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紅の剣士と恐怖の剣
白銀の戦乙女1
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「ティア、キミの天敵を……見つけた。今の俺には、君を救う力がない。それでも、あいつを殺すことはできる。今日で、この地獄を終わらせてやる」
木々の闇に身を沈め、音を立てまいと大剣を握り潰すほどに力を込めた。
冷たい汗が背を伝い、心臓の鼓動が耳元でうるさく響く。
レイ・ノースランの瞳は憎悪と決意に燃え、ただガイエンだけを捉えていた。
レイの心の中でで渦巻くのは、ティアを守れなかった無力感……そして、ガイエンに対する怒りの嵐だ。
幼い頃ガイエンに心を踏みにじられ、無垢だった笑顔を奪われたティア。
そして今、ガイエンの手で身体まで傷つけられた。
家の中で、血を流し倒れているティア……その光景が脳裏に繰り返し焼き付き、胸を締め付ける。
オレが、もっと強ければ……もっと早く、気づいていれば……
そんな後悔が苛むたびに、ガイエンへの憎しみがさらに膨らんだ。
許す?
そんな選択肢は、最初から存在しない。
卑怯者と罵られようが、姑息だと蔑まれようが、そんな雑音で決意は揺るがない。
不意打ちで、ガイエンの命を奪う。
ガイエンと正面から立ち向かう若者たちの戦闘が始まったら、その隙を突く。
ティアを想うたび心が締め付けられ、震えそうになる手をごまかすように剣を握り直した。
息を殺し木々の間で全身を硬直させながら、自分自身に言い聞かせる……失敗は許されない。
ガイエンを仕留めるその瞬間まで、オレはただの影であり復讐の刃でしかない。
ガイエンとの力の差は歴然だからこそ、確実に倒せるタイミングで奇襲する。
そう心に決めたレイは、更に息を潜めた……
「な……長かったでしゅ~。あまりにも長くて、寝てしまうとこだったでしゅよ~。入学式の校長先生の話より、長かったでしゅ~。げんなりでしゅよ~」
ガーゴの間の抜けた声が、重苦しい空気を粉々に砕いた。
(なんつー、緊張感のない……ってか、ぬいぐるみって眠くなるのか?)
航太は内心で毒づきつつ、呆れと困惑が入り混じった視線をガーゴに投げる。
「付き合いきれんでしゅ~。あの民家で、一休みするでしゅよ~」
ガーゴはまるで子供のようにはしゃぎながら、一真たちが入った民家へと軽やかに飛び込んだ。
「あ~、人が倒れてた民家だったでしゅ~。血で、汚れてしまったでしゅ~。やっちまったでしゅよ~」
その声が民家から響き渡り、航太は思わず顔をしかめる。
(一真……こりゃ、マジでご愁傷様だな……)
一瞬だけ民家に目をやり、航太はすぐにガイエンの周囲へと鋭い視線を巡らせた。
智美は震えを抑え込んでいたが、その瞳から流れる涙が頬を伝い静かに地面に滴り落ちていた。
「ちっ、馬鹿にしてやがるのか! いい度胸してるじゃねぇか!」
ガイエンは顔を真っ赤に染め、怒りに震える声で吠えた。
まるで抑えきれぬ炎が、その瞳で燃え盛っているかのようだ。
「いや、すまねぇ……あいつには、オレ達も頭抱えてるんだ。オレたちは、決して馬鹿になんかしてねぇよ」
航太は懸命に弁解しつつ、智美へと視線を移す。
その視線を感じたガイエンもまた、彼女の泣き腫らした顔に目を留めた。
「お前ら……何か、不思議な雰囲気を持ってるな。それに、何だか今日は懐かしさを感じる夜だ……喋りすぎたな」
ガイエンの表情がほんのわずかに緩み、硬い仮面の奥に隠された何かが見えた気がした。
「誰かに、自分の心の奥底を聞いて欲しかったんだよ! 話を聞いてもらうだけで、心が救われる時だってあるんだよ!」
絵美が軽やかな声で、しかしガイエンの傷にそっと触れるような優しさを込めて言った。
まるで風に舞う花びらのように、彼女の言葉は場に柔らかく響いた。
「そうだ。人間は、お前の言う通り弱いかもしれねぇ! けど……助け合ったり、思いやったりすることもできる。気持ちが繫る事で何倍もの力を引き出せるし、心に安らぎだって得られるんだ。確かに、人間を信じられなくなる体験をしたかもしれねぇが……少しずつでも、信じてみねぇか?」
航太の声は熱を帯び、ガイエンの心に届くことを願うように力強く響いた。
だが、その瞬間……
茂みが激しく揺れ、クレイモアのような巨大な大剣を握った男が雷鳴のような咆哮と共に飛び出してきた。
「貴様が……貴様がティアを! 人の心を踏みにじった罪を、今ここで償え!」
男の瞳は憎悪に燃え、大剣を振り上げる動作に合わせて空気が裂けるような音が響いた。
大剣の重さを背負った一撃が、ガイエンへと襲いかかる。
バシュッ!
