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紅の剣士と恐怖の剣
凄惨な戦場4
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しかし痛みを伴う斬撃の衝撃は、いつになっても身体に届かない。
エリサは恐る恐る目を開けると、自分が水の球体に入っている事に気付く。
そして目の前で、智美が2本の剣を交差させてヘルギの攻撃を防いでいる姿を見る。
「私の目の前では、誰も殺させない! 絶対に!」
智美が叫び、その直後……防御から攻撃へと切り替える。
初撃の天叢雲剣は避けられたが追撃の水の刃を纏った草薙剣が、ガイエンの右上腕を深く切り裂く!
「ぐわっ!」
水の刃による予期せぬ攻撃範囲の拡大が、ガイエンに傷を負わせ後方に飛びのかせた。
「エリサさん、大丈夫ですか? 怪我は?」
「私は平気です。智美様、ありがとうございます。水の力で、体力も回復出来たみたいです」
いつの間にか水の球体は割れ、心身共に回復したエリサの姿がそこにはあった。
「戦いながら、皆んな成長してる。これなら、やれる!」
航太はこの戦場から生き残れる可能性を感じ、高揚していた。
「なるほど、なかなか良い編成だ。バランス型の風の剣に、二刀流の回復系と中距離の矛。Myth Knightとしては成長過程だろうが、3人もいると流石に厄介だ。貴様達の得意な戦い方に付き合ってやろうとも思ったが、面倒だ。少し本気を出してやろう」
ガイエンから余裕の笑いが消え、ヘルギが更に赤く……紅く輝く。
ガイエンが掲げたヘルギは輝きを増し、その光の照射範囲が拡大される。
先程の倍は、明るくなっただろうか?
その分光が届く範囲が増え、絵美の身体が赤に染まる。
「ひやぁぁぁぁ!」
謎の悲鳴を上げた絵美は膝を振るわせた後、尻餅をついた。
その表情は恐怖に歪んでいる。
「うおおぉぉぉ!」
恐怖に苛まれている絵美に近付こうとしたガイエンに、高速で飛び込んでくる影……
その正体は、目を固く閉ざした航太だった。
風の力で自分の身体を飛ばし、空気の流れでガイエンの位置を感じ、エアの剣を振った。
ガァキキキィぃぃ!
金属同士が激しくぶつかり合う音が、林の中を駆け巡る。
それ程に鋭い音が、悲鳴の様に周囲に充満した。
「こいつ……神剣の力を試しているのか? それとも、力の上限を見せない為に小出しにしているのか?」
エアの剣の一撃をヘルギで止めたガイエンは、新しい事を次々とやってくる航太を不気味に感じ、少し距離をとった。
ヘルギは輝きを失っており、絵美は恐怖から立ち直っていた。
「なんだったの……今の? もー、イヤんなっちゃう!」
少し頬を赤らめた絵美が、立ち上がりながら天沼矛を構え直す。
「絵美、大丈夫か? あの赤い光……見なければ、効果は無さそうだ。目を瞑って戦えば、恐怖に慄く事は無い!」
「分かった! なる程ねー。目を固く閉ざして、圧倒的な実力差のある相手と戦うって事かー! 航ちゃん、やっぱり頭悪いね!」
航太は身体を硬直させて、悲しみの汗を流しながら智美に助けを求める。
「あのねぇ……戦いの素人が敵の指揮官クラスと戦ってるのに、目を閉じてどうするのよ……光を見なければいいのは分かったけど、それだけじゃ私達の圧倒的不利は変わらないよ」
「だとしたら、剣を常に動かさなきゃいけない状況を作るしかないですね。剣を使っている時は、あの不気味な赤い光は消えてますから」
エリサの冷静な分析に、航太はウンウンと力強く頷く。
「それよ! それを言おうとしてたのに、2人が言葉を遮るから言えなかったぜ! 絶え間ない連続攻撃! これしかねぇ!」
「分かった! なる程ねー。力の制御出来てない神剣で、3人同時に攻撃を仕掛けると! 意図せず攻撃範囲が広がるかもしれないけど、同士討ちも辞さないって事ね! 流石、頭の悪い人は覚悟が違うわー」
航太は更に身体を硬直させ、瞳に涙を浮かべながら智美を見る。
「あのねぇ……コントやってるんじゃないのよ。状況を考えて! とりあえず今分かってるのは、赤い光を見ちゃうと身体が恐怖で動かなくなる。その光は、効果範囲があるのと剣を動かしてると発動しない。それを踏まえて、戦いながら対策を考えるしかないわ!」
結局、航太たちはジリジリと後退するしかなかった。
「来ないなら、こちらから行くぞ! 腹の探り合いは得意じゃないんでな!」
ヘルギを構え、加速するガイエン。
数多の戦場を駆け抜けているだけあり、身体能力も当然高い。
あっと言う間に距離を詰められ、ヘルギの間合いに入ってしまう。
