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無意識のうちに呟いてしまった。慌てて口を押さえたけど遅い。隣に佇む理貴の顔色が変わっていた。
ただ今度は張り詰めたものではなく、……悲しそうな表情で。

「水……水が飲みたいな」

わざとらしいけど、最大限の笑顔をつくる。怖々反応を待つと、彼は落ち着いた様子で「ちょっと待ってろ」と部屋を出て行った。
とりあえず助かったと胸を撫で下ろすも、何を不安に感じていたのか。自分でもいまいち分からない。

でも自分が川で溺れたことは、理貴にとっても嫌な記憶だ。わざわざ思い出さなくていい。
静かにため息をつく。部屋の扉が開いて、理貴はペットボトルの水をくれた。
「ごめん、ありがとう」
笑って受け取る。けど彼は何も言わず、黙っていた。何か気まずくて、ペットボトルに口をつけたもののすぐに離す。

「どうした?」
「またやっちゃったって思って。俺が近くにいる時ほど何か起きて、お前が怪我するんだよな」

うっ……。
返答に困って目が泳いだ。
間違いなく“あのこと”を言ってるじゃんか。俺が理貴と川に遊びに行って溺れた、あの時のことを。

「そんなの、俺が一番同じ時間いるのがお前だからだろ! 全部俺の不注意が原因だ。むしろ理貴がいない方がキツいし、その……寂しいよ」

のたうち回りたいほど恥ずかしい台詞だ。顔から火が出そうだったけど、理貴は静かに頷いて目の前に屈んだ。前髪を掻き分けられ、額にキスをされる。
「今の台詞、毎日聴きたいかも」
「それは無理。お前がまたバカなこと言った時だけ……何度でも言うよ」
理貴はカーテンで周りを仕切ると俺の上に被さってきた。ボタンは外さずに、シャツの下をまさぐってくる。手は冷たかったけど、それが逆にぞくぞくした。
誰か来たらまずいのに、もっとこの手に翻弄されたい。好き勝手して、めちゃくちゃにして欲しいと思っている。
「あっ!」
上に伸びていた手がおりてズボンの中に潜り込む。そのまま少し膨らんだ中心部分を下着の上から撫でられた。
「かーわい」
形に沿って指でなぞられる。撫でるような擦るような力加減。けど最終的には揉まれて、直接的な刺激として全身に響いた。
理貴の手が小刻みに動くたび内腿が震える。握られたそこも硬さを持っていた。
「理貴、だめ、だ……それ以上はっ」

やばい。────イク。
彼を止めようと肩に手をかける。しかし間に合わず、シャツの上から爪を立てるだけの結果になった。
「あっ、あぁっ!」





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