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学園編
まぁなんとなく
しおりを挟む「あれっ鍵が…………」
ドアノブを握ったアメルダが発した声に、あぁやっぱりか、とアルカティーナは苦笑いを浮かべる。
「そうだろうとは思ってましたけど、やっぱりですか」
「え?予知してたの?」
「はい、まぁなんとなく」
虚ろな笑みを浮かべて、なんとか誤魔化す。
彼女はナルシストだから、きっと鏡に壁ドンをして自分の美しさに魅入っています。それを誰にも見られないように鍵を掛けているに違いない、と予想していたんです。
なんて、口が裂けても言えやしない。
「へぇ、よく分かんないけど凄いね。でもどうする?これじゃあ中には入れないし…ロゼリーナ樣が出てくるのを待とうか」
でもそれだといつになるかわからないね、と困り顔を向けてくるリサーシャに、アルカティーナはふわりと微笑んだ。
「大丈夫です。策はあります」
「策…………?」
「それってどういう……」
揃って首を傾げるアメルダとリサーシャには「まぁ見ていてください」と言いつつアルカティーナはステップを踏むようにタンと床を鳴らす。
「テレポート」
その瞬間、魔法陣のような紋様が床に描かれ、直後ふわりとした光が3人の身体を包み込んだ。
その光が消えるのを見届けてから、アルカティーナはぐるりと周囲を見渡し、安堵した。
ーーよかった、成功したみたいですね
しかし、先程とは異なる景色に安堵したアルカティーナとは裏腹に、アメルダとリサーシャの顔には口を開けたり閉じたりといった動揺が色濃く出ている。
だがここで声をあげたり物音を立てたりしたら、ロゼリーナに警戒されてしまう。
アルカティーナは慌てる2人に向け、唇に人差し指を当てた。要するに、「静かにね」と言いたいのである。
そのメッセージを理解した2人は、頷いたり、OKマークを作ったりと、それぞれ反応を返した。
一先ず落ち着いたところで、もう一度状況を把握してみる。アルカティーナは再びぐるりと視線を巡らせた。見える光景から察するに、アルカティーナ達がいるのはダンスホールの隅に位置する小道具置き場の物陰だ。ダンスホールには死角となる場所がもう一箇所あるのだが、そこには3人が隠れられるほどのスペースがないため、もうひとつの死角である小道具置き場の影に転送されたのだろう。
ーーそれにしても、何だか違和感が…。こんな小道具ありましたっけ?
アルカティーナはダンスホールに何度か訪れたことがあった。だが、見覚えのない小道具が少々増えているような気がするのだ。
例えば、アルカティーナの目の前に立ちはだかり上手く影を作ってくれているのは、派手な三面鏡。この全面鏡張りのダンスホールでこれ以上何を写すつもりなのか。
しかも、それだけではない。
よく見れば猫耳カチューシャやら派手な衣装やらと、需要のなさそうなものが溢れかえっているではないか。
一体誰が、何のためにこれを使うのか。
思わず眉をしかめ、思考の海に沈みかけていたアルカティーナだったが…………
「ふふ…ふふ、うふふふふ」
聞き覚えのある笑い声に、我に帰った。
アルカティーナは慌てて顔を上げ、三面鏡の隙間からチラリと向こう側を覗き見て…すぐさま瞳を陰らせた。
「斜め45度っ!か~ら~のぉ~…流し目!くふふふ………さっすが私。超可愛い!」
ーー神様。何も、こんなところまで予想的中せずともよかったのですよ?
本日何度目だろうか。
ハイライトを失った瞳を、鏡に壁ドン状態なヒロイン様から外し、友人達に向けた。
アメルダとリサーシャは、言わずもがな。
まさかロゼリーナがナルシストだとは夢にも思っていなかったのだろう。
ぽっかーーーーん、という擬態語がしっくり来る表情でカピンと固まっていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
えらいこっちゃー。
どうするヒロイン様。
ばれちゃったよ、変態とツンデレ娘にばれちゃったよ。えらいこっちゃー。
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