ガイエンが狙ったのは、水の力を覚醒しつつある智美だった。
先程、腕を傷つけられた恨みもあったが、回復系の力は先に潰すのが戦いの基本である。
ガイエンは冷静に、その基本を行動に移す。
高速で振られたヘルギに、智美の剣術では防御する事など不可能であった。
しかしヘルギは、智美の身体を斬る事は出来ない。
意思を持っているかの様に天叢雲剣から水が溢れ出し、ヘルギの剣圧を水圧で押し返していた。
「ちっ! なかなかに厄介な神剣だ! これ程の神剣が、素人を選ぶとは……にわかには信じられん!」
「あなたは、人なんでしょ? なんでヨトゥンに協力してるの? ヨトゥンは、人間の世界に攻めて来た……戦争を起こして、人を不幸にしているんでしょ?」
智美は、感じていた疑問を吐き出した。
人同士でも分かり合えない事は多いのに、別の種族の兵として人と戦うなんて……
智美には、考えられなかった。
「なんだ? 人なら、必ず人と共に戦わなきゃいけないのか? そんな事、誰が決めた! ふざけるな!」
ガイエンは力の限り、智美の腹に蹴りを入れる。
殺傷能力の無い攻撃だったからか……水の力は発動せず、智美の身体は宙を舞う。
智美がガイエンの目の前で、その身を丸くして倒れた。
「智ちゃん! 危ない!」
咄嗟に絵美が飛び出し、天沼矛をしならせ振るう!
すると矛先から鋭い水の刃が飛び出し、ガイエンを襲った。
その攻撃範囲は先程の草薙剣の数倍……幾重の水の層となり、ガイエンに襲いかかる。
「ぐわっ!」
ガイエンの深紅の鎧を切り裂き、脇腹から鮮血が飛び散った。
「貴様ら……神剣の力だけで、この俺を傷つけやがって! 所詮、神は人間の味方と言う事だ。神なんぞが支配するこの腐った世界を、俺はヨトゥンと共に変えてやるんだ! 神の力と共に、俺の前から消え失せろ!」
ガイエンの怒りがヘルギ伝わり、その刀身が紅く不気味に光る。
光ったヘルギを振ると、紅き閃光が周囲に広がった。
その閃光に触れた智美は……
「きゃああああっ!」
恐怖に叫び声を上げ、その身体を更に丸くした。
「冗談じゃねぇぞ! 効果を使いながら、剣を使えるじゃねぇか!」
航太は鎌鼬を放ち、エリサはファイア・ボールで援護し、ガイエンの視線を智美から逸らしながら後退する。
絵美もそのことに気づき、智美を抱えて距離を取る。
「航ちゃん、どうする? 大分ヤバイよ! 怒らせたのは、私のせいだけど……」
航太は少し考えた後、ガイエンに向かって声を張り上げる。
「お前はなんで、人間と共に戦わないんだ! 人間側は、ヨトゥンに一方的に攻め込まれてんだろ! ヨトゥンに恨みとか、ねぇのかよ!」
ガイエンはオレンジから赤へと変わっていくオゼス村の空を見上げ、航太を睨みつける。
その瞳には、少し悲しみを感じる。
何かを思い出すかのように……
「面倒だが……貴様らは、何も知らないようだからな。人を正義と思い込んで死んでいくのも忍びない。俺の部隊の連中が金品を略奪して戻ってくるのも、もう少し時間がかかりそうだしな。いいだろう、そんなに知りたきゃ教えてやる!」
ガイエンは、語り始める。
幼き頃に起きた絶望の物語を……
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そして目の前で、智美が2本の剣を交差させてヘルギの攻撃を防いでいる姿を見る。
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初撃の天叢雲剣は避けられたが追撃の水の刃を纏った草薙剣が、ガイエンの右上腕を深く切り裂く!
「ぐわっ!」
水の刃による予期せぬ攻撃範囲の拡大が、ガイエンに傷を負わせ後方に飛びのかせた。
「エリサさん、大丈夫ですか? 怪我は?」
「私は平気です。智美様、ありがとうございます。水の力で、体力も回復出来たみたいです」
いつの間にか水の球体は割れ、心身共に回復したエリサの姿がそこにはあった。
「戦いながら、皆んな成長してる。これなら、やれる!」
航太はこの戦場から生き残れる可能性を感じ、高揚していた。
「なるほど、なかなか良い編成だ。バランス型の風の剣に、二刀流の回復系と中距離の矛。Myth Knightとしては成長過程だろうが、3人もいると流石に厄介だ。貴様達の得意な戦い方に付き合ってやろうとも思ったが、面倒だ。少し本気を出してやろう」
ガイエンから余裕の笑いが消え、ヘルギが更に赤く……紅く輝く。
ガイエンが掲げたヘルギは輝きを増し、その光の照射範囲が拡大される。
先程の倍は、明るくなっただろうか?
