雫物語 Rewrite 〜神剣に導かれて神話の世界に行ったら『先祖の恩人の恩人』の姫を救う戦いに巻き込まれただけじゃないらしい〜

くろぷり

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2人のフィアナ騎士

黄金の聖騎士1

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「うぉおおおお!」

 航太の叫びが戦場に轟き、風を切り裂く勢いでエアの剣を振り抜いた。

 不慣れな手綱を握る手は震えていたが、その一撃に込められた意志は揺るがない。
 瞬間……空気が裂ける鋭い音とともに、真空の刃がヨトゥン軍の陣を襲った。

 テントが嵐に巻き込まれた木の葉のように宙を舞い、真空の刃に切り裂かれた兵士たちが血と絶叫を撒き散らす。

 ヨトゥン軍の陣形は一瞬にして崩れ、混乱の渦が戦場を飲み込んでいく。

「さすがは伝説のMyth Knight! 神剣に選ばれし者の力だ!」

 ゼーク軍の兵士たちの雄叫びが天を突き、士気は炎のように燃え上がった。
 戦場の熱はまるで生き物のように脈打ち、ゼーク軍全体を突き動かす。

 その声に背中を押された航太は、更にエアの剣を構える。

「もう一撃だ! 諦めて逃げちまえ、ヨトゥン野郎!」

 航太は、再びエアの剣を振り抜く。
 真空の刃が再びヨトゥン軍を切り裂き、整わぬ陣形を更に粉砕した。

 人間の軍が攻め寄せるなど夢にも思わなかったヨトゥン軍は、完全に後手に回っていた。

 しかし……それは、一瞬の幻想に過ぎない事を思い知らされる。

 フェルグスが率いるヨトゥン軍の反撃は、雷鳴のように迅い。

 削られた部隊を的確な指示で補充し、風の刃に対する防御壁を築き上げる。

 防御を整えると同時に混乱に揺れた部隊を瞬時に立て直し、魔導師たちを防御壁の前に押し出す。

 彼らは松明の炎を掲げ、火弾の魔法を解き放った。

 防御壁を山なりに超えた灼熱の火球が、まるで流星の群れのようにゼーク軍へ殺到する。その輝きは、戦場の闇を焼き尽くさんばかりだった。

「智美!」

 ゼークが叫び、戦場の喧騒を切り裂く。
 軍の中心に立つ智美が、草薙剣と天叢雲剣を一閃。
 刹那……彼女を中心に青い光が迸り、半球状の水の結界がゼーク軍を包み込んだ。

 その結界は、まるで神の加護のように軍の動きに合わせて揺らめく。

 火球が水の膜に触れるとジュウッという音とともに蒸発し、蒼天の空に消え去っていく。
 ヨトゥン軍の魔法は、智美の神剣によって無力化されたのだ。

 更に空が突如として咆哮を上げ、雲1つ無い青い空から豪雨が降り注ぐ。

 本来の力であれば、水滴1つで広大な大地をも作り出してしまう天沼矛。

 その力を借りれば、蒸発した大気中の水分から雨を発生させる事など容易かった。

 絵美が天沼矛の力を解放し、ヨトゥン軍の魔導師たちの松明を一瞬で消し去っていく。

 炎は雨に飲み込まれ、魔導師たちの呪文は水の奔流に沈黙した。

 わずか一週間の特訓で、航太、智美、絵美は神器の力を使える様になっていた。
 ゼーク軍の士気は頂点に達し、ヨトゥン軍の陣地へ雪崩のように突進していく。

 その刹那……高揚し士気が上がるゼークの部隊に、死の影が落ちる。

 ズバッ!

 ゼーク軍の兵士数人が、目に見えぬ刃に斬られ胴体が真っ二つに裂けた。
 鮮血が戦場に降り注ぎ、悲鳴が空気を引き裂く。

 何が起きたか、全く分からない……
 何も見えないのに、戦場に血の雨が降り注ぐ。

 航太の顔から、血の気が引いた。
 目の前で仲間が一瞬にして命を奪われる光景に、心臓が凍りつくような恐怖が全身を駆け巡る。

(何だ? 何が……起きてる? これは……ヤバすぎるだろ! 何も見えないのに、皆んなの身体が真っ二つに……)

 ゼークもまた、恐怖と怒りに身を震わせながら馬を駆けていた。
 その瞳には燃えるような決意と、抑えきれぬ悲しみが宿っていた。

「フェルグス!」

 その名を、叫んだ……

 瞬間……ゼークは馬を全力で走らせ、血と剣戟が交錯する戦場の中心へと突き進む。

「フェルグス! 私と勝負しろ!」

 ゼークの叫びは、まるで雷鳴のように戦場を揺さぶった。

 ゼークの姿を捉えた金色の騎士から、一筋の閃光がゼークを貫かんばかりに伸びてきた。

「くっ!」

 咄嗟に馬から飛び降り、ゼークは地面を転がるようにしてその閃光をかわす。
 ゼークの美しい銀髪が数本……閃光に切り裂かれ、陽光を浴びてキラキラと舞い落ちた。
 それはまるで、戦場の無常を象徴するかのようである。

「ゼーク……カラドボルグの一撃をかわすとは、見事だ。成長したようだな。だが、将が部隊を離れて戦うのは愚かな行為だぞ」

 白銀の鎧に黄金の装飾が輝く男が、馬に乗ってゼークの前に現れた。

 フェルグス・マクロイヒ……

 その高貴な姿は、戦場の血と泥の中でもなお神聖な光を放っているようだ。

「フェルグス! どうして? どうして、人と剣を交えるの? アデストリアの人達の命を救う為に反乱を起こした貴方が、なぜ人の命を奪うの?」

 ゼークの叫びは、魂の底からの慟哭だった。

 頭では、分かっている。
 今は、共に歩むことはできないと。
 だが……心はそれを拒み、叫ばずにはいられなかった。

 フェルグスは、無言で首を振る。
 その瞳には、深い悲哀が湛えられていた。

 フェルグスは静かにカラドボルグを構え、戦士の覚悟を漂わせる。

「分かってる……騎士として、守るべき者を守らねばならない事も……ロキに逆らえば、亡命したアデストリアの民も無事じゃすまない事も……でも……」

 ゼークは震える声で呟き、バスターソードを握りしめる。
 その手は一瞬震えたが、すぐに鋼のような決意で締まった。

「フェルグス! 私は貴方を、アルパスター将軍と戦わせはしない! ここで……この戦場で、貴方を食い止めてみせる!」

 その言葉は、まるで誓いの刃のように鋭く響いた。

 ゼークは迷いを振り切り、フェルグスへと突進する。
 剣と剣が交錯し、火花が戦場の空を切り裂いた。

 それは、運命の対決の幕開けだった……
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