婚約破棄されまして・裏

竹本 芳生

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静かなる波のように (フェリシア)

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「ンッ……は……あ……」

薄暗い夫の寝室で夫に跨がり剛直を受け入れ揺さぶられる。
頭の奥から痺れるような快感はまがい物とは違う熱量で溶けそうだと感じる。

「ああ……愛してるよフェリシア」

軽く突き上げられる度に私の中も熱くうねり締め付けていく。

「ンふ……私もよ……ハ……ハイル……」

ああ……もっとこの熱さと快感を楽しみたい……でも……

「そろそろ限界だ……」

「ええ……」

分かってる……カチカチに硬くなってる剣が私の中で弾けそうな程張り詰めてる。

「クッ……!」

「ンあっ!」

体の中……熱い熱が弾けて広がった。
今まで見聞きした男の剣とは段違いに大きな剣は最初受け入れるだけで息が止まりそうだった。
ズルリと抜かれた事で支えを失いハインリッヒの体の上にペチャリと倒れ伏してしまう。
少しだけ荒い息、汗ばんだ逞しい体。
もう五十にもなろうと言うのにあまり衰えたとは感じない。

「フェリシア。無理をさせたか?」

あら?どうしたのかしら?

「いえ?」

ハイルの胸に手を付いて上半身を少しだけ起こしてハイルの顔を見つめる。
嫌……というわけじゃない。

「若くはないな……そう思ってな……」

少しだけ驚いた。なぁに?同い年で私だって老いというものを感じてきているけど。

「私の事かしら?」

「いや、俺の事だ。婚姻したばかりの時は朝まで睦み合っただろう。なのに今では僅かな時間抱き合って終わりだ……」

「年が違いますわ。若い頃は好きなだけ睦み合えましたわ、でも今みたいにゆっくり睦み合うのも悪くないですわ」

「そう言ってくれると助かる」

起こしていた体を再びハイルに預ける。

「ねぇ……ハイルは私にあれこれと聞きたいのではなくて?」

私と帝国とのやり取りも王都への支援物資の事も全て黙認してくれてる。

「いや。フェリシアは何か考えがあって行動してるだろう。それにキャロライン妃も噛んでるんだろう?ならば俺がどうこう言うのもおかしな話だ」

察している……私は今でも帝国貴族として存在している。故に帝国の為に動いてる事を感じてる。

「フェリシア。エリーゼの支援も帝国の支援も無ければ王国は早々に倒れる。それも民が望まない形で……ならば帝国の属国でも何でも良いから形を整え民が一人でも生き延びれるようにして貰えれば良いと思ってる。勿論、俺はシュバルツバルトの領主である以上争い事はご免だしうちの領民が一人でも減るのも我慢ならんがな!」

「勿論よ。でもね、ハイル……いつかは王国を切り捨てて欲しいと思ってるの」

キュ……と抱き締められてドキリと胸が跳ねる。

「そうか……元々シュバルツバルトは公国だ。元の形に戻るだけならばいつでも良い……いや、エリーゼの婚姻式までは王国でなければならん。その後であればフェリシア、いつでも良いと誓おう」

規則正しい胸の音を聞いて私も覚悟を決める。

「ええ。でも誓いなんて必要ありませんわ。貴方と私の気持ちが重なった時で良いではありませんか」

「そうだな」

ハイルの体が身動いだと思ったら頭上にキスが落ちてきて、毛布が引き上げられた。

「少しだけ休もう」

「はい。お休みなさいませ」

私を抱き締める腕の力は緩まない。
強く男らしい私の愛する男性(ひと)、いつか貴方に輝かしい王冠を載せる。
貴方との恋に落ちた時決めていたの……貴方を王にすると……
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