その分光が届く範囲が増え、絵美の身体が赤に染まる。
「ひやぁぁぁぁ!」
謎の悲鳴を上げた絵美は膝を振るわせた後、尻餅をついた。
その表情は恐怖に歪んでいる。
「うおおぉぉぉ!」
恐怖に苛まれている絵美に近付こうとしたガイエンに、高速で飛び込んでくる影……
その正体は、目を固く閉ざした航太だった。
風の力で自分の身体を飛ばし、空気の流れでガイエンの位置を感じ、エアの剣を振った。
ガァキキキィぃぃ!
金属同士が激しくぶつかり合う音が、林の中を駆け巡る。
それ程に鋭い音が、悲鳴の様に周囲に充満した。
「こいつ……神剣の力を試しているのか? それとも、力の上限を見せない為に小出しにしているのか?」
エアの剣の一撃をヘルギで止めたガイエンは、新しい事を次々とやってくる航太を不気味に感じ、少し距離をとった。
ヘルギは輝きを失っており、絵美は恐怖から立ち直っていた。
「なんだったの……今の? もー、イヤんなっちゃう!」
少し頬を赤らめた絵美が、立ち上がりながら天沼矛を構え直す。
「絵美、大丈夫か? あの赤い光……見なければ、効果は無さそうだ。目を瞑って戦えば、恐怖に慄く事は無い!」
「分かった! なる程ねー。目を固く閉ざして、圧倒的な実力差のある相手と戦うって事かー! 航ちゃん、やっぱり頭悪いね!」
航太は身体を硬直させて、悲しみの汗を流しながら智美に助けを求める。
「あのねぇ……戦いの素人が敵の指揮官クラスと戦ってるのに、目を閉じてどうするのよ……光を見なければいいのは分かったけど、それだけじゃ私達の圧倒的不利は変わらないよ」
「だとしたら、剣を常に動かさなきゃいけない状況を作るしかないですね。剣を使っている時は、あの不気味な赤い光は消えてますから」
エリサの冷静な分析に、航太はウンウンと力強く頷く。
「それよ! それを言おうとしてたのに、2人が言葉を遮るから言えなかったぜ! 絶え間ない連続攻撃! これしかねぇ!」
「分かった! なる程ねー。力の制御出来てない神剣で、3人同時に攻撃を仕掛けると! 意図せず攻撃範囲が広がるかもしれないけど、同士討ちも辞さないって事ね! 流石、頭の悪い人は覚悟が違うわー」
航太は更に身体を硬直させ、瞳に涙を浮かべながら智美を見る。
「あのねぇ……コントやってるんじゃないのよ。状況を考えて! とりあえず今分かってるのは、赤い光を見ちゃうと身体が恐怖で動かなくなる。その光は、効果範囲があるのと剣を動かしてると発動しない。それを踏まえて、戦いながら対策を考えるしかないわ!」
結局、航太たちはジリジリと後退するしかなかった。
「来ないなら、こちらから行くぞ! 腹の探り合いは得意じゃないんでな!」
ヘルギを構え、加速するガイエン。
数多の戦場を駆け抜けているだけあり、身体能力も当然高い。
あっと言う間に距離を詰められ、ヘルギの間合いに入ってしまう。
ガイエンが狙ったのは、水の力を覚醒しつつある智美だった。
先程、腕を傷つけられた恨みもあったが、回復系の力は先に潰すのが戦いの基本である。
ガイエンは冷静に、その基本を行動に移す。
高速で振られたヘルギに、智美の剣術では防御する事など不可能であった。
しかしヘルギは、智美の身体を斬る事は出来ない。
意思を持っているかの様に天叢雲剣から水が溢れ出し、ヘルギの剣圧を水圧で押し返していた。
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智美がガイエンの目の前で、その身を丸くして倒れた。
「智ちゃん! 危ない!」
咄嗟に絵美が飛び出し、天沼矛をしならせ振るう!
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恐怖に叫び声を上げ、その身体を更に丸くした。
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航太は少し考えた後、ガイエンに向かって声を張り上げる。
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ガイエンはオレンジから赤へと変わっていくオゼス村の空を見上げ、航太を睨みつける。
その瞳には、少し悲しみを感じる。
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