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紅の剣士と恐怖の剣
凄惨な戦場1
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航太達は、馬の背で揺られていた。
2人乗りの後ろ側、緊張で背筋が伸びる。
「騎士やらなんやらって、おだてられてたくせにダサイの~。ぷぷっ!」
絵美が航太を見て、満面の笑みを浮かべた。
(お前も同じだろ!)
怒りの籠った視線を絵美に向けると、衝撃映像が航太の目に飛び込んでくる。
(絵美の頭の上に、アヒル野郎が乗ってんじゃねーか! コントやってんじゃねぇんだぞ! このふざけた状況、みんなは何も感じないのか?)
笑っている絵美の頭の上に、シリアスな表情を浮かべるガーゴ。
明らかに、笑いを誘いにきている。
不謹慎だろと注意をしようとした航太だが、馬から落ちない事に必死で実際にはそれどころではない。
航太達の為に全速力で馬を走らせていない結果、前衛との距離が開いてしまっていた。
「あの……隊長さんと距離が離れてしまってますけど、大丈夫なんでしょうか?」
「ゼーク殿なら心配ありませんよ。それに、ここは部隊の真ん中より少し後方。一番安全ですよ」
智美の不安そうな声を聞いた騎士が、全員を安心させるように優しい声で伝える。
オゼス村にはアムルサイト・ゼークと呼ばれる、長く美しい銀髪を持つ少女を大将とした数十騎の部隊が馬を走らせていた。
若い女性の部隊長だが、部下からの信頼が伺える。
航太達は安心して、今の状況に順応する事を優先した。
落ち着いて辺りを見渡してみると、道は狭く両側は林に囲まれ、馬の走る耳障りの良い音だけが聞こえてくる。
先程までいた砂浜とは、全く違う光景が流れていた。
今まで気付かなかったが、見上げれば元の世界では絶対に見れないであろう、驚くほど美しい星空が広がっている。
最前線から少し離れている場所を走っているので、戦闘が起きれば距離を置くことができる。
後方からの奇襲を恐れる可能性は少ない。
今回はこちらが奇襲を仕掛けるのだ。
仮に後方の部隊が襲われても、前方に全力で走れば先行する部隊に救援要請も出来る。
皆からは緊張感が漂よい、真剣な眼差しでオゼス村に向かっていた。
一秒でも早く着辿り着き、多くの人を救いたいという意思が感じられる。
という状況の中、絵美の頭の上にガーゴが乗っかっている。
(冷静になったら、余計にイライラしてきたぜ! 絵美の野郎! 不謹慎にも程があるだろ!)
航太が同意を求めようと、智美の方をチラっと見た。
智美は俯いており、恐怖に震えている。
絵美を注意する余裕なんてなく、その顔は青ざめていた。
人を傷つける戦場なんかには、本当は行きたくないのだろう。
そんな智美を心配していた航太に、一真が緊張した声で話しかけてきた。
「みんな、自分を保とうと必死だね……こんな場所に、みんなを連れてくるべきじゃなかったのかな……」
その言葉に、絵美も今の状況下で自分を保とうと必死なことに航太は気付く。
「まったくよー! 年上のくせに、オレは駄目だね!」
航太は髪を一度クシャっと掻き、一真に向かって言う。
「大丈夫さ……一真をこんな場所に一人で行かせるより、はるかにマシだぜ!」
確かに、異常な状況ではある。
これから行くのは、本当の戦場だ……
ただ航太は、まだどこか他人事のように感じていた。
自分達が傷ついたり、死んだりする事はないだろうと……
「馬を止めてくれ! 倒れている人がいる!」
オゼス村に近づいたところで、一真が大声を上げた。
道端から見える林の中で、不自然な格好で倒れている人を発見したのだ!!
