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出会い編
正義のヒーローここに見参っ!
しおりを挟むそれにしてもさっきのドミノは凄く楽しかったです!
あのバッタバッタ倒れていくのを見ていると凄く胸が高鳴るのです。
その旨を伝えたら、何故かゼンに呆れた表情を返されたのですが何故でしょうか。
回し蹴りですか?回し蹴りが良くなかったのですか?
やっぱり回し蹴りするような令嬢はいないって言いたかったのですかね。
でも令嬢らしくないことは普段からやってる気がしますし……だとすると、ドミノそのものがダメだったのでしょうか?
ですが、もしそうだとするとそれこそ謎です。
ドミノだっていつもしてますし。
大体あれは仕方ないのですよ!だってだって、ドミノがしたかったのですから!
それに、わたくしがドミノでラグドーナ様を潰したのには他に大きな理由があります。
その理由は何と言ってもゼンです。
ゼンは言いました。『敵をぶっ潰せ』と。
だからわたくしはその指示に忠実に従ったまでのこと。
言われた通りにしたのですから、むしろ褒めて欲しいくらいなのですよ!
ゼンの反応に少々不満を抱きながらもアルカティーナはさらなる力を発動させていた。
「テレポートっ!」
今日はなんだかよく瞬間移動する日ですね。
これを記念に今日を『テレポート記念日』としましょう。
祝・テレポート記念日~!とか何とか考えながらテレポートした先は勿論、あの突き当たりの部屋だった。
目を開けると偶然にもわたくしはアメルダとリサーシャの近くにテレポートしたようで、足元に二人が寝そべっていました。見ると、二人とも手足を縛られて立つことすら出来ないようです。
ですが、不幸中の幸いか二人とも外傷はないようですね。目立つところに傷がないだけかも知れませんが、それにしては元気そうです。
どうやら誘拐はされても、理不尽に暴力を振るわれるようなことは無かったみたいですね。
アルカティーナは心の底から安堵した。
しかしその一方、アメルダとリサーシャの二人は、突然何もないところから現れた友人に腰を抜かして驚いていた。
「ティ、ティーナ……今何処から…」
驚きのあまり目を見開きそう問うたアメルダ。
「なんで、なんでティーナがこんなところにいるの?」
不思議そうに、しかしやはり驚いた様子のリサーシャ。
二人ともポカンと、まるで幽霊を見つめるかのようにアルカティーナを見ていた。
そんな二人に、アルカティーナは眩しいくらいの笑顔で応える。
「正義のヒーローここに見参っ!ってやつですよ、えへへ。あ、でもわたくしの性別的にヒロインですかね…??まぁどっちにしろ、助けに来ちゃいました」
およそ、名門公爵令嬢にはあまりにも似合わないセリフだ。
でも、それでも。
その言葉は二人の心の奥深くまで、じわじわと、まるでさざ波のように広がり…そしてじんわりと熱を持った。
二人はぐっと目元に力を入れたかと思うと泣きながら、笑顔を見せてくれました。
◇ ◆ ◇
自分が誘拐されたと気が付いてから、自分のために考えないようにはしていた。
もしかしたら、自分は殺されるかもしれないとか。
もう空を見ることも叶わないかもとか。
アルカティーナがラグドーナとの婚約を受け入れてしまうかもとか。
後ろ向きなことは全て見ないふりをした。
ただひたすら我武者羅に「作戦」を立てて、それを実行して、滅茶苦茶な結果になって…
もう誘拐されてしまった以上は後で後悔しないよう出来ることは全てやろうって前向きに考えて。
でもやっぱり、四六時中手が震えていた。
後ろ手に縛られていたからバレていなかったとは思うけど、その震えを隠そうとして拳に力を入れっぱなしにしていた。
口では馬鹿みたいなことを言ってても。
馬鹿げた演技をしていても。
喉は渇ききって、カラカラだった。
もう何でもいいから誰か助けてって、何度も思った。
そこに、あの子が来た。
「正義のヒーローここに見参っ!ってやつですよ、えへへ」
「助けに来ちゃいました」
何、いち公爵令嬢がこんなところまで乗り込んで来てるのよ。
アメルダと、そしてリサーシャは、その友人を馬鹿だと思った。そしてまた、誇らしく思った。
「あーもう、ティーナのせいで涙が!」
「私も~」
私たちの友達アルカティーナは、私たちの太陽だ。
◇ ◆ ◇
泣くのを我慢していたのでしょうか。
二人とも糸が切れたかのようにボロボロ涙を零しています。
でも、当たり前ですよね。誘拐されたのですから、相当精神的に参っているはず。
本当に無事でよかった……。
あ、でもそろそろ戻らないと…ゼン達が心配してしまいます。
アルカティーナは絶賛すすり泣き中の二人に優しく声をかけた。
「今のうちにここから出ましょう。外にはゼンも待ってます。皆、待ってます。ね?早く帰りましょう?」
「……そうだね」
「…うん、わかった」
言うが早いかアルカティーナは二人をぎゅうっと抱き込んで再度テレポートの準備をし始めた。
と、その時邪魔が入った。
「お、おい!待てっ」
「どこへ行くつもりだっ!!」
あらあら、気が付きませんでしたけどこの部屋には他に人がいたみたいですね。
部屋の隅に黒尽くめの衣装の男性が二人…またジョソーさんのお仲間さんですか?
