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恐怖の炎
揺れ動く心情3
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焼け野原は、まるで世界の終わりを告げるように広がっている。
灰と焦土が風に舞い、空は血のように赤く染まる夕暮れに沈んでいた。
絵美は、足元の黒ずんだ大地を踏みしめ静かに俯いた。
そして自分自身を責めるように、小さく呟く。
「私……ホントに、嫌なヤツだ……」
その声は、風に掻き消されそうなほど儚く……風に運ばれ、誰もいない荒野に溶けていくようだった。
その言葉の奥には、激しい悔恨が宿っているように聞こえる。
ホワイト・ティアラ隊の必死の治療を目の当たりにした今、絵美の心は激しく揺れていた。
シェルクードの傲慢な態度は、どうしても許せない。
それとは、逆に……ティアやエリサが傷ついた者に捧げる献身的な姿に、絵美の胸は熱く痛烈に締め付けられていた。
自分の怒りに突き動かされた行動が、今まるで罪のように絵美の心を苛んでいる。
航太もまた、同じ葛藤の渦中にいた。
絵美の呟きに航太は静かに頷き、苦渋に満ちた眼差しで遠くの地平線を見つめる。
「オレも同じだ。けど、まだ複雑だぜ。一真の奴、智美の時は冷たかった。命が危険なのは、智美だってシェルクードだって同じだろ? なのに、あんな奴は必死に助けて……目の前で傷ついてなきゃ、関係ねぇってのかよ!」
航太の声には義弟である一真への苛立ちと、拭いきれぬ複雑な思いが滲んでいた。
幼なじみの智美が敵の只中で消息を絶ち、まだ絶望が心を蝕んでいる。
そんな中……一真が仲間を侮辱する者を懸命に救う姿は、航太の心に暗い波紋を広げていた。
理解したいのに理解しきれない、深い矛盾である。
エリサは2人の言葉を聞きながら、そっと目を伏せた。
エリサの心には航太や絵美への共感と、ベルヘイム国出身者としての負い目が交錯していく。
「航太さん、絵美。その気持ち、痛いほど分かるよ。戦場に出ている兵士の皆さんの中には、安全な場所で治療だけしている部隊を快く思ってない人達もいる。仲間を侮辱する人も、たまにいるんだよ。そんな時は、もう知らない! って思う。でもね、そんな人達も仲間なんだよ。ヨトゥンの侵略から人々を守り、姫様を救い出す為の……」
エリサの声は、優しく航太達に寄り添う言葉だった。
しかし……その裏には、ベルヘイム国出身者としての重い負い目があった。
航太にとっての幼なじみ、絵美にとっての双子の姉。
そんな大切な人が、戦場の闇に消えた。
その大切な人の為なのに、仲間であるはずの兵士たちは手を差し伸べようとしない。
エリサは異国のために命を賭けて戦う彼らに対し、言葉にできない申し訳なさで胸が張り裂けそうだった。
「でも、一真さんだって……きっと、辛いと思う。それでも……どんな時だって、傷ついた人を分け隔てなく救おうとしてる。それなのに、大切な人に冷たくされたら……」
ティアは胸の前で手を固く組み、そこで言葉を飲み込んだ。
ティアの言葉には、本来なら言わなくても伝わるはずの想いが溢れていた。
そう……誰もが、分かっている。
分かっていても、納得できない何かがある。
ティアは、その葛藤を言葉にすることを諦め唇を噛みしめた。
「ティアさん、ありがと……一真のこと、分かってくれて……」
絵美はティアにそっと抱きつき、感謝の言葉を口にする。
小さなその声は、最後には掠れ風に溶けるように消えていく。
「私、ダメだな。分かっているはずなのに……」
絵美の瞳が少し光った、その瞬間……
静寂を切り裂く、鋭い声が響き渡る。
「静かに! 何か……聞こえる! 嫌な予感がするな……」
ランカストの言葉に、空気が一瞬で凍りつく。
皆が息を殺し、耳を澄ます。
すると遠くから、死神の足音のような馬蹄の響きが聞こえてきた。
最初は微かだったその音は、急速に……まるで嵐の前触れのように、焼け焦げた大地を震わせる。