一真が止まった馬から飛び下りると、倒れている人に向かった。
「……っっ!」
倒れている人を見た瞬間、一真は思わず唾を飲み込む。
その体は、あまりにも酷いものだった。
体中を切り刻まれて、最後は心臓を一突きにされたのだろう。
全身の斬り傷に、致命傷になったであろう胸の傷……
木や草には血が飛び散っており、黒く不気味に光っている。
「うっ……はぁ……」
智美が耐え切れず、林の中に身を隠し嘔吐した。
絵美は、その死体を見ない様に顔を背けている。
「ひでぇ……戦争だからって、ここまでするのかよ……」
航太は、怒りで体が震える。
「いやぁー!」
突然、林の中に僅かに見える灯りの方から悲鳴が聞こえた。
よく見ると、数軒の民家が見えた。
その中のどこかから、悲鳴が聞こえたのだろう。
「何? 何でしゅか~」
ガーゴがヌイグルミのくせに、まるで人間の様にビクッと反応する。
「ガーゴ、ちょっと中の様子見てきて! ヌイグルミなら、死なないでしょ?」
「ミーちゃん酷いでしゅ! でも命令なら、仕方ないから見に行くでしゅ~。恐いでしゅ~」
そういえば、絵美の事を何故かミーちゃんと呼んでいる。
なんかネコっポイからって、一真が言ってたな……
でも魂が憑依してるのは、アヒルなんだよなぁ……
こんな切迫した状態で変な事を考えてしまった航太は少し苦笑しながら、まだ冷静になれると自分に言い聞かせた。
オゼス村の方では、ゼーク隊とクロウ・クルワッハの残党兵が戦ってるのだろう。
大きな声が、いたるところから聞こえてきていた。
「航太殿、ここで待機するのは危険です。一度、本隊に合流しましょう。どこに敵が潜んでいるか分かりません」
航太達が乗っていた馬の騎手をしてくれていた騎士の1人が、剣を構えながら提案する。
「けどよ! 人が死んで……殺されてんだぞ! それに、向こうから悲鳴も聞こえた! 放置して逃げるなんて、出来ねぇだろ!」
航太も、エアの剣を抜いた。
戦場にいるという非常識な状況に、航太達はあまりにも無知過ぎた。
剣も抜かずに嗚咽を漏らす智美と、ただ立ち尽くす絵美に襲いかかる影がある。
林の中の茂みから、僅かな音と共に刃物の怪しげな輝きが月明かりに照らされた。
「っ!」
息を飲む智美……
「ぐっ……おおおおぉぉぉ!」
航太達に付き添ってくれていた騎士のうち2人が、智美と絵美の壁となり凶刃に倒れる。
そして、更に2人……
剣を突き刺し無防備になっている敵兵を倒す為、剣を振る。
その兵の剣は、敵兵に届く。
敵兵は倒した……倒したのだが、剣を放棄した敵兵の素手の攻撃で、1人は頭を潰され、1人は鎧ごと腹部を破壊されていた。
あまりに一瞬の出来事に、航太はただ立ち竦む事しか出来なかった。
「くそっ……こういう事か……」
一真は、小さな声で……誰にも聞こえない声で呟くと、腹部を破壊された騎士の元へ走った。
「すいません……大丈夫ですか?」
「大丈夫です……皆さんご無事なら、逃げて下さい。危険……です……ここは……」
そこまで言うと、ゴフッと血を吐き動かなくなった。
「ちょっと……何が……起きたの……」
智美は足が震え、絵美の目は見開き涙が溢れていた。
「くそっ! オレは、何を偉そうに……人を救う為に、人が死んでたら……ダメだろうが!」
航太は膝をつき、逃げる事を提案してくれた騎士の胸に手を添える。
あの時、直ぐに動いていれば……
馬に乗り、全速力で本隊と合流する為に動いていれば……
敵は、攻撃を仕掛けるという選択を排除していたかもしれない。
そうすれば、今の犠牲は……
「航兄、ショックなのは分かる。けど、これからどうするか考えないと。もう、守ってくれる人はいない。そして、おそらく敵はまだいる。気付かれる前に逃げるか、助けるか……」
一真の言葉が終わる前に、ガーゴが戻ってきた。
「女の人と赤ちゃんが、大変な事になってるでしゅ~。赤い剣が、アワワでしゅ~」
「だ、そうだ。で、貴様らは何者だ?」
真っ赤な髪、真っ赤な鎧、そして血に染まった真っ赤な剣、その手に、首を掴まれているガーゴ……
「奇妙な奴に偵察させるのは、良い考えだがな……もっと、静かな奴を選択すべきだ。こちらとしては、仕事が楽になるんで助かるがな……」
明らかな殺気を纏った男を前に、選択肢が無くなった事を航太は悟っていた……
2人乗りの後ろ側、緊張で背筋が伸びる。
「騎士やらなんやらって、おだてられてたくせにダサイの~。ぷぷっ!」
絵美が航太を見て、満面の笑みを浮かべた。
(お前も同じだろ!)
