聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

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学園編

それは本当にごめんなさい

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 「な………なんでいるのよ!」

 ロゼリーナのユーリアを目に止めてからの第一声はこれだった。

 「盗み聞きなんて、令嬢の風上にも置けないわよ!?」

 大声でそうまくし立てるロゼリーナの方こそ風上に置けないのだが。本人はこれっぽっちもそうは思っていないようだ。盛大に眉を顰めながら声を荒げた。
そんなロゼリーナに対峙するようにして立つユーリアは顔を俯かせると、小刻みに震え始めた。

 「なんで、いるか、ですって……?盗み聞き…?私だって、出来れば聞きたくありませんでしたわ!?でも仕方ないではありませんの。だって……だって!!」

 キッとロゼリーナを鋭く射抜くと、ユーリアは声を張り上げた。

 「忘れ物を取りに来ただけですのに、気がつけば貴女が鍵を閉めていて、しかもとても出られるような雰囲気ではありませんでしたわ!?びっくりしましたわよ、急に『私を表すならそう……春に咲く可憐な花々の妖精!』って意味不明な声が聞こえて来ましたから!?しかも急に『ミュージック・スタート★』と叫んだかと思えば1人ミュージカルを始めますし!?気がついた頃には後ろでクラスメイトがナルシスト発言を連発していて逃げるに逃げられなかった、という私の身にもなってくださいまし!!」

 普段はあまり変化の見られないその顔に、今はくっきりと怒りが浮き彫りになっている。
可哀想に。
忘れ物を取りに来たら、見たくもないクラスメイトのナルシスト・タイムを目撃してしまったというユーリアは、その当時のことを思いだしたのだろうか。
その瞳には怒りだけでなく、薄っすらと涙の粒も浮かんでいた。
可哀想に。

 だが、アルカティーナはそんなことには一切気が付かなかった。何故なら………

 ーーえ……わたくし達が来る前にそんな事が……!?1人ミュージカルって何ですかそれ。逆に見て見たかったです……!

 先程のユーリアの発言によって発覚した衝撃の事実に気を取られっ放しだったからである。

 一方、涙目ながらに切実な訴えを目の当たりにしたロゼリーナはと言うと。

 「あ…えっと、それは本当にごめんなさい」

 流石に申し訳なく思ったのか、真顔でユーリアに謝罪していた。
 これにはユーリアも、涙を引っ込めた。

 「まぁ…百歩譲ってそれは構いませんわ。ですが。アルカティーナ様のことをとやかく言うのはおやめなさい」

 「別に、それは私の勝手でしょう?」

 「そうかもしれませんわね。ですけど、それにも限度というものが御座いましてよ?『潰す』なんて………よくそんな事を口に出来ましたわね」

 「良いじゃない。私の邪魔をするからよ」

 バッサリと切り捨てる様にそう言い放ったロゼリーナに、ユーリアは薄く笑みをこぼす。

 「あら…いつもと随分様子が違いますわね、貴女。普段はもっと八方美人ですのに」

 「今更取り繕う方が馬鹿でしょ。本性見られちゃったんだから、仕方ないじゃない。それに……八方美人ですって?それはあいつの方でしょう!?」

 「いいえ違いますわ。私、先日あの方と交流しましたけれど、あれは八方美人ではありませんわ!何も考えずに行動しているだけでしてよ」

 「え……何も考えずに?」

 「ええ、あの方はただのど天然と見ましたわ!少なくとも1人ミュージカルの際に『♪あぁ、ロゼリーナ!どうして貴女はロゼリーナなの!?』と鏡に向かって白熱の演技をする貴女とは違いますわね」

 アルカティーナ達は一斉にロゼリーナの方を向いた。

 ーーロゼリーナ様それはもう末期ですよ!?

 ロゼリーナ・アゼルのナルシスト病は既にStage4である。

 Stage4の患者ロゼリーナは、悔しそうに歯をくいしばる。

 「何はともあれ私のことは放っておいて!さもないと貴女も潰すわよ」
 
 その一言を残して。
ロゼリーナはダンスホールの鍵を開けて出て行ってしまった。
残されたユーリアは、漸くナルシスト臭が充満した密閉空間から解放されたのが嬉しかったのか、表情を和らげた。

 
 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 
 ユーリアたん、頑張った……よね?うん。
頑張った頑張った!(((o(*゚▽゚*)o)))♡

 
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