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第四章 魔動乱編

290話 大会に向けて

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「で、エランちゃんは魔導大会に出場するつもりなんだ?」

「もちろん!」

 確認するように、タメリア先輩が聞いてきたので、私は力強くうなずいた。
 魔導大会というものの存在を聞いてから、私はもう、その大会に出たくてたまらなかった。

 最近いろんなことがあって忘れていたけど、大会が開催されるまでの日時は近づいているみたいだ。うぅ、わくわくしてきた!

「それはまあ、チャレンジャーじゃのぅ」

「と、いうと?」

 私が大会に出場することを聞いて、メメメリ先輩が渋い顔を浮かべた。
 チャレンジャー、とはどういう意味だろう。いや、言葉の意味くらいは知っているんだけどさ。

「魔導大会は、誰でも出場可能……極端な話、魔導を使えない方も、出場できます」

「あ、聞いたことあるよ」

 新しく用意した紅茶を出しながら、リリアーナ先輩が言う。
 魔導大会という名前だけど、別に魔導が使えなきゃ出場できない、というわけではないみたいだ。前の大会では、魔導具を駆使して出場した人もいたとか。

 だから、私も出場規定に引っかかっているわけではないと思うんだけど。

「実際に、この学園から出場している人も何人かいますが……一年生で出場したという人は、聞いたことがありませんね」

「そりゃまたどうして?」

「ま、実力の問題だな」

 魔導大会には、魔導学園から一年生で出場した人はいない。その理由は、実力の問題だと言う。
 実力、実力かぁ……なんとなく、わかるようなわからないような?

 そんな私を見てか、わかりやすくため息を漏らす人がいた。シルフィ先輩だ。

「魔導学園の一年生ともなれば、まだ魔導について学び始めたばかり。対して他の出場者は、そのほとんどが身に覚えのある者ばかりだ。
 そんな中、一年生で出場しようなんて考える身の程知らずは、よほどのバカしかいない」

「……」

 ……なんていうか、ようやく口を開いたと思ったら皮肉がすごい。一年生っていうか、私に対しての皮肉だよねこれ。
 うーん、生徒会に入ってから結構経つのになぁ……相変わらず、この人だけは私のことが気に入らないみたいだ。

 このシルフィドーラ先輩は、ゴルさんを尊敬しているから私のことが気に食わない、ってのはわかっているけど……さすがにこんな態度を続けられるとなぁ。

「ま、まあ、使い魔も召喚出来ないうちから出場しようと考える一年はいないってことや」

 若干ぴりついた空気をとりなすように、メメメリ先輩が言う。
 使い魔、か……そういえば以前、サテラン先生が使い魔見せてくれたとき、使い魔召喚の授業は時期的に魔導大会の後だ、って話をした気がする。

 なら、魔導具を使って出場すれば、とも思ったけど、まあ魔導具を使ったところで埋められる力の差ではないと考えているってわけか。

「じゃあ、私が初めての位置ねん出場者ってわけですね!」

「……バカもここまで来ると一種の才能かもな」

「なんとでも言ってくださーい」

 確かに使い魔召喚はできないけど、それで出場を諦める私じゃないよ! それに私は、使い魔を召喚したゴルさん相手に決闘した前例がある。
 なら……あ、なんならまたピアさんに魔導具のことで相談に行こうかな。

「って、ゴルさんは出場するの?」

「一応、そのつもりだ。国をあげての大会だ、王族として見分を広める意味でも、出場する」

「さすがゴルドーラ先輩!」

 ほほぅ、ゴルさんも出場するのか……なら、この間のリターンマッチができるかもしれないな。
 今度こそは負けないから!

 ちなみに、ゴルさんは学園でも様付けは堅苦しいので、生徒会メンバーとかクラスの人など関りの深い相手には、様付けはさせないようにしているみたいだ。
 まあ、婚約者のリリアーナ先輩は例外的に様付で呼んでいるけど。

「ふふん。今度こそ負けないよ!」

「その自信はどこからくるんだ」

「私だってあれから成長しているんですー」

 ゴルさんとの決闘に負けて……私は、自分を見つめ直した。それに、冒険者と行動を共にしたり、ダルマスとの特訓に付き合ったり……これまでにない力を、吸収できている気がする。
 今度は、あのときのようにはいかない。

 いや、ゴルさんだけじゃない。他にも、たくさん強い人がいるのなら。私は、その人たちとも戦ってみたいんだ!

「まあそれはそれとしてだ。魔導大会開催につき、我々生徒会がやるべきことは、まずは出場者の確認だ」

「出場者の確認?」

「あぁ。大会には、事前に出場するメンバーを申請しておかなきゃならない。
 普通なら自分で大会運営に直接申請しに行ったり、冒険者ギルドでそういうの取り扱ってるんだけど……」

「学園で出場する者は学園でまとめて……っちゅうのは、学園運営のメリットやな」

 そうなのか……てっきり、大会には開催日当日にそのまま乗り込めばいいのかと思ってたけど。
 まあ、考えてみればそうか。大会参加者がどのくらいいるのかはわからないけど、ちゃんと把握するためには事前に知っておかないとね。

「大会当日、開催の数時間前までは受け付けているようですが、出場者を把握するのが早いに越したことはないので」

「そう。これを、それぞれ検討する学年で把握してもらいたい」

 ……検討する学年ってことは、つまり……私は、一年生を担当するってことか。で、シルフィ先輩は二年生。
 ゴルさんたちは三年生……私たちが一人なのに対して、四人もいるなんて。ずっこいなぁ。

 まあそれをぼやいても仕方ないので、黙っておくけど。

「ここに一年生、二年生、三年生、そして教員の名簿がある。各自、頼むぞ」

「はい!」

 ホントゴルさんのことになると元気いいなこの人は……まあいいけど。
 さて、一年生、二年生、三年生、そして……教員、か。先生も参加する人はいるのか。

 そりゃそうだよな、誰でもオーケーなんだし、魔導学園の教員ともなれば力を試したいって人も多そうだし。
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