怒りの籠った視線を絵美に向けると、衝撃映像が航太の目に飛び込んでくる。
(絵美の頭の上に、アヒル野郎が乗ってんじゃねーか! コントやってんじゃねぇんだぞ! このふざけた状況、みんなは何も感じないのか?)
笑っている絵美の頭の上に、シリアスな表情を浮かべるガーゴ。
明らかに、笑いを誘いにきている。
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「あの……隊長さんと距離が離れてしまってますけど、大丈夫なんでしょうか?」
「ゼーク殿なら心配ありませんよ。それに、ここは部隊の真ん中より少し後方。一番安全ですよ」
智美の不安そうな声を聞いた騎士が、全員を安心させるように優しい声で伝える。
オゼス村にはアムルサイト・ゼークと呼ばれる、長く美しい銀髪を持つ少女を大将とした数十騎の部隊が馬を走らせていた。
若い女性の部隊長だが、部下からの信頼が伺える。
航太達は安心して、今の状況に順応する事を優先した。
落ち着いて辺りを見渡してみると、道は狭く両側は林に囲まれ、馬の走る耳障りの良い音だけが聞こえてくる。
先程までいた砂浜とは、全く違う光景が流れていた。
今まで気付かなかったが、見上げれば元の世界では絶対に見れないであろう、驚くほど美しい星空が広がっている。
最前線から少し離れている場所を走っているので、戦闘が起きれば距離を置くことができる。
後方からの奇襲を恐れる可能性は少ない。
今回はこちらが奇襲を仕掛けるのだ。
仮に後方の部隊が襲われても、前方に全力で走れば先行する部隊に救援要請も出来る。
皆からは緊張感が漂よい、真剣な眼差しでオゼス村に向かっていた。
一秒でも早く着辿り着き、多くの人を救いたいという意思が感じられる。
という状況の中、絵美の頭の上にガーゴが乗っかっている。
(冷静になったら、余計にイライラしてきたぜ! 絵美の野郎! 不謹慎にも程があるだろ!)
航太が同意を求めようと、智美の方をチラっと見た。
智美は俯いており、恐怖に震えている。
絵美を注意する余裕なんてなく、その顔は青ざめていた。
人を傷つける戦場なんかには、本当は行きたくないのだろう。
そんな智美を心配していた航太に、一真が緊張した声で話しかけてきた。
「みんな、自分を保とうと必死だね……こんな場所に、みんなを連れてくるべきじゃなかったのかな……」
その言葉に、絵美も今の状況下で自分を保とうと必死なことに航太は気付く。
「まったくよー! 年上のくせに、オレは駄目だね!」
航太は髪を一度クシャっと掻き、一真に向かって言う。
「大丈夫さ……一真をこんな場所に一人で行かせるより、はるかにマシだぜ!」
確かに、異常な状況ではある。
これから行くのは、本当の戦場だ……
ただ航太は、まだどこか他人事のように感じていた。
自分達が傷ついたり、死んだりする事はないだろうと……
「馬を止めてくれ! 倒れている人がいる!」
オゼス村に近づいたところで、一真が大声を上げた。
道端から見える林の中で、不自然な格好で倒れている人を発見したのだ!!
