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第2章 水と炎の激愛、揺れる光の惑い編
7.再会は険悪??
しおりを挟む「アヤ!!」
連れてこられた、マダムの経営する酒場。あらかじめ教えられてた、裏口から入ると、俺は突然待ち構えていた少女に抱きつかれた。綺麗な桜色の髪。
「ファラン」
呼びかけると、少女、ファランは抱きついてた体を少し離し、ニッコリ笑う。
うん、相変わらず可愛いです。
「良かった。心配してたの。セレスト様から聞いて、本気で身の安全を心配してた訳じゃないけど、やっぱり、アヤの顔を見ないと不安だったわ」
「ありがとう。それから、突然いなくなって、ごめん」
「ううん……」
チラリと俺の後ろを見るファラン。
俺は苦笑した。
うん、言いたいことは分かるよ。俺を拉致った原因だもんね。でも、口に出せないから困ってる。
「ファラン、エルザはいるか?」
ファランの複雑そうな顔も意に介せず、バルドは問うた。
「奥に居ます」
「話があるから行くと、伝え……「皇太子って、暇なんだな」
バルドの言葉を遮るよう、不遜な言葉が投げかけられた。
声の方を見ると、壁に凭れ、腕組みしたままキサがこちらを見ていた。
眉間に縦皺のバルド、再びだ。
「相変わらず、態度悪いな、キサ」
「誰に対してでもじゃない。あんただから、特にだ」
「仮にも皇太子に対する態度じゃねぇな。不敬に問うてもいいんだぞ?」
「やれるもんならやってみろ。その前に皇太子なら、皇太子らしくしたらどうだ?」
キサがチッと舌打ち、バルドはハッと吐き捨てる。
うわー、超、険悪…
何なの?この二人。
「ファラン。ファラン、ちょっと……」
お互いがお互いにムッス~としてる二人から離れ、俺は隅の方へファランを引っ張っていく。
「あの二人、もしかして仲悪い?」
「あぁ、うん、そうね。元々仲は悪いわ。殿下は水で、キサは炎だから、余計にね」
「魔導の属性って事?関係あるんだ?」
「男の場合はね。女は妥協できるけど、男はできないから。能力が強ければ余計に。強い他属性の男は認めたくないから。あの二人もまさにそうよ。ただ、今はそれだけじゃなくて………ね」
あれ、何で俺を見るの?
頭よしよしされてるし。
「アヤ!」
「ふへ?!あ、えと、何?」
バルドに呼ばれ、俺はマヌケながら返事を返す。
「ファランといろ。俺はエルザに話がある。勝手にフラフラ出歩くなよ?」
「な?!ガキかよ、俺は。フラフラなんかしてないし!」
「何で、あんたがアヤの行動を制限する?」
「意味があるから言ってんだよ。知らない奴は黙ってろ!」
「じゃ、それ説明しろよ。頭ごなしに命令すんな!」
その場の空気が凍りついたかと思うと、次には熱くなる。
二人の男の魔導がジリジリぶつかり合う。
だから、俺挟んで険悪になるのやめろ!
「何やってんの?あんたたち」
「ラーシャ…」
一触即発の雰囲気を破ったのは、深紅の舞姫。
「殿下はマダムに用なんでしょう?キサも、いちいちつっかからない。アヤはまだ、店の中見てないなら、ファランに案内してもらいなさい。あんたら、揃いも揃ってがん首つき合わせて、くだらない言い争いしてんじゃないわよ。酒場と食堂、まだ営業中!言い争ってる暇あったら、動け!働け!」
ひえ~~~~~!!
目元キリキリ吊り上げて怒る美少女。
「……行くぞ、セレスト」
「………………」
バルドとキサはお互いに一度睨み合い、だがそれ以上何も言う事なく離れていった。
それにしても、ラーシャすごい。あの二人に一言も言わせる事なく、バッサリだ。
「あの二人が仲悪いのは毎度ながら、今回はいつにも増してね。あんたが原因だろうけど、無駄に争わせないで、ハッキリさせなさい」
「は?俺?何で、俺が原因なわけ?」
「……………ファラン」
「そういう事みたいよ、ラーシャ」
二人して何でそんな生ぬるい目で見るの?
「まぁ、いいわ。ファラン、案内してやってね」
「はーい。じゃ、アヤ。案内するから行きましょ?」
こっちよと、ファランに促され、俺はバルドとキサの事が気になりつつ店の中へと案内されていった。
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