料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

文字の大きさ
304 / 331

怒れる現人神

しおりを挟む
 脂汗を顔の毛に纏わせた狼人の肩を貫通したその傷は、目をくり抜かれたゾンビの眼窩のようになっていた。

「これは【光の剣】の傷跡ではないな」

 サーカの言葉にオビオも頷く。

「まるでビーム兵器でやられたような火傷を負っている」

「ビーム兵器だと? 確か、聖下の使い魔の目から出る光線がビームという名前じゃなかったか?」

「そう、それだよ、トウスさん」

 という事は、神の世界の武器って事か?

「だけど、もう時代遅れで、俺たちの時代ではほぼ使われていない」

 いやいや、それはおかしい。

「ん? じゃあ、ウメボシの光線はどうなる? 実際に使われているだろ」

「ウメボシは、特別なんだよ。彼女とその同一機種は、一世紀前のカスタム型だから、多機能なんだ。聖下曰く、元々はハイヤット・ダイクタ・サカモト神の所有していたビット型アンドロイドなんだそうな」

「???」

 何語だ? 始祖神のビット? カスタム? なんだ? オビオ。

 俺の顔を見て察したのか、オビオも説明は難しようとしたが・・・、やっぱりやめたようだ。

「まぁなんだ。とにかく特別だって事だよ。俺も科学者じゃねぇから詳しくはわかんねぇ」

「話は戻っるが、これは【光の剣】や神の武器の傷跡ではないという事か? ノームの武器の可能性は?」

「なくはないけど、これは最早、ヒジリ聖下の領分だよ。俺たちでは特定が難しい」

 オビオでも分からないか。

「上位鑑定の指輪でもか?」

 オッサンが少しの期待を込めた目で、オビオを見ている。

「一応見てみるけど、そこまで万能じゃないから。この指輪も」

 オビオは、まだ痛みに苦しむ狼人の肩に触れる。

「ガフゥ!」

 傷口を触れられた狼人が痛みに悶えた。

「悪い。少しの間、我慢してくれ。すぐにパンさんか、ウィングが治してくれるから」

 癒しの祈りでは傷は治っても、火傷跡は治らないだろうな。ウメボシなら奇麗に回復できるけども。

 今は左中指にはまっている上位鑑定の指輪が光り始めた。オビオは目を閉じて、情報を読み取ろうと努力している。

「う~ん。視えたは視えたけど、この人が見た光景と同じだな。ビームダガーを持った猿人に背中から首を狙われたが、咄嗟に回避して肩に刺さったんだ。それにしても、よくこの傷で逃げ延びれたな。痛みでいつ気絶してもおかしくなかっただろうに」

 痛みまで共感しているのか、オビオは苦悶の表情で自分の肩を押さえている。

「俺が雇ったスカウトだ。根性が違う」

 何でビャッコのオッサンが自慢げな顔してんだよ。

「治して良いかい? オビオ。これ以上、彼が痛む姿は見ていられないね」

 オビオの返事を待たずして、ウィングが癒しの祈りで、狼人を回復してしまった。やはり、火傷跡はケロイド状になって残っている。

 中庭を見回すと、他の重傷者をパンが既に治して回っていた。

「怪我人に、この肉人のジャーキーを配ってくれないか? ムク」

 オビオは肉人のジャーキーを十枚ほど小さな手に渡した。

「うん!」

 ムクは治った怪我人にジャーキーを渡している。ウィングやパンの持つ干し果物より、オビオの作った食べ物の方が体力回復を早くするからだ。祈りで傷を治しても、落ちた体力まで回復してくれねぇからな。

 もはや中庭で呻き声を上げている者はいねぇ。オビオたちが来てくれて良かったぜ。

「そうだ。今思い出したけど、ノームのビームダガーは、使用回数が決まっているって聞いた事があるわ。使える時間もそんなに長くないという欠点がある。その辺はどうだったかな?」

 傷が治ってジャーキーを噛む狼人にオビオは聞く。

「猿人が俺を追いかけてくる間、そのビームダガーとやらは、ずっと光っていたぜ」

「じゃあノーム製でもないようだな。となると他の勢力、例えばリザードマンなんかの武器では?」

 はぁ?

「リザードマンの? 冗談が過ぎるぞ、神の眷属殿。あんな蛮族がそんな武器を持っているわけなかろう」

 名を呼ばずにって言い回しに、鋭い棘を感じる。

「おい、オッサン! 神を皮肉った言い方はよせ! 罰が当たるぞ!」

「ふん、正直に言うが、トウス。お前の信じる神はどうも胡散臭い。猿人に加勢しているという事はないだろうな?


 ウィングとパンが驚いて、星のペンダントを手に持って謝罪を始める。

「おお、我らが星のオーガ。どうか、この者の無礼をお許し下さい!」

 パンも改宗したんだっけか? 星のオーガ教のペンダントを持っているぞ。俺も欲しいな。いや、今はそれどころではない。

「いい加減にしろ! オッサン! そんな不敬な事言ってると・・・」

 ―――ズドーン! バリバリバリィ!!

「うわぁ!!」

 中庭に雷が落ちた! ほら見たことか! 天罰だ! ん?

 !!!

 収まりゆく、まばゆい光の中に影が二つ!

「許さんぞぉぉぉ!!」

 雷の中から、怒り狂った現人神様と不機嫌そうなウメボシが現れた!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...