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学園編

腹が減っては戦はできぬ

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 アルカティーナが向かった時にはもう、ユーリアは校舎裏で待っていた。壁に寄りかかるようにして立っているユーリアに、慌てて駆け寄る。

 「すみません、お待たせしましたユーリア様」

 「それほど待っておりませんわ。気にしないでくださいまし」

 言いつつ、ユーリアは壁に預けていた体を、アルカティーナの方に向ける。
ユーリアは駆け寄って来たアルカティーナをじっと見つめた。
アルカティーナの見た目は一言で言うと「可愛い」だ。それに対し、ユーリアは「綺麗」だろうか。
見た目もタイプも異なる2人は、身長も大きく異なる。ユーリアはスラリとしたスレンダーなモデル体型で、長身である。
そして一方のアルカティーナは、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいてスタイルはかなりいいものの、かなり小柄で、身長も低め。

 予想以上に小柄なアルカティーナを見下ろしたユーリアは、そのまま視線を下へやって、目を見開いた。

 「あの、アルカティーナ様……?そちらの右手に持ってらっしゃるものは何ですの?」

 戸惑いを露わにしたユーリアを不思議に思いつつ、アルカティーナはにっこり微笑みながら右手を顔の横まで持ち上げた。ユーリアがそれについて聞いてくれたのが嬉しかったのだ。何故ならそれは、アルカティーナがこの場を乗り切る唯一の打開策として持って来た秘密兵器だったからである。

 「これですか?これはお弁当です!」

 突然向けられた無邪気な笑顔に、ユーリアは戸惑うを隠せずにいた。

 「は?何を、仰ってますの?」

 「だから、お弁当ですよお弁当!いつもはお友達と一緒に食べるんですけど、今日はユーリア様に呼ばれたのでここで食べようと思ってですね…」

 ユーリアは、目をパチクリさせた。目の前の少女が言っていることと、考えていることが、さっぱりわからなかった。
明らかに敵意をむき出しにしていたユーリアを目の前に、普通「お弁当」は無いだろう。
何か裏でもあるのか。
ユーリアの訝しげな目に気がついたアルカティーナはしかし、焦ることなく話し始めた。

 「ユーリア様。貴女がわたくしにいい感情をお持ちでないことは薄々分かっていますよ?ですが、わたくしにはその理由がさっぱり分からないのですよ。ですから、落ち着いてお話ししたいなと思ってお弁当を持って来てみました」

 「…は?いや、『持って来てみました』じゃありませんわよ!それが分かっていながらお弁当持参って、平和ボケしすぎでしてよ!あと、落ち着いて話すのとお弁当は何も関係ありませんわよ!」

 すっかりアルカティーナのペースに飲まれていたユーリアは、我に返って声を張り上げた。

 「いえ、関係ありますよ?ほら、腹が減っては戦はできぬ~って言うじゃないですか!あれですよ、あれ!と言うことで頂きます!」

 「は?ちょ、まっ……」

 「もぐもぐ……あぁ美味しいです!流石料理長ですね!」

 「いや、あの、アルカティーナ様?」

 「あ、気になります?実はこれ、寮の料理長が作ってくれたものなんですよ。前にお友達と『食堂のメニューも飽きてきましたね』って話してたのを聞かれていたみたいで、今朝渡してくれたのですよ。ふふ、凄く親切な方だと思いませんか?」

 何故か緊張した面持ちで弁当箱を手渡してきた料理長の姿を思い出し、思わずくすりと笑ってしまう。「め、迷惑かもしれませんが……」なんて言ってましたけど、迷惑なはず無いのに、変わった人ですね。

 「あの……アルカティーナ様?聞いてらっしゃいまして?」

 今朝のことを思い出しつつ、アルカティーナはちらとユーリアを盗み見る。
登校時にお昼の呼び出しをくらってから、アルカティーナが何も考えていなかったと思ったら大間違いだ。
アルカティーナは色々考えたのだ。
まず、アルカティーナは第一印象が強烈すぎてユーリアが少し怖い。

 「アルカティーナ様、アルカティーナ様!」
 
だから、きっと2人きりで話し合いなんて、冷静で居られるはずがないのだ。
そこで、「腹が減っては戦はできぬ」という教訓を活かしてお弁当を持っていくことにした。
お弁当を食べたらお腹は満たされるし、少しは心も安らぐはず。
その状態でユーリアと話すのがベストだと、アルカティーナは考えたのだ。

 「アルカティーナ様ぁぁぁ!?!?」

 次のおかずに箸を伸ばしつつ、アルカティーナは尋ねた。

 「そう言えばユーリア様。お昼はもう召し上がったのですか?」

 「アルカティーナ様ぁぁぁって、あ!やっと戻ってこられまして?全くもう!」

 「戻って……?わたくし、ずっとここに居ますよね?あ、それよりお昼ですよ、お昼!もう食べましたか?」

 何の脈絡もなくそんな質問をしてきたアルカティーナに、ユーリアは首を傾げた。

 「?いえ、今日はアルカティーナ様とお話があるので、元より食べないつもりでしたのよ」

 その返答に、それまでルンルンと箸を進めていたアルカティーナは、ピタリと動きを止めた。そして、頰を膨らませながらユーリアにピシャリと言い放った。
 
 「ダメじゃないですか!成長期なんですからしっかり食べなきゃですよ?全くもう、プンスカです!ほら、わたくしのお弁当分けて差し上げますから、食べてください!」

 ユーリアは、常時マイペースなアルカティーナに、呆気にとられたままである。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


はい!
 次回はなんと!
ユーリアたん視点です!!
ユーリアたん。
初登場時の印象は悪いですが、悪い子じゃないんです。
何を隠そう、ユーリア「たん」ですから!


 
 
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