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しおりを挟む確かに、自分でもひどい変わりようだと思う。
中学の忌まわしい事件以来、短気になって手が出ることが多くなった。
地味で存在感は皆無だったけど、成績だけは常に上位をキープしていた中学時代が懐かしい。
つかれたな……。
自業自得だっていうのに、色々嫌になってしまう。夕陽を見たら帰らなきゃいけない気がして、鞄を取って教室を後にする。
けど、廊下にはひとりの生徒が横向きで倒れていた。
「うっわ! 何!?」
驚きながらも近付いて見ると、なんと理貴だった。行き倒れにも見えるし、殺人現場にも見える。どっちにしてもおかしなシチュエーションだ。
「理貴、大丈夫!?」」
慌てて肩を揺すると、彼は虚ろな瞳でこちらを向いた。
「あ、真陽……おはよう。一緒に帰ろうと思って来たんだけど、取り込み中みたいだったから寝ちゃったんだ」
彼は上体を起こして瞼を擦る。本当にここで寝ていたみたいだ。でも青樹が騒いだ様子はなかったから、もしかしたら気付いててスルーしたのかもしれない。理貴はどこでも眠る人間として全校に知れ渡っている。
わざわざ迎えに来てくれたのは嬉しいけど。……あれ、でも待てよ。
「理貴……織部先輩に何か言われなかった?」
「織部? 起きろって言われたよ。あとハゲろって言われた。ピアス引きちぎるぞ、とか」
「そうじゃなくて、俺のこと何か言ってなかった?」
今朝の心配事がのしかかっている。もし先輩が理貴に伝言していたら、彼は怒ってるかもしれない。
だけど、返ってきた回答は意外なもので。
「真陽のこと? 別に何も言ってなかったよ?」
理貴は不思議そうに首を傾げた。ということは、織部先輩は伝えないでくれたようだ。申し訳ないと同時に、すごく有り難い。
あれは誤魔化すための嘘に過ぎないけど、それでも吐き捨てたときは胸が痛かった。例え嘘でも、理貴に「近付くな」なんて言いたくない。彼を傷つけるような言葉は声にしたくなかった。
「真陽。どうかした?」
「ん……ごめん、何でもない」
床に膝をつき、彼と同じ目線になる。でもちょっと恥ずかしくなって目を逸らした。
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