婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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島にて(チョロギーとクワイ)

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夕方から朝までエリーゼの魔力に満ちた島で、チョロギーとクワイは過ごす。
数日の内にクワイも祖先の力が発現した。
チョロギーは雷を放つ事が出来るようになったがクワイは違う力だった。
クワイの力は水に関する力だった。
クワイは水の表面を走る事も水中を走る事も出来た。
海は波があるので走る事は出来ないが溺れる事は無かった。
二頭は連れだって島の至る所を走り、好きな場所で瑞々しい青々とした草を思うまま食む。
それはまるで恋人同士のようにも見えた。
常に並んで走り草を食むのだ。
それだけでは無い。
共に小屋の中、鼻面を合わせて休むのだ。それ程までに二頭は深い仲になっていた。

明日、領都に着く。
その事をチョロギーは慣れ親しんだ匂いだったからだ。
星の瞬く中、チョロギーはクワイと並び丘の上から月の光を受けて煌めく海を見ていた。

「クワイ……明日にはこの旅も終わってしまうな。なんだか私は寂しい気持ちだ。」

チョロギーは並び立つ黒く艶めくクワイを見つめて鼻先をクワイの鼻先へと近付けた。
クワイも自身の鼻先をチョロギーの鼻先にくっつける。

「旅が終われば、ここで一緒に過ごす事が無くなるのか……俺も寂しいよ。」

クワイは月の光を受けて輝くチョロギーの金色のたてがみの美しさが好きだった。自分とは違う真っ白な体と金色のたてがみや尾の優美さは自分とは無縁だと思っていた。

「私はクワイの黒く雄々しい姿が大好きなのだ。」

「俺はチョロギーの白く優美な姿が大好きだ。」

月の光の中、二頭は並んで白い砂浜を走った。
そのままいつも休む小屋へとゆっくりと歩いて行く。
惜しむように、寄り添って。
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