一真が止まった馬から飛び下りると、倒れている人に向かった。
「……っっ!」
倒れている人を見た瞬間、一真は思わず唾を飲み込む。
その体は、あまりにも酷いものだった。
体中を切り刻まれて、最後は心臓を一突きにされたのだろう。
全身の斬り傷に、致命傷になったであろう胸の傷……
木や草には血が飛び散っており、黒く不気味に光っている。
「うっ……はぁ……」
智美が耐え切れず、林の中に身を隠し嘔吐した。
絵美は、その死体を見ない様に顔を背けている。
「ひでぇ……戦争だからって、ここまでするのかよ……」
航太は、怒りで体が震える。
「いやぁー!」
突然、林の中に僅かに見える灯りの方から悲鳴が聞こえた。
よく見ると、数軒の民家が見えた。
その中のどこかから、悲鳴が聞こえたのだろう。
「何? 何でしゅか~」
ガーゴがヌイグルミのくせに、まるで人間の様にビクッと反応する。
「ガーゴ、ちょっと中の様子見てきて! ヌイグルミなら、死なないでしょ?」
「ミーちゃん酷いでしゅ! でも命令なら、仕方ないから見に行くでしゅ~。恐いでしゅ~」
そういえば、絵美の事を何故かミーちゃんと呼んでいる。
なんかネコっポイからって、一真が言ってたな……
でも魂が憑依してるのは、アヒルなんだよなぁ……
こんな切迫した状態で変な事を考えてしまった航太は少し苦笑しながら、まだ冷静になれると自分に言い聞かせた。
オゼス村の方では、ゼーク隊とクロウ・クルワッハの残党兵が戦ってるのだろう。
大きな声が、いたるところから聞こえてきていた。
「航太殿、ここで待機するのは危険です。一度、本隊に合流しましょう。どこに敵が潜んでいるか分かりません」
航太達が乗っていた馬の騎手をしてくれていた騎士の1人が、剣を構えながら提案する。
「けどよ! 人が死んで……殺されてんだぞ! それに、向こうから悲鳴も聞こえた! 放置して逃げるなんて、出来ねぇだろ!」
航太も、エアの剣を抜いた。
戦場にいるという非常識な状況に、航太達はあまりにも無知過ぎた。
剣も抜かずに嗚咽を漏らす智美と、ただ立ち尽くす絵美に襲いかかる影がある。
林の中の茂みから、僅かな音と共に刃物の怪しげな輝きが月明かりに照らされた。
「っ!」
息を飲む智美……
「ぐっ……おおおおぉぉぉ!」
航太達に付き添ってくれていた騎士のうち2人が、智美と絵美の壁となり凶刃に倒れる。
そして、更に2人……
剣を突き刺し無防備になっている敵兵を倒す為、剣を振る。
その兵の剣は、敵兵に届く。
敵兵は倒した……倒したのだが、剣を放棄した敵兵の素手の攻撃で、1人は頭を潰され、1人は鎧ごと腹部を破壊されていた。
あまりに一瞬の出来事に、航太はただ立ち竦む事しか出来なかった。
「くそっ……こういう事か……」
一真は、小さな声で……誰にも聞こえない声で呟くと、腹部を破壊された騎士の元へ走った。
「すいません……大丈夫ですか?」
「大丈夫です……皆さんご無事なら、逃げて下さい。危険……です……ここは……」
そこまで言うと、ゴフッと血を吐き動かなくなった。
「ちょっと……何が……起きたの……」
智美は足が震え、絵美の目は見開き涙が溢れていた。
「くそっ! オレは、何を偉そうに……人を救う為に、人が死んでたら……ダメだろうが!」
航太は膝をつき、逃げる事を提案してくれた騎士の胸に手を添える。
あの時、直ぐに動いていれば……
馬に乗り、全速力で本隊と合流する為に動いていれば……
敵は、攻撃を仕掛けるという選択を排除していたかもしれない。
そうすれば、今の犠牲は……
「航兄、ショックなのは分かる。けど、これからどうするか考えないと。もう、守ってくれる人はいない。そして、おそらく敵はまだいる。気付かれる前に逃げるか、助けるか……」
一真の言葉が終わる前に、ガーゴが戻ってきた。
「女の人と赤ちゃんが、大変な事になってるでしゅ~。赤い剣が、アワワでしゅ~」
「だ、そうだ。で、貴様らは何者だ?」
真っ赤な髪、真っ赤な鎧、そして血に染まった真っ赤な剣、その手に、首を掴まれているガーゴ……
「奇妙な奴に偵察させるのは、良い考えだがな……もっと、静かな奴を選択すべきだ。こちらとしては、仕事が楽になるんで助かるがな……」
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