婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

文字の大きさ
314 / 756

王都に行っていた奴らが何だかおかしい。

料理の減りが大分落ち着いて来た。後は使用人達が口にする分を作れば今日の仕事は終わりだ。不味いことで有名な赤い豆と砂糖が残ってるが、これは後日使えば良いだろう。それにしても、なんで鍋に赤い豆と水が入ってるんだ?

「ようし!後は我等の分の料理を作ろう。」

あちらこちらから、喜ぶ声が聞こえて来る。そりゃそうだ、嵐のような忙しさと真夏のような暑さの中働いていたんだ。

「おい!小豆洗っておけ!」

「洗ってある!水に漬けてあるだろう!」

ん?態々赤い豆を水に漬けたのか。何でだ?何か意味があるのか……?

「誰か手が空いてるか?空いてるやつ、小豆炊いてくれ!」

「おう!」

小豆を炊く?あの赤い豆をどうするんだ?
…………鍋を火に掛けたな。煮るのか。…………何かやってるのは分かる。だが何をやってるのかは、良く分からん。あちらこちらも見なければならん。気になるが仕方ない。

「小豆、炊けました!完成です!」

「よし!料……ジムさんの所に持っていってくれ!奥様の様子も見てくれ!」

「はいっ!」

奥様?気が付けば、山ほどあった砂糖が大分減っている。何だ?赤い豆は甘くなってるのか?

「おい!ちょっと待て!少し味見をさせろ。」

「はい!料理長。おい!」

若い料理人が木の匙に赤い豆……アズキと言っていたな。アズキを掬って差し出して来た。ふむ、何だか甘い匂いだな。

「熱いので、少々お気を付けて下さい。」

「分かった。」

息を吹きかけて少し冷ましてから、少しだけ口の中に落とす。熱いが優しい甘さが口の中に広がる。どこか落ち着く香りが鼻腔を擽る。

「美味い。しかも甘い。赤い豆……アズキは不味い事で有名だ、何でだ?」

「説明は後日。こちらの小豆は奥様のお気に入りです。表に出しておけば、奥様の機嫌はかなり良くなります。」

「なる程。では、早々に出しておくように。」

「はい。」

王都の料理人達はあからさまにホッとした顔になった。奥様の恐ろしさを我々は良く分かってる。だからこそ、その奥様のご機嫌を取るのに最適な存在は皆で分かち合わなければならない案件だ。
王都の若い料理人は慎重に鍋を持って出て行った。

「仕上げはジムさんかエリーゼ様がなさるでしょう。こちらはそろそろ作り終えます。」

「ん?ああ……そうだな。後はジムが戻って来れば、我等の番だな。」

既に疲労の色が濃くなって来た料理人達やメイド達。出来た料理は片っ端から使用人用の食堂に運ばれている、ワイン樽も運び込まれたのは確認済みだ。
久しぶりの宴、しかも姫様のご帰還だ。やっぱり、姫様はここが一番に決まってる。我等の姫様だからな!
感想 3,411

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編) 異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。 それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。 そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!? R4.6.5 なろうでの投稿を始めました。