144 / 165
学園編
それは本当にごめんなさい
しおりを挟む「な………なんでいるのよ!」
ロゼリーナのユーリアを目に止めてからの第一声はこれだった。
「盗み聞きなんて、令嬢の風上にも置けないわよ!?」
大声でそうまくし立てるロゼリーナの方こそ風上に置けないのだが。本人はこれっぽっちもそうは思っていないようだ。盛大に眉を顰めながら声を荒げた。
そんなロゼリーナに対峙するようにして立つユーリアは顔を俯かせると、小刻みに震え始めた。
「なんで、いるか、ですって……?盗み聞き…?私だって、出来れば聞きたくありませんでしたわ!?でも仕方ないではありませんの。だって……だって!!」
キッとロゼリーナを鋭く射抜くと、ユーリアは声を張り上げた。
「忘れ物を取りに来ただけですのに、気がつけば貴女が鍵を閉めていて、しかもとても出られるような雰囲気ではありませんでしたわ!?びっくりしましたわよ、急に『私を表すならそう……春に咲く可憐な花々の妖精!』って意味不明な声が聞こえて来ましたから!?しかも急に『ミュージック・スタート★』と叫んだかと思えば1人ミュージカルを始めますし!?気がついた頃には後ろでクラスメイトがナルシスト発言を連発していて逃げるに逃げられなかった、という私の身にもなってくださいまし!!」
普段はあまり変化の見られないその顔に、今はくっきりと怒りが浮き彫りになっている。
可哀想に。
忘れ物を取りに来たら、見たくもないクラスメイトのナルシスト・タイムを目撃してしまったというユーリアは、その当時のことを思いだしたのだろうか。
その瞳には怒りだけでなく、薄っすらと涙の粒も浮かんでいた。
可哀想に。
だが、アルカティーナはそんなことには一切気が付かなかった。何故なら………
ーーえ……わたくし達が来る前にそんな事が……!?1人ミュージカルって何ですかそれ。逆に見て見たかったです……!
先程のユーリアの発言によって発覚した衝撃の事実に気を取られっ放しだったからである。
一方、涙目ながらに切実な訴えを目の当たりにしたロゼリーナはと言うと。
「あ…えっと、それは本当にごめんなさい」
流石に申し訳なく思ったのか、真顔でユーリアに謝罪していた。
これにはユーリアも、涙を引っ込めた。
「まぁ…百歩譲ってそれは構いませんわ。ですが。アルカティーナ様のことをとやかく言うのはおやめなさい」
「別に、それは私の勝手でしょう?」
「そうかもしれませんわね。ですけど、それにも限度というものが御座いましてよ?『潰す』なんて………よくそんな事を口に出来ましたわね」
「良いじゃない。私の邪魔をするからよ」
バッサリと切り捨てる様にそう言い放ったロゼリーナに、ユーリアは薄く笑みをこぼす。
「あら…いつもと随分様子が違いますわね、貴女。普段はもっと八方美人ですのに」
「今更取り繕う方が馬鹿でしょ。本性見られちゃったんだから、仕方ないじゃない。それに……八方美人ですって?それはあいつの方でしょう!?」
「いいえ違いますわ。私、先日あの方と交流しましたけれど、あれは八方美人ではありませんわ!何も考えずに行動しているだけでしてよ」
「え……何も考えずに?」
「ええ、あの方はただのど天然と見ましたわ!少なくとも1人ミュージカルの際に『♪あぁ、ロゼリーナ!どうして貴女はロゼリーナなの!?』と鏡に向かって白熱の演技をする貴女とは違いますわね」
アルカティーナ達は一斉にロゼリーナの方を向いた。
ーーロゼリーナ様それはもう末期ですよ!?
ロゼリーナ・アゼルのナルシスト病は既にStage4である。
Stage4の患者ロゼリーナは、悔しそうに歯をくいしばる。
「何はともあれ私のことは放っておいて!さもないと貴女も潰すわよ」
その一言を残して。
ロゼリーナはダンスホールの鍵を開けて出て行ってしまった。
残されたユーリアは、漸くナルシスト臭が充満した密閉空間から解放されたのが嬉しかったのか、表情を和らげた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ユーリアたん、頑張った……よね?うん。
頑張った頑張った!(((o(*゚▽゚*)o)))♡
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
所(世界)変われば品(常識)変わる
章槻雅希
恋愛
前世の記憶を持って転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢。王太子の婚約者であり、ヒロインが彼のルートでハッピーエンドを迎えれば身の破滅が待っている。修道院送りという名の道中での襲撃暗殺END。
それを避けるために周囲の環境を整え家族と婚約者とその家族という理解者も得ていよいよゲームスタート。
予想通り、ヒロインも転生者だった。しかもお花畑乙女ゲーム脳。でも地頭は悪くなさそう?
ならば、ヒロインに現実を突きつけましょう。思い込みを矯正すれば多分有能な女官になれそうですし。
完結まで予約投稿済み。
全21話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる