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番外編
バレンタインSS
しおりを挟む先に忠告?です。
最後の最後に挿絵的なものが鎮座しておりますので、苦手な方は逃げてくださいね。
あとがきの最後の最後に鎮座しているので、お話を読むぶんには被害は無いです。
では、本編どうぞ(=´∀`)人(´∀`=)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ハッピーバレンタイーーン!」
「た、タイーーン…!」
朝会うなり謎のハイテンションで挨拶してきたのはリサーシャとアメルダ。アルカティーナがデビュタント間もない頃から仲良くしている友人である。
しかし、アルカティーナはその日ばかりはその友人たちの意図がさっぱり読めないでいた。
「ハッピーバレンタイン…って、どうしてそんなに嬉しそうなんですか2人とも」
眉を八の字にして首をかしげると、友人達に同じ表情を返されてしまった。
「ティーナこそ何でそんなに普通なの?」
「バレンタインよ、バレンタイン!べ、別に嬉しくなんてないんだからね!」
明らかに学園指定のものではない私物のバッグを手に、嬉しそうに頰を緩める2人の気持ちが全くわからない。勿論、バレンタインを知らないとかではない。この世界にバレンタインという概念が存在することも、既に知っていたから、驚いているわけでもない。
では、何故アルカティーナがこんなにテンションが低いのかーー?
「バレンタインなのは知ってますよ?でも、バレンタインって女の子が男の子にチョコを贈る日でしょう?わたくしたち女の子がそんなに浮き立つ意味がわからないのですよ」
真顔で珍しく、現実的なことを言ったアルカティーナに、リサーシャとアメルダは顔を見合わせた。
「ティーナがまともなこと言った!今日は空から花びらが降ってくるかも!」
「いいえ槍よ!槍が降ってくると思うわ!」
アルカティーナの普段の行いが呼んだ結果とは言え、2人ともなんて失礼なのだろうか。
そもそも、『空から花びら』はゲーム補正で四月に体験済みである。
しかし冗談を言うのにも飽きたのか、2人は改めて、バレンタインについてあれこれと言い始めた。
「と言うかティーナ!確かに私たちは『渡す側』だけど、それもそれで楽しいじゃない。大切な人にチョコを受け取ってもらうって、嬉しいことじゃない。…ぁっ、べ、別に、私は嬉しいなんて思ったことないけど!!」
「成る程…それもそうですね。わたくしも、受け取って貰えるといつも嬉しいですし、渡す時は楽しいです」
ふむふむと頷き、アメルダに相槌を打つ。
確かにその気持ちはすごくわかると思ったのだ。誰だって、大切な人に喜んで貰えると嬉しくなるものだ。
「そうそう!それに私達だってチョコは貰えるじゃない?ほら『友チョコ』ってやつよ!」
「あ、そうでした!友チョコですね、友チョコ!あれはすごく嬉しいです!」
リサーシャの言葉にもうんうんと頷き、同意を示しながらアルカティーナは手持ちの鞄から、綺麗にラッピングされたチョコレートを取り出した。それを、2人の前に突き出す。
「はいどうぞ!わたくしからの『友チョコ』ですよ~!いつもありがとうございます」
にっこり笑顔で手渡すと、2人とも嬉しそうに飛び跳ねた。
「あ、ありがとう!凄い凝ってるわね!美味しそう~!!…た、食べてあげなくもないんだからねっ!!…あ、後で美味しくいただきます。ありがと」
アメルダは相変わらずというか、何というか。でも、そこが彼女の美点だとも思っているので、微笑ましさすら感じる。
「ありがとうティーナァーー!…むふ、むふっむふふふ…………美少女からの『友チョコ』…ぐへ、ぐふぇふぇふぇ……尊い」
リサーシャは………何故か受け取り方が素早かった上に、目がギラギラと獲物を狙う肉食動物のように輝いていたような気がしないでもないが、まぁ気のせいだろう。
「あ、こ、これ、私からも!友チョコね!し、仕方ないから渡すだけなんだからね!…こちらこそいつもありがとう」
「はいはーい、私からも友チョコー!隠し味は~私の~熱うぅーーいLOV…」
「わ、2人ともありがとうございます!放課後にでもいただきますね~」
ーーあぁ、嬉しすぎて食い気味に返事をしてしまいました…ふふ、でも嬉しいものですね友チョコって!
