く消えた。
アリスティアは香木で作った扇子を広げ、遥か彼方遠くに見える白い山脈の向こうを見つめる。
「妾の小姫よ……思いのほか其方の近くは腐っておった。これで少しは其方の悩みが晴れれば良い。」
朱色のガウンを翻し、アリスティアも又木造の屋敷へと消えて行った。
空に色とりどりの小型のハーピーが飛び交い、何処かへと目に見えぬ程速く飛んで行く。
白い山脈の向こうへ何羽も……何羽も。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「エミリ様、里から来ました。此方を。」
「……フェリシア様をお呼びしましょう。」
「エミリ、呼ばなくても良いわよ。誰からなの?」
「アンナです。大元は大婆様です、ご禁制に近い物を作ったようで里に連れて来いと。」
「そう、では里送りにしましょう。……二人……ね、事故に見せかけて攫ってしまえば良いわ。首は抑えているから問題は無いでしょう。ヒュージとノットが隣接しているから、その二家に支援させれば良いわ。」
「では、そのように……失礼致します。」
「「私達も、これで。」」
「ええ……」
手の中の小さな紙切れをグシャリと握り潰す。
「外道も外道。到底許せぬ…………だが、まぁ良い。大婆様ならば到底、死んだ方が良いと哀願するほど故な……」
遠くに見える白い山脈の向こうを見つめる。
あの白き山々の向こうにお母様やお祖母様がいる、いつもご機嫌で微笑んでいた白銀の髪の大婆様……幼き私をいつでも膝元に呼んでは色んな事を教えて下さった……あの大婆様がお怒りならば、ただ事では無い。きっと私に教えて下さらない事がある。
ご禁制は遥か彼方昔、里長様が決めた品々……大婆様の話では、外道中の外道が手を出す品だと教えて下さった。
でも大婆様って……お母様が震える程恐れていたのよね。
どんな仕置きをなさるのかしら?少し興味があるわ。
ねぇ……大婆様、幼き頃のように教えて下さいますか?
「アリスティアよ、届いたか?」
「はい、コレット様届きまして……此方を。」
「アリスティアよ、アヤツ等はここへ連れて参れ。良いな。」
「畏まりまして。」
白銀の長い髪を結いあげる事もなく、幾つもの房に分け小さな鈴を付け白いドレスの上に鮮やかな色とりどりの刺繍を施された変わった形のガウンを数枚羽織った老婆は木造の大きな屋敷へと入っていく。
見送った淡い金髪の熟女は朱色のドレスに同じような朱色の変わった形のガウンを数枚羽織っていた。熟女の名前はアリスティア、夫は帝国宰相アーネスト・コレミツ・ド・シルヴァニア公爵。
「誰ぞ、ここに。」
「お呼びで。」
いつの間にやらアリスティアの足元には、紫紺の髪を持つ若い女が跪いていた。
「うむ、大婆様がお怒りじゃ。これを……こやつ等二人は里へ連れて参れ。ご禁制の薬に近い物を作ったようじゃからな。」
「これは……なる程、大婆様がお怒りになるのも分かります。首を送った後でよろしいですか?」
「当然じゃ、首の行方は捕まえたようじゃからの。私の小姫が上手い事運んでくれるじゃろう。」
「フェリシア様が動いて下さると?」
「小姫からの依頼もあったが、思いのほか外道。何ぞあの国も焦臭い事よ。」
「では、そのように動きましょう。」
紫紺の髪の女は音も無く消えた。
アリスティアは香木で作った扇子を広げ、遥か彼方遠くに見える白い山脈の向こうを見つめる。
「妾の小姫よ……思いのほか其方の近くは腐っておった。これで少しは其方の悩みが晴れれば良い。」
朱色のガウンを翻し、アリスティアも又木造の屋敷へと消えて行った。
空に色とりどりの小型のハーピーが飛び交い、何処かへと目に見えぬ程速く飛んで行く。
白い山脈の向こうへ何羽も……何羽も。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「エミリ様、里から来ました。此方を。」
「……フェリシア様をお呼びしましょう。」
「エミリ、呼ばなくても良いわよ。誰からなの?」
「アンナです。大元は大婆様です、ご禁制に近い物を作ったようで里に連れて来いと。」
「そう、では里送りにしましょう。……二人……ね、事故に見せかけて攫ってしまえば良いわ。首は抑えているから問題は無いでしょう。ヒュージとノットが隣接しているから、その二家に支援させれば良いわ。」
「では、そのように……失礼致します。」
「「私達も、これで。」」
「ええ……」
手の中の小さな紙切れをグシャリと握り潰す。
「外道も外道。到底許せぬ…………だが、まぁ良い。大婆様ならば到底、死んだ方が良いと哀願するほど故な……」
遠くに見える白い山脈の向こうを見つめる。
あの白き山々の向こうにお母様やお祖母様がいる、いつもご機嫌で微笑んでいた白銀の髪の大婆様……幼き私をいつでも膝元に呼んでは色んな事を教えて下さった……あの大婆様がお怒りならば、ただ事では無い。きっと私に教えて下さらない事がある。
ご禁制は遥か彼方昔、里長様が決めた品々……大婆様の話では、外道中の外道が手を出す品だと教えて下さった。
でも大婆様って……お母様が震える程恐れていたのよね。
どんな仕置きをなさるのかしら?少し興味があるわ。
ねぇ……大婆様、幼き頃のように教えて下さいますか?
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