決着は、あまりにも一瞬だった。
ヘルギが漆黒の中で赤き閃光を放ち、男の大剣をまるで紙のように両断した。
刃は止まらず、男の胸を深々と貫く。
鮮血が噴水のように吹き出し、木々や草を赤く染め上げ凄惨な絵画を描き上げる。
「いやぁぁぁぁぁ!」
智美が悲鳴を上げ、両手で顔を覆いその場に崩れ落ちる。
地面に膝をついた彼女の肩が、小刻みに震えていた。
「ガイエン、てめぇっ! やりすぎなんだよ!」
航太は怒りに我を忘れ、エアの剣を本能的に構えた。
「ふん……貴様ら、甘すぎるな。人が助け合えるのは、自分に危険が及ばねぇ時だけだ。圧倒的な力の前では、誰もが保身に走る……それが人間の本性だっ!」
ガイエンは冷たく言い放ち、ヘルギを握る手に力を込める。
ヘルギに付着した血液を一振りで払うと、航太へと疾風のように斬りかかった。
ガキィィィ!
エアの剣とヘルギが火花を散らし、金属が悲鳴を上げる。
航太は剣の間に風を渦巻かせ、殺意に満ちた剣圧を必死に押し返した。
風で剣圧を抑えた為、両手に走る痺れはない。
「ガイエン! オレたちに、戦う理由なんかねぇだろ! オレたちは、お前の話に共感できた。同時に、このままじゃダメだとも思ってる! 手を……取り合える筈だ!」
航太は叫びながら、倒れた男に一瞬だけ目をやる。
戦争の中で刃を向ければ、死の可能性はある……そう、理性では理解していた。
ガイエンが悪い訳ではない……戦争をしている事が、悪いのだ。
戦争に巻き込まれているから、無駄に散る命がある。
「どうかな? お前らは、ヨトゥン軍で戦えるってのか? ベルヘイム軍に……人間側に付いている限り、その男と同じだ。オレにとっては、敵でしかねぇ!」
ガイエンは吼えるように言葉を叩きつけ、自らを鼓舞するかのように高速で剣を繰り出した。
「うわぁぁぁ!」
航太は全身に風を纏い、太刀筋をずらしながら命懸けで防ぐ。
しかしヘルギの刃は徐々に航太の皮膚を切り裂き、鮮血が無数に飛び散り始めた。
身体中が熱を持ち、痛みが意識を蝕む。
「何で……何で、分かんないのよー!」
絵美が叫び、ガイエンの横から天沼矛を突き出す。
しかしガイエンの動きはあまりにも速く、軽く弾き返されてしまう。
経験の差は、絶望的な程だった。
ガイエンは獲物を航太に定め、止めを刺す体勢に入る。
ヘルギを赤く輝かせ、完璧な間合いから渾身の一撃を放った。
航太は、全身を貫くような恐怖に打ち震える。
冷や汗が額から滴り落ちる中、恐怖で目を固く閉じた……
木々の闇に身を沈め、音を立てまいと大剣を握り潰すほどに力を込めた。
冷たい汗が背を伝い、心臓の鼓動が耳元でうるさく響く。
レイ・ノースランの瞳は憎悪と決意に燃え、ただガイエンだけを捉えていた。
レイの心の中でで渦巻くのは、ティアを守れなかった無力感……そして、ガイエンに対する怒りの嵐だ。
幼い頃ガイエンに心を踏みにじられ、無垢だった笑顔を奪われたティア。
そして今、ガイエンの手で身体まで傷つけられた。
家の中で、血を流し倒れているティア……その光景が脳裏に繰り返し焼き付き、胸を締め付ける。
オレが、もっと強ければ……もっと早く、気づいていれば……
そんな後悔が苛むたびに、ガイエンへの憎しみがさらに膨らんだ。
許す?