「将軍! こっちは7人しかいねぇ! しかも4人は戦えねぇぞ!」
航太の叫びは、恐怖と覚悟が交錯していた。
その声に、皆の緊張が一気に高まる。
灰混じりの風が唸りを上げ、肌を刺す冷たさが全員の背筋を凍らせた。
「将軍、航ちゃん。ホワイト・ティアラ隊の皆は、必ず守らなきゃ! それと、荷台で倒れている人もいるから……8人ね!」
絵美は灰で汚れた腕で、瞳から流れていた水滴を飛ばす。
そして、ホワイト・ティアラ隊の面々の背後……馬蹄の響きと土煙が迫ってくる方向に、自らを移動させた。
「分かっている! 航太! 絵美! ホワイト・ティアラ隊の戦いは見たな? 彼らは自らの戦いを全うし、1人の命を救った。次は我々の番だ! ホワイト・ティアラ隊は、我々の最後の生命線だ! 絶対に……守り抜くぞ!」
叫んだランカストは、絵美の前に踊り出る。
「私とエリサは、魔法でサポート出来ます! 一真は、ティアを守りなさい! 必要なら、私たちを置いて逃げなさい!」
ランカストはネイアに向かって頷くと、陣形を整える。
ランカストを中心に、前衛には航太が立つ。
全体が見渡せる位置に絵美を置き、中心の荷台を守る。
荷台からは、ネイアとエリサが魔法でサポートを行う。
現状では、これしか出来ない。
その姿は……焼け野原に舞う灰の中で、運命に抗う最後の戦士たちのように神聖に見える。
そのシルエットはまるで、最後の抵抗を誓う希望の騎士のようだった。
陣形を整えた瞬間、視界の先に騎馬隊の影が浮かぶ。
馬蹄の音は雷鳴のように轟き、敵の接近を否応なしに告げてくる。
そして灰色の靄を突き破り、その先頭に立つ者の姿が現れた。
「ガイエン! 何人、殺したと思ってんだ! てめぇの境遇、少しは同情してたがよ……流石にやりすぎだぜ!」
航太の声は、怒りと憎悪に震える。
そう……騎馬隊の先頭に立つのは、紅の鎧に身を包んだガイエンだった。
その姿は、まるで地獄の業火を纏った死神そのもの。
夕暮れの赤い光を浴び、鎧は血のように輝いている。
ガイエンの存在は、焼け野原に不気味な影を落とし始めた。
その目は全てを焼き尽くすような炎を宿し、航太たちを見据えていた……
灰と焦土が風に舞い、空は血のように赤く染まる夕暮れに沈んでいた。
絵美は、足元の黒ずんだ大地を踏みしめ静かに俯いた。
そして自分自身を責めるように、小さく呟く。
「私……ホントに、嫌なヤツだ……」
その声は、風に掻き消されそうなほど儚く……風に運ばれ、誰もいない荒野に溶けていくようだった。
その言葉の奥には、激しい悔恨が宿っているように聞こえる。
ホワイト・ティアラ隊の必死の治療を目の当たりにした今、絵美の心は激しく揺れていた。
シェルクードの傲慢な態度は、どうしても許せない。
それとは、逆に……ティアやエリサが傷ついた者に捧げる献身的な姿に、絵美の胸は熱く痛烈に締め付けられていた。
自分の怒りに突き動かされた行動が、今まるで罪のように絵美の心を苛んでいる。
航太もまた、同じ葛藤の渦中にいた。
絵美の呟きに航太は静かに頷き、苦渋に満ちた眼差しで遠くの地平線を見つめる。
「オレも同じだ。けど、まだ複雑だぜ。一真の奴、智美の時は冷たかった。命が危険なのは、智美だってシェルクードだって同じだろ? なのに、あんな奴は必死に助けて……目の前で傷ついてなきゃ、関係ねぇってのかよ!」
航太の声には義弟である一真への苛立ちと、拭いきれぬ複雑な思いが滲んでいた。
幼なじみの智美が敵の只中で消息を絶ち、まだ絶望が心を蝕んでいる。
そんな中……一真が仲間を侮辱する者を懸命に救う姿は、航太の心に暗い波紋を広げていた。
理解したいのに理解しきれない、深い矛盾である。
エリサは2人の言葉を聞きながら、そっと目を伏せた。
エリサの心には航太や絵美への共感と、ベルヘイム国出身者としての負い目が交錯していく。
