婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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新年のお祝いへと 2

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とうとう新年になった。
ゆっくりと起き出し、のんびり支度をする。
冬の日が沈むのは早い。
夕暮れ時にはあちらに着いていた方が良いだろう。
早速馬車を二台呼び、私達家族と候補者の二人と別れて乗り込む。
馬車の窓から外を見れば多くの領都民が楽しそうに領主館目指して歩いている。
老若男女、行ける者皆が目指してるようだ。
年に一度の領主による大盤振る舞いだ。
当然か。
やがて領主館の敷地に入り、正面玄関よりも手前で降ろされる。
この時ばかりは仕方ない。馬車を待機させるために普段と違う場所に停めておくからだ。
既に多くの者が集まり、広い筈の前庭はごった返し、前庭前の放牧場も開放されている。
正面玄関に入るなりエントランスも賑わって、参ったな……と思う。
あちらこちらで様子を伺っている元同僚達を見つけ家族と別れる。
当然候補者の二人を連れて挨拶に出向く。

「やぁ!アルバート。今回の候補者選定お疲れさん。で、連れてるのが候補者か」

「ジョルダン……お前、息子も候補者になってるぞ」

未だ現役だったりするルキノ子爵当主であるジョルダンはニヤリと笑った。
見た目も言葉遣いも優男風なのに中身は決して優男じゃないのは一番隊じゃあ有名だった。

「マリクは見た目と違って頑固みたいでな、なんでか側近目指したな」

「他人事みたいに言うな。息子だろうが」

「仕方ない。俺もまさか側近になる!なんて言い出すとは思わなかった。それに娘もここの使用人と婚姻するしな、全く寂しい事だ」

「目出度い事じゃねぇか。親方様の所の使用人なら安泰だろうが、喜べよ」

「安泰って分かってるから怒れねぇし、反対も出来なかったんだよ」

「そうかい。そりゃ残念だったな」

そんな気軽な会話をして緊張をやり過ごす。
ここまで来れば後は本人達の問題だ。
イワンもキースも黙って様子を伺っているが、緊張は余りしてないようで内心ホッとする。
この段階で緊張でガチガチになったら後が大変だからな。
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