婚約破棄されまして・裏

ある客室の夜 （シルヴァニアの女達）

明るく広い客室のベッドは大きい。
その大きいベッドに女が三人横たわっている。
シルヴァニアから来たのは六人で、三人ずつ分かれて客室を与えられていた。
本来なら一人一部屋なのだが、女主人であるフェリシアが三人ずつ二部屋で十分だと家政婦長に言った為不承不承だが三人ずつ二部屋部屋になった。
フェリシアの決定に逆らえる人間はこの領主館にはいない。

「う……クッ……」
「ハァ……ン……」
「アゥ……」

ろくろく動かない体と荒い息遣いのまま、チラチラと視線を交わす。
フェリシアの苛烈な責めは里では有名で、どんな者でもフェリシアに責められれば墜ちると言われていた。

「フェ……リシア……様の責めっ……凄っ……かったぁ……」

「ほんと……まだ……体が熱い……」

「ん……凄かった……」

誰が発したのかは分からない。だが三人の思う所は同じだった。
執拗な責めは体だけでなく考えも気持ちも嬲り、フェリシアだけでなく共にいたエミリ・シンシア・ソニアにも抗う事なぞ思えなくなっていた。
当然、エリーゼ付きのアニスに抱いていた不満も跡形無く消え去っていた。

三人の侍女から次々と責められた後のフェリシアの責め……だが心の底からアニスへの不満が消えた時、フェリシアは甘く優しい……それは甘美な毒を含んでいたが……言葉でもって自分の手駒へと手懐けた。
散々嬲られ責められたが体は不完全燃焼だった。
至る所が赤くなっているがジンジンと熱を持つばかりで、腫れ上がって痛々しい訳ではない……だからこそ三人共分かっていた。
朝になればこの熱も引き、赤くなった肌も元通りなのだろうと。

どれ位そうしていたのだろうか？
騒がしかった外の気配が僅かに静かになった頃、客室の扉がノックされたが三人は声を出す事も出来ず扉一枚の向こうから聞こえる物音に聞き耳を立てた。
メイド達だろうか？カラカラとワゴンの音が聞こえる。
何人か来ているのだろう、その内の一人が寝室の扉の前に来て「奥様からお夜食をお持ちするよう言付かりました。お加減が良くなりましたらこちらへお越し下さいませ。用意を済ませ次第、私達は下がります。」そう告げると扉の前から気配が消え、カチャカチャと音が聞こえ、そしてカラカラとワゴンと人の気配が消えて行く。

結局、三人が用意された夜食を口にしたのは数時間後の事だった。