「航太さん、絵美。その気持ち、痛いほど分かるよ。戦場に出ている兵士の皆さんの中には、安全な場所で治療だけしている部隊を快く思ってない人達もいる。仲間を侮辱する人も、たまにいるんだよ。そんな時は、もう知らない! って思う。でもね、そんな人達も仲間なんだよ。ヨトゥンの侵略から人々を守り、姫様を救い出す為の……」
エリサの声は、優しく航太達に寄り添う言葉だった。
しかし……その裏には、ベルヘイム国出身者としての重い負い目があった。
航太にとっての幼なじみ、絵美にとっての双子の姉。
そんな大切な人が、戦場の闇に消えた。
その大切な人の為なのに、仲間であるはずの兵士たちは手を差し伸べようとしない。
エリサは異国のために命を賭けて戦う彼らに対し、言葉にできない申し訳なさで胸が張り裂けそうだった。
「でも、一真さんだって……きっと、辛いと思う。それでも……どんな時だって、傷ついた人を分け隔てなく救おうとしてる。それなのに、大切な人に冷たくされたら……」
ティアは胸の前で手を固く組み、そこで言葉を飲み込んだ。
ティアの言葉には、本来なら言わなくても伝わるはずの想いが溢れていた。
そう……誰もが、分かっている。
分かっていても、納得できない何かがある。
ティアは、その葛藤を言葉にすることを諦め唇を噛みしめた。
「ティアさん、ありがと……一真のこと、分かってくれて……」
絵美はティアにそっと抱きつき、感謝の言葉を口にする。
小さなその声は、最後には掠れ風に溶けるように消えていく。
「私、ダメだな。分かっているはずなのに……」
絵美の瞳が少し光った、その瞬間……
静寂を切り裂く、鋭い声が響き渡る。
「静かに! 何か……聞こえる! 嫌な予感がするな……」
ランカストの言葉に、空気が一瞬で凍りつく。
皆が息を殺し、耳を澄ます。
すると遠くから、死神の足音のような馬蹄の響きが聞こえてきた。
最初は微かだったその音は、急速に……まるで嵐の前触れのように、焼け焦げた大地を震わせる。
「将軍! こっちは7人しかいねぇ! しかも4人は戦えねぇぞ!」
航太の叫びは、恐怖と覚悟が交錯していた。
その声に、皆の緊張が一気に高まる。
灰混じりの風が唸りを上げ、肌を刺す冷たさが全員の背筋を凍らせた。
「将軍、航ちゃん。ホワイト・ティアラ隊の皆は、必ず守らなきゃ! それと、荷台で倒れている人もいるから……8人ね!」
絵美は灰で汚れた腕で、瞳から流れていた水滴を飛ばす。
そして、ホワイト・ティアラ隊の面々の背後……馬蹄の響きと土煙が迫ってくる方向に、自らを移動させた。
「分かっている! 航太! 絵美! ホワイト・ティアラ隊の戦いは見たな? 彼らは自らの戦いを全うし、1人の命を救った。次は我々の番だ! ホワイト・ティアラ隊は、我々の最後の生命線だ! 絶対に……守り抜くぞ!」
叫んだランカストは、絵美の前に踊り出る。
「私とエリサは、魔法でサポート出来ます! 一真は、ティアを守りなさい! 必要なら、私たちを置いて逃げなさい!」
ランカストはネイアに向かって頷くと、陣形を整える。
ランカストを中心に、前衛には航太が立つ。
全体が見渡せる位置に絵美を置き、中心の荷台を守る。
荷台からは、ネイアとエリサが魔法でサポートを行う。
現状では、これしか出来ない。
その姿は……焼け野原に舞う灰の中で、運命に抗う最後の戦士たちのように神聖に見える。
そのシルエットはまるで、最後の抵抗を誓う希望の騎士のようだった。
陣形を整えた瞬間、視界の先に騎馬隊の影が浮かぶ。
馬蹄の音は雷鳴のように轟き、敵の接近を否応なしに告げてくる。
そして灰色の靄を突き破り、その先頭に立つ者の姿が現れた。
「ガイエン! 何人、殺したと思ってんだ! てめぇの境遇、少しは同情してたがよ……流石にやりすぎだぜ!」
航太の声は、怒りと憎悪に震える。
そう……騎馬隊の先頭に立つのは、紅の鎧に身を包んだガイエンだった。
その姿は、まるで地獄の業火を纏った死神そのもの。
夕暮れの赤い光を浴び、鎧は血のように輝いている。
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