この婚約破棄は正しいのか?

竹本 芳生

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婚約破棄ですか。

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「アルファード公爵令嬢アンフィニ。貴女との婚約を今この時を持って破棄して頂く!第一王子レクサス・フォン・クラウンが命ずる!」

……あら、嫌ですわ。
頭脳明晰・眉目秀麗・知勇兼備……そんな風に思っていましたのに。
まぁ、私この世界が乙女ゲームの世界だって知っておりましたし婚約破棄された所で痛くもかゆくもありませんわ!
生まれた瞬間に前世の記憶を思い出し、前世の死因も分からずとにかく令嬢の暮らしというものを叩き込まれましたから!
お嬢様って優雅よね!何て全然っ!優雅じゃないわよ!朝から晩まで忙しいし、やる事てんこ盛りだし、そのくせ走るなだのバタバタするなだの!令嬢とは白鳥と同義語である!とマナーの教師は宣った。その通りです、早足移動しても顔は涼しげに優雅に微笑んで!って、出来るか!いえ、努力でどうにかしました。はい。
でも変ねぇ……この乙女ゲームの正規ヒロインの筈の男爵令嬢、現れてないんだけど?
舞台は王立学園での一年間だけど、スタートイベントも無かったし……変だなぁ?って思う事が沢山あったように思えるのよね。
正規ヒロインどうした?
じっとりとした視線が見下ろして来ます。
ハァ……と溜息を扇子を広げて誤魔化す。

「畏まりました。ですが、殿下……理由をお聞きしても?」

私、この乙女ゲームはちょっとしかやらなかったけど友人は大ハマりしてたっけな……何だっけ?なんか萌える!とか燃える!とかゲキ熱!とか胸熱!とか叫んでたっけ……

「アンフィニ。私は真の愛を見つけてしまったのだ。済まない……君では駄目なんだ……」

沈痛な面持ちで溜息交じりに告げられ、断罪エンドじゃないのかとホッとする。
でも、じゃあ何でかしら?

「申し訳ない、アルファード公爵令嬢」

ん?殿下の後ろに立っていた我が国最強の剣士、王国黒竜騎士団団長兼王国騎士団総長のハマー将軍じゃない。
何で謝るのかしら?

「ハマー……」

ん?殿下の顔が……何故に頬染めちゃってるのかしら?

「レクサス様」

え?何で二人して頬染めて見つめ合ってるの?それ何てキックオフ?

「済まない……」

「殿下、私から……」

「でもハマー……」

「いえ、いけません……」

💢……オイ……まさか真の愛とは、そのゴツイオッサンが相手じゃあるまいな?
ビキビキと額が強張り、周りにいる貴族共からヒイッ!って声が聞こえたけど気のせいよね?
言い忘れてましたが、ただ今王宮の夜会ファーストダンス直前でしたの。

「アルファード公爵令嬢よ!二人の真実の愛を許してやってくれ!儂にも止められなかった!出来る限りの事はする!じゃから怒りを収めてくれ!」

まさかの国王陛下からのお声がかりです。
同性婚も許されてる我が国。しょうがないです。

「分かりましたわ。ですが陛下!私の新しい婚約者を今ここで決めて下さいませ!」

花も恥じらう十八才の乙女なのよ!私!こんな風にポイされて傷だらけよ!

「うむ!じゃが、そなたの希望もあるじゃろう。誰か好いた者がおるのか?」

レクサス殿下ダメなら弟君のシーマ殿下を頂こう!ピチピチの十五才!婚約者無し!

「では、シーマ殿下を!」

「良かろう。ではアルファード公爵令嬢の新たな婚約者は我が息子シーマとする。良いな!」

「有難き幸せ」

ファーストダンスは今回見逃してショタ殿下愛でよう。
それにしても、BL好きな友人達がこぞってハマってたの理解したわ。
まさかBLエンドがあるとはね。
私には無理だけど、真の愛なら仕方ないわよね。
私も可愛い弟キャラのショタ殿下頂くわ。
ま、この婚約破棄は正しいんでしょ。
レクサス殿下にとっても、私にとっても。
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