婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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そうだ!エルフ達の仕事場を覗いてみよう!

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それはある日の午前。

「ちょっと!そっち持って!」

「ここ?」

「そうそう。そのまま押さえてて!」

一人が染め上げられた天蚕布を持ち、言われた通りに押さえる。
言った方は丁寧にドレープを作りながら押さえられた方へと移動する。
エルフの工房では何人ものエルフがチームを作って作業をしている。
今、この二人はエリーゼのボディラインに合わせ作られたトルソーに布を当てドレス製作を行っている。
離れた所ではフェリシアのドレスだったり、ハインリッヒのシャツ等の服を作ってたりする。

「お待たせ!」

「遅いわよ!」

「造花の量が多いのよ!本当にこんなに使うの?」

「注文はバラの花を随所につけろって言われてんのよ!色は確認済みだから!このドレープが済んだら縫いつけてくわよ!」

「はぁ……それにしても美しいわよねぇ……」

「分かる!ドレープが光りを弾いて……」

「そうね。でも今は見るよりも仕事よ!」

「はぁい」

「私達はまだマシだって分かってる?今の奥様の拘りは半端ないから、いまからあっちに行く?止めないわよ」

「えっ!勘弁して。向こうの緊張感とか耐えられない!」

「そろそろ声を抑えなさいよ。怒鳴られるわよ」

「聞こえてるわよ!ぶっ弛んだ仕事してんじゃないわよ!」

「「「はいっ!」」」

フェリシアのドレスは細かい注文故、神経を使うのだ。
ある意味エリーゼは寛容と言うか、無頓着と言うか文句は殆ど出ない。
が、フェリシアは違う。まず注文の時点でかなり細かく注文が入り、仮縫いの時に修正がこれでもかと入る。
光りの当たり具合だとか、細見えとか……そりゃもう大変なのだ。
今回のドレスはキャスバルからの注文でバラの花を随所に付けてエリーゼの愛らしさ美しさ可憐さを存分に引き出すようにと言われていた。
そしてエリーゼのボディラインは修正する必要が無い程にキープされてる為、仮縫いもせずに仕上げても何等問題が無いのだ。

「そっちのドレープ止めて」

「了解!そのまま押さえててね、縫い止めるから」

「ん!」

何枚も重ねられ可憐な装いの上、ドレープで更に豪奢さを付け加えバラの造花がつけられ更にレースで飾られる。
造花の花心は全て真珠でまろやかな輝きを放ってる。
彼女達の頭の中にはこの美しいドレスの完成図がある。
そしてこのドレスを着たエリーゼを想像する事も出来た。
仕事に打ち込む彼女達の顔は皆楽しそうであった。
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