そして何故わたくしに剣を向けるのか。
いい加減しつこいですよ。
それに、わたくし達はあなたがたに構っているほど暇じゃあないのです。
さぁ、手っ取り早く終わらせましょうか。
アルカティーナはわざと深いため息をつくと男性たちを見やり、こう告げた。
「そんなへっぴり腰で、わたくしに勝てるとでも?」
ついでに目を細めながら「舐めないで下さい」と言うのも忘れずに。
「「……!」」
図星だったのでしょう。
二人は息を詰まらせると、その手の剣をしまい俯いてしまいました。
やったぁ!完璧です!作戦成功です。
まぁへっぴり腰で、と言うのは事実でしたしね。
テレポートという異常な登場の仕方をしたわたくしが余程恐ろしかったのでしょう。
手にした剣がカタカタ震えていて、今にも落としてしまいそうでしたから。
さて、そろそろ本当に戻らねば!
アルカティーナは再度二人を抱き抱えると、唱えた。
「テレポート」
たちまち足元からキラキラと白い光が漏れ出し、三人を照らす。
そして三人はそのまま、その光へ吸い込まれるようにして姿を消……………す直前のことだった。
またしても邪魔が入った。
「待ってくれ!これだけはっ!これだけは言わせて欲しいんだ!!」
一人の男性が未練がましくもわたくしにそう訴えかけて来たのです。
今更何の用でしょう?
無視してもよかったのですが、彼の形相があまりに必死だったのでわたくしは彼の言葉に耳を貸してしまったのです。
「?何ですか?」
首をかしげるアルカティーナに、男はやはり険しい表情のまま、ビシッとアメルダとリサーシャを指差して叫んだ。
「気を付けろ。その二人は変態だ!!」
その叫び声を聞きながら、三人はその場から姿を消した。
そしてその代わりに今度はゼン達の元へとその姿を現した。
三人の姿を目に止めた騎士たちは一斉に彼女らに駆け寄ると声をかけ始めた。
「おおー!無事でしたか!よかった!」
「お怪我はありませんか?」
「何か違和感を感じるところは?」
本来ならそれに「大丈夫です」なり何なり返して、無事の生還を皆で喜ぶ感動の一幕なのだろう。
しかし、当の三人はそれには一切反応を示さなかった。
床に座り込んだまま俯き、ただひたすら床を見つめて瞬きを繰り返していた。
サイドの二人は時折中央のアルカティーナをチラリと見て、また床を見て、を繰り返している。
一体何があったと言うのか。
三人を訝しげに見つめるゼン達には目もくれず、パチパチと瞬きを繰り返すアルカティーナ達が次に口を開いたのは、それから暫く経ってからのことだった。
アルカティーナが、床を見たまま唐突に一言呟いた。
「…そうだったのですか」
「「ちがうからぁあ!!」」
約1名違わない者も混じってはいるが、二人は間髪入れずに反論したのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
この小説についているタグ、『キャラ濃い、かも。』の『かも』を取るべきだと最近我が友に指摘されました、水瀬です。
うーーん、取るべきでしょうか。
ま、いっかー。私が『かも』と思っているから『かも』で良いんです!
余談?ですが…………
この「出会い編」が終わったら、一度登場人物たちを纏めた「登場人物紹介」をアップしようか迷っています。
そして、その「登場人物紹介」のページにキャラごとにイラストをアップするかどうかも迷い中。
うーーむ、どうしたものか。
イラストをアップして欲しいキャラとかいれば教えてくださいね~~。誰でも良いですよ!
別に人間のキャラじゃなくても良いですよ。
あ、なければ水瀬が適当にアップするなり、しないなりします!
ではでは御機嫌よう(´∀`)
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