アルカティーナを悲しそうな顔で見つめるリサーシャには、誰も気がつかなかった。
3人揃ってニマニマと笑いながら(約1名変質者のような笑い方だったが、それは最早突っ込むまい)貰ったチョコレートを手に教室へと向かう。バレンタインと言えど、アルカティーナには婚約者もいなければ恋人もいない。詰まるところ、『本命』を渡す相手がいない。婚約者がいるアメルダは、明らかに『本命』だろうと思われるハート型のチョコレートを鞄に入れていたが、アルカティーナにはそういったものは一切ないのだ。
寂しいとは思わない。と、言うと嘘になる。
折角の二度目の人生だ。
恋人くらい作りたいと言うのが本心だ。
ーーまぁ何はともあれ、わたくしはこれ以上チョコレートを貰えないでしょうね。チョコをくれそうな女友達はもうあまりいませんし
そう考えつつSクラスの教室のドアをガラリと開けて……ピシャリと閉めた。
「?どしたのティーナ」
後ろから不思議そうな顔で覗き込んでくるリサーシャに、アルカティーナはカタカタと震えながら教室を指差しながら、
「あ…あり得ない、あり得ない光景が…」
と告げた。
リサーシャとアメルダは、2人して首を傾げた。アルカティーナをそれ程までに驚かせる光景とは一体何だと不思議に思いつつ、2人は好奇心に駆られ、ドアを開ける。
そして、教室内のある一点を見つめ…
「あーー…ね、あれはビビるわ」
「ええ…。にしても、すごいわね。いや、別に、良いなぁとか、思ってないけど!」
「うぅ…何ですかあれ!何ですか!?あれ!!意味がわからないのですよ!」
ドアの前で喚き立てる3人が見つめる一点。
それは、アルカティーナの机だ。
綺麗好きなアルカティーナは、自分の机に物を置いたまま帰ることはまずない。
だが、その日は違った。
大量のチョコレートが積み上がっていたのだ。
「うわ~これ何個あるの?すごいね」
「本当に凄いわね…流石ティーナ。にしてもこれ、一体何人が置いてったのかしら」
驚愕を通り越して、呆れた物言いで積み上がったチョコレートを上から下まで眺める2人に、思わずため息を漏らす。
「はぁ……何でしょうかね、本当に。イタズラ?イタズラですか?」
「「いや、違うでしょ」」
声を揃えて首を横に振った友人達に、アルカティーナも「いやいやいや」と首を横に振った。
「わたくしにチョコを渡したいなんて物好きな方がこんなにたくさんいるはずありませんよ」
あり得ないです。一体何がどうなって…。あぁ、わかりました。これは罠です。これを全部食べさせて、わたくしを太らせて食べる気なんですね。酷いです。陰湿です……
どうすればそんなに明後日の方向に思考が向かうのか不思議になるくらい滅茶苦茶な推理を始めたアルカティーナを横目に、リサーシャとアメルダは、その大量のチョコレートの贈り主に大体の目星をつけていた。
「どうせあれでしょ。ティーナのファンクラブの人とか、隠れファンの人でしょ」
「そうね。ティーナは信者が多いもの」
「ファンクラブも会員数がやばいって話だし。てか、そもそも私も会員だけどね」
「私も会員よ。でもあれよね。ティーナは本当に人気者よね」
こそこそと喋りながら、未だ「嫌です!わたくし、まだステーキ肉にはなりませんよ!」と意味不明なことを叫んでいるアルカティーナを盗み見る。
そして、2人同時に噴き出した。
「「ま、本人は一向に気がつかないけど!!」」
鈍感で、天然で、変わっていて。
でも、そこが何とも好ましい。
掛け替えのない友人を想い、2人でクスクス笑いあっていると、横からアルカティーナの声がした。
「あ、ゼンおはようございます!それはそれとしてハッピーバレンタインです!」
満面の笑みでチョコを手渡すアルカティーナ。無邪気なその笑顔が、今日もみんなを照らす。
「あれ?そうか、今日バレンタインか。忘れてた……ありがとな、お嬢」
「お返しは、マカロンとイチゴタルトとシュークリームとチョコレートパフェとモンブランとチーズケーキでいいですよ!」
「多いな」
屈託無く笑うアルカティーナに、ゼンは軽口を叩きつつも思わず目を細める。
それ程までに。
太陽のような笑顔が、眩しいと言わんばかりに輝いていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
てなわけでハッピーバレンタイーーン!
皆さん、水瀬にチョコくださっても良いんですよ、良いんですよ。
物理的に無理ですけどねww
さて、それはさておき。
私は思うんですよ。
いつか、アルカティーナにも『本命』を渡せる相手が出来ればいいなぁ、と。(この小説のジャンルが恋愛である以上、絶対にできるんですけどね!)
それも、アルカティーナが『本命』を渡す時に緊張して、顔も強張っていれば尚良しだと思っているんです。
だって、ティーナですよ、ティーナ。
彼女が恋愛関係で緊張とか顔が強張るとか、何か良いじゃないですか。あとは、照れ隠しにツンツンな物言いになるとか、どもるとか、……あ、これ以上言うと何処ぞの変態みたくなり兼ねないのでやめますww
ですが、それが私の理想です。
と、言うことで!!
その理想を描きました。
その名も『恥じらうティーナ』です。
前置きが長いと言うなかれ。自覚ありです。
挿絵が無理な方はダッシュで逃げてください
画力ないんでね、恥じらってるように見えないとかね、顔が強張ってるように見えないとかね、あると思うんですけどね、そこは多めに見てください……。
と言うわけで皆様改めましてハッピーバレンタイン!
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