そんな選択肢は、最初から存在しない。
卑怯者と罵られようが、姑息だと蔑まれようが、そんな雑音で決意は揺るがない。
不意打ちで、ガイエンの命を奪う。
ガイエンと正面から立ち向かう若者たちの戦闘が始まったら、その隙を突く。
ティアを想うたび心が締め付けられ、震えそうになる手をごまかすように剣を握り直した。
息を殺し木々の間で全身を硬直させながら、自分自身に言い聞かせる……失敗は許されない。
ガイエンを仕留めるその瞬間まで、オレはただの影であり復讐の刃でしかない。
ガイエンとの力の差は歴然だからこそ、確実に倒せるタイミングで奇襲する。
そう心に決めたレイは、更に息を潜めた……
「な……長かったでしゅ~。あまりにも長くて、寝てしまうとこだったでしゅよ~。入学式の校長先生の話より、長かったでしゅ~。げんなりでしゅよ~」
ガーゴの間の抜けた声が、重苦しい空気を粉々に砕いた。
(なんつー、緊張感のない……ってか、ぬいぐるみって眠くなるのか?)
航太は内心で毒づきつつ、呆れと困惑が入り混じった視線をガーゴに投げる。
「付き合いきれんでしゅ~。あの民家で、一休みするでしゅよ~」
ガーゴはまるで子供のようにはしゃぎながら、一真たちが入った民家へと軽やかに飛び込んだ。
「あ~、人が倒れてた民家だったでしゅ~。血で、汚れてしまったでしゅ~。やっちまったでしゅよ~」
その声が民家から響き渡り、航太は思わず顔をしかめる。
(一真……こりゃ、マジでご愁傷様だな……)
一瞬だけ民家に目をやり、航太はすぐにガイエンの周囲へと鋭い視線を巡らせた。
智美は震えを抑え込んでいたが、その瞳から流れる涙が頬を伝い静かに地面に滴り落ちていた。
「ちっ、馬鹿にしてやがるのか! いい度胸してるじゃねぇか!」
ガイエンは顔を真っ赤に染め、怒りに震える声で吠えた。
まるで抑えきれぬ炎が、その瞳で燃え盛っているかのようだ。
「いや、すまねぇ……あいつには、オレ達も頭抱えてるんだ。オレたちは、決して馬鹿になんかしてねぇよ」
航太は懸命に弁解しつつ、智美へと視線を移す。
その視線を感じたガイエンもまた、彼女の泣き腫らした顔に目を留めた。
「お前ら……何か、不思議な雰囲気を持ってるな。それに、何だか今日は懐かしさを感じる夜だ……喋りすぎたな」
ガイエンの表情がほんのわずかに緩み、硬い仮面の奥に隠された何かが見えた気がした。
「誰かに、自分の心の奥底を聞いて欲しかったんだよ! 話を聞いてもらうだけで、心が救われる時だってあるんだよ!」
絵美が軽やかな声で、しかしガイエンの傷にそっと触れるような優しさを込めて言った。
まるで風に舞う花びらのように、彼女の言葉は場に柔らかく響いた。
「そうだ。人間は、お前の言う通り弱いかもしれねぇ! けど……助け合ったり、思いやったりすることもできる。気持ちが繫る事で何倍もの力を引き出せるし、心に安らぎだって得られるんだ。確かに、人間を信じられなくなる体験をしたかもしれねぇが……少しずつでも、信じてみねぇか?」
航太の声は熱を帯び、ガイエンの心に届くことを願うように力強く響いた。
だが、その瞬間……
茂みが激しく揺れ、クレイモアのような巨大な大剣を握った男が雷鳴のような咆哮と共に飛び出してきた。
「貴様が……貴様がティアを! 人の心を踏みにじった罪を、今ここで償え!」
男の瞳は憎悪に燃え、大剣を振り上げる動作に合わせて空気が裂けるような音が響いた。
大剣の重さを背負った一撃が、ガイエンへと襲いかかる。
バシュッ!
決着は、あまりにも一瞬だった。
ヘルギが漆黒の中で赤き閃光を放ち、男の大剣をまるで紙のように両断した。
刃は止まらず、男の胸を深々と貫く。
鮮血が噴水のように吹き出し、木々や草を赤く染め上げ凄惨な絵画を描き上げる。
「いやぁぁぁぁぁ!」
智美が悲鳴を上げ、両手で顔を覆いその場に崩れ落ちる。
地面に膝をついた彼女の肩が、小刻みに震えていた。
「ガイエン、てめぇっ! やりすぎなんだよ!」
航太は怒りに我を忘れ、エアの剣を本能的に構えた。
「ふん……貴様ら、甘すぎるな。人が助け合えるのは、自分に危険が及ばねぇ時だけだ。圧倒的な力の前では、誰もが保身に走る……それが人間の本性だっ!」
ガイエンは冷たく言い放ち、ヘルギを握る手に力を込める。
ヘルギに付着した血液を一振りで払うと、航太へと疾風のように斬りかかった。
ガキィィィ!
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航太は剣の間に風を渦巻かせ、殺意に満ちた剣圧を必死に押し返した。
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