婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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連載

春が来た! 105

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食堂を出てアニスとキースと合流しても、ルークも私も何も喋れなくて静かに私の部屋へと向かったは良いものの、部屋に戻ってもルークはお通夜状態でソファに座るとノエルを軽く抱き締めて撫でていました。
こうなると私だって変だな……って思う訳ですよ。
アニスとキースが紅茶を淹れたり、部屋に置いてある焼き菓子を出したりしてテーブルにセッティングしてくれます。
私はルークの隣に座り、ノエルを撫でていた手を包むように握った。

「どうしたの?」

「エリーゼ……聞いて欲しい事がある……」

焦点の合わない目はどこか遠い所を見てる様で胸が痛い。

「俺が死んだのは事故だ。妹が欲しがった推しの限定フィギュアの為に一緒に出掛け、その帰りの信号待ちの交差点に暴走車が突っ込んで来たんだ。たまたま居合わせた中学生位の女の子と、その隣にいた俺はあっという間もなく轢かれた……でも俺の少し斜め後ろにいた妹は跳ね飛ばされて倒れてた。一瞬……一瞬の出来事だったけど、俺は妹が無事で良かったって思ってそのまま……でも……ラーラルーナ嬢を見て、その反応とか言動が妹そっくりで……俺は妹は元気で生きて、結婚して……家庭を持ってると思ってたのに……」

ルークの冷たい指先を擦り、見上げる。辛そうに泣きそうな顔に何も言えなかった。
身近な誰かを亡くす悲しさは深い傷となって残る……思い出すのは前世の父母と祖父母の事。

「ルーク……」

「妹は……綾華は死んでこっちに転生したのか?もし……もし、そうなら親父は……母さんは……俺は一緒にいたのに……なんで……」

「ルークのせいじゃない……悪いのはルークじゃないから……だから自分を責めないで……」

ルークの気持ちを考えると辛くて涙が溢れてしまう。
部屋にアニスもキースもいるのに気にならなかった。
ただルークの側でルークの心に寄り添いたいと思った。

「あれ……でも妹さんて……」

ふと思い出す、かつてルークが言っていた前世の妹の事……

「どこに出しても恥ずかしい腐女子……」

「そうだったぁーーっ!」

冷たかった指先は急に熱を帯び、瞳は強く輝きさっきまでの打ちひしがれた様な表情はどこかに吹っ飛んでしまった様です。

「エリーゼ!ごめん!ラーラルーナ嬢が前世の俺の妹なら、とんでもない腐女子なんだよ!ってキャスバルに何て言おう……ヤバい……ヤバいよ……」

「主?どうしたにゃ?あわてるにゃんて主らしくにゃいにゃ。だいじょうぶにゃ!ボクはずっと主といっしょにゃ♡」

……ノエル……永遠の小悪魔ネコか……勝てる気がしない。
もはや全戦全敗ですよ……。
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