双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

utsuro

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海神の不安 4 

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 「ショクを連れ去った腕は、恐らくボクに近い妖力の持ち主だ。しかも、魂の扱いにかなりけている。・・・・どちらか一方の条件が欠けていては、あの一瞬でショクの本体だけ魂と共に切り離すなんてことは、できないだろう。・・・外見は特に大きな特徴は見られない、普通の男の手だったよ。」

 僕の言葉を黙って聞いていたへきだったが、わずかに表情を硬くして口を開いた。

 「・・・・腕については、残念ですが私の元には情報がありません。・・・ですが、ショクについては、有力なものがあります。」

 「・・・どんな?」

 ボクは熱を帯びた海神の耳たぶを名残惜しく離すと、碧と向き合った。
 海神がかすかに身じろぎ、目を伏せる。

 かなり辛そうなその様子が、あまりにも可哀想で・・・ボクは、卓の下で衣を強くつかんでいる海神の手に、自分の手を重ねて握りしめながら、碧の言葉に耳をかたむけた。 

 「黄色の妖鬼が、人の世で不穏な動きをしている、と報告がありました。・・・・すでに黄色が喰われていたのであれば、つまりそれは・・・」

 「間違いなくショクの奴の仕業ってことか。・・・・人の世、ね。どうやらボク達が次に行くべき場所は決まったみたいだ。」

 ボクが頭の中で計画を練り始めようとした時・・・・・。
 ついに限界を超えてしまった海神が、ボクに縋りつくようにして抱きついてきた。

 ほとんど意識を飛ばしてしまっていて、自分が何をしているのか、よく分かっていないようだ。

 ボクの胸にぐったりと顔をうずめた海神は、焦点の定まらない艶めかしい瞳でボクを見上げると、いきなり乱暴にボクの衣をはだけようとした。

 ボクはその腕を静かに止めて宥めてから、海神をきつく胸に抱いた。

 海神はボクのことを勘違いしている・・・・。
 だから、こんなに強い刺激を不意打ちのように与えられ続けて、酷い思いをしてしまったんだ。

 ボクはすぐに海神の術を解いた。

 「ごめん、碧。海神が大分疲れてしまったみたいなんだ。・・・・・今日はもう、寝かせてやりたい。話はまた改めて聞かせてもらっても?」

 「いつでもいらしてください。お待ちしております。」

 碧はそう言うと、先ほど出してくれた酒の瓶を一本、土産に持たせてくれた。

 「ありがとう・・・・。帰ったらゆっくり楽しませてもらうよ。」

 ボクは碧に礼を言って卓の上に小さな金の板を一枚置き、幼子の頭をくしゃくしゃになるまで撫でた。

 何か言いた気な表情をした碧に向かい、ボクが小さくうなずくと、碧は感謝の言葉を口にして、頭を下げそれを受けとった。

 またすぐに来ると伝え、ボクは海神を片腕に抱いて酒を肩に下げ、碧の店を後にした。

 入口から出入りしないと三毛が怒るのはわかっていたが、ボクはもう限界だった・・・・・。

 直接寝室へ移動し、卓に酒を置いて、寝台へ海神を抱き上げようとした時。

 突然海神が、ボクを寝台へ押し倒し組み敷いてきた。

 寸でのところで爆発しそうな欲情を抑え込んでいるのか、無言のまま目をギラつかせている海神は、いつもと少し様子が違っていた。

 「海神・・・・。君、もしかして・・・」

 ボクは言いかけた言葉を飲み込んだ。
 海神はボクを抑え込んだまま、身動きできずただひたすら何かに耐えているようだった。 

 ボクは小さく息を吐き出しながら微笑んだ。

 「海神・・・・。手が痛いよ。君はボクを、どうしたいの?」

 ボクの言葉に、海神は慌ててボクの腕を解き、身体を起こそうとした。
 自由になった腕を海神のうなじへかけたボクは、そのまま彼を強く引き寄せ口づけた。
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