聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

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学園編

少し時間を頂けまして?

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 リリアム学園の寮は、校舎と隣接しているため、生徒たちは毎朝徒歩で学園へ向かう。アルカティーナとて、それは同じだった。
 
 「あ!あの金髪の人って……」

 「朝からお目にかかれるなんてラッキーですわ!」

 「話しかけたい……!けど無理!」

 「わかりますわその気持ち!だって雲の上の方なんですもの!」

 学園へ向かうアルカティーナを遠巻きに見つめながら、生徒達は色々なことを口にする。
そして当事者であるアルカティーナは、そのことには全く気が付いておらず「何だか周りが騒がしいですけど、珍しい種類のお花でも咲いているのでしょうか?」と的外れなことを考えていた。

 誰もが、アルカティーナを見つめる。
アルカティーナは学園で屈指の有名人である。彼女と仲良くなるまではいかずとも、顔見知り程度にはなりたいと考える者は少なくなかった。皆んなが皆んな、今日こそ彼女に話しかけようと奮起し、結局出来ずに終わる。それが、アルカティーナが入学してからというものの、毎日続いていた。
だが、その日は違った。
アルカティーナに話しかけた勇者が現れたのだ。その人物は、遠目にアルカティーナを確認すると、ゆっくり歩きながら近付いていき、そして口を開いた。

 「御機嫌よう、アルカティーナ様」

 登校中に、目が合った瞬間物凄い勢いで目を逸らされることはあっても、話しかけられたことはなかったアルカティーナは、少し驚きつつもゆっくりとその人物に目を向けた。
そして、意外なその人物に瞠目する。

 「……御機嫌よう、ユーリア様。今日は良いお天気ですし、朝から気持ちがいいですね」

 直ぐに平静を取り戻し、アルカティーナは感じのいい挨拶を返した。だが、心の中は全く冷静ではいられなかった。

 ーーまさか、彼女がわたくしに話しかけてくるとは…

 ユーリア・ルゼスタ伯爵令嬢。
その名の通りルゼスタ伯爵家の娘で、次女。
アルカティーナと同い年にして、悪役令嬢仲間でもある。
悪役同士だからといって仲間というわけではないのだが、敵というわけでもない……と、ついこの間までは思っていた。
新入生代表として舞台上に立った時、彼女から真っ直ぐな敵意を向けられるまでは。
 あそこまではっきりとした敵意を向けられては、こちらとしても警戒せざるを得ない。
アルカティーナは警戒度マックスで会話を続けた。

 「ええ、本当にいい朝ですわね。それはそうとアルカティーナ様。今日のお昼、少し時間を頂けまして?お話ししたいことがございますの」

 「お昼…ですか。はい、特に予定はないので大丈夫ですよ」

 「ありがとうございます。ではお昼に、校舎裏でお待ちしておりますわ。絶対に、いらしてくださいましね?」

 冷たい氷のような瞳が、ぐっと細められる。
口だけではわからないが、その瞳は暗に「来なければ許さない」と語っている。

 ーーうっ………怖い怖い、ユーリア様怖いです!!何ですか何なんですか!わたくし、ユーリア様に何かしましたっけ!?
 
 元々、ユーリアは冷たい容貌の持ち主である。色素の薄い銀の髪に、見るものを凍てつかせるような冷たい水色の瞳。美人なのも相まって、本当に「悪役」らしい顔つきだ。
そんなユーリアに「来なければ許さない」オーラを向けられたアルカティーナの返事は、選択肢があってないようなものだ。

 「はい。お昼休みに校舎裏、ですね。必ず参りますので」

 内心では「怖いです怖いです行きたくないです!わたくしなんてきっと一瞬で海に連れていかれてポイッて捨てられるんです!」と荒れまくりつつも、何とか笑顔を保って言葉を返したのだった。

 
 ◇ ◆ ◇


 「ティーナ、お昼一緒にたーべよ!」

 「ど、どうしてもって言うなら一緒に食べてあげなくもないわよ!…いつもごめんなさい。一緒に食べよ?」

 いつも通りお昼のお誘いをしに来てくれたリサーシャとアメルダに、アルカティーナは申し訳なく思いつつも断りを入れる。

 「すみません2人とも。わたくし、今日はちょっと用事があって……」

 「あれ?そうなんだ。そう言うことなら仕方ないなぁ。明日は一緒に食べようね!」

 「明日こそはこの私とお昼を共に出来るわね。嬉しく思いなさい!あっ、えっと、行ってらっしゃい」

 個性的な返事をくれた2人に微笑みながら手を振る。

 「はい、じゃあ行って来ます!」

 さぁ、これからが勝負どころです。
ユーリア様がどう言うつもりかは知りませんが、こちらも言いたいことは言ってやりましょう。

 アルカティーナは、真っ直ぐに校舎裏へと向かった。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ユーリアたんのターンです!
これはダジャレではありません。
私の中でユーリアは、「ちゃん」でも「さん」でも「様」でもなく、「たん」なんです。仕方ない。うん、仕方ない。

 それはそうと皆様。
この度わたくし、この小説で恋愛小説大賞に参加したのですが…予想以上に上位にランクインしていてびっくりしております。
まさかこんな変な?小説に投票してくださる方がいらっしゃるとは………!!
ありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+
感激感謝の雨が降ってます!!


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