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SS、ママの手紙

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“私達の可愛いラーニャへ”

 この日記を、あなたが見ているということは……
 ついに、私もお父さんもラーニャのもとへは戻れなかったのね。
 本当にごめんね。
 成人するまでだけでも、一緒に居たかったわ。

 毎日、ご飯は食べてる?
 ラーニャは何歳になったの?
 きっとママの想像しているよりも、ずーっと大きくなっているわよね。
 わんぱくは良いけどほどほどにするのよ?
 まだ小さなあなたを、今の辛く厳しい世界に、一人置いていってごめんね。

 私がこれを書いてる頃のラーニャは、まだちっちゃいけど、とてもわんぱくさん。
 毎日パパの肩に乗っては「冒険だー!」って外に出掛けてるわ。楽しい毎日だわ。

 あなたは覚えてるかしら?

「これは山で見つけた綺麗な石なんだ」とか、「洞窟で拾った宝物なの」って色んなものを見つけてきたこと。
 いつもキラキラした目で、とっても楽しい『ラーニャの冒険譚』を聞かせてくれたこと。
 ママは今日はどんな冒険なのかなぁって、毎日毎日、楽しみにしてるの。

 あの宝物はどうしちゃったかな?
 この日記を読んでるラーニャは、もう立派なレディだもの、流石にもう捨てちゃったのかな?
 ママはラーニャに誕生日プレゼントでもらった綺麗な石は今でも宝物よ。
 いつも大事に持ってるわ。
 もういつもの、楽しい冒険譚を聞くことは出来ないのね……。

 いけないわ、最後だもの明るい話をしなきゃ。
 んーと、そうだわっ!
 ラーニャはもう綺麗な石よりも、オシャレな可愛いお洋服や、お洒落なアクセサリーのほうが大事になってる頃よね?
 お母さんもラーニャと一緒に、色々なお洒落をしたかったわ、きっと楽しかったのになぁ。
 あーあ、残念だわ。
 でも二人でお洒落なんてしたら、集落でも人気になっちゃってパパが嫉妬しちゃうわね、ウフフッ、それも見てみたいわ。

 本当は思い出をもーっと書きたいし、叶うならあなたの成長を、ずっーとパパと二人で見ていたい。
 でも残念ね、そうはならなそうな状況になちゃったみたい。
 だから私達が帰ってこられなかった時の為に、ラーニャには手紙を残しておこうってパパと決めたの。
 だから、日記をラーニャに残しておくわ。

 あとね、大人になったら言おうと思ってた、大事なことをここに残すわ。
 まずは、お母さんもお父さんも、ラーニャが生まれる前に大陸へ冒険に出てたことがあるのよ?
 冒険好きな所はやっぱり親子ね。

 だから私達の可愛いラーニャには、特別に教えてあげる。

 ルベルンダの外にはラーニャの知らない楽しいことが、たっくさーんあるわ。
 美味しい物も、キレイな景色も、とーっても良い出会いがたくさんあるの。
 彩り豊かな自然に、始めて食べる食べ物。
 もちろん大変なことも色々とあったけど、見るもの全てが新鮮で、それも含めてすーっごい、楽しかった。
 私達の大切な思い出の一つよ、ラーニャもきっと気に入ると思うわ。

 きっと私達が居なくなってからのラーニャには、悲しいことや辛いこと、世の中の理不尽がたくさん襲ってくると思う。
 ううん、確実にそういうことが増える、守ってあげられなくてごめんね。

 辛いものしか残してあげられなくて、ごめんね。
 最後までそばにいてあげられなくて、ごめんね。
 本当に、本当にごめんなさい。

 生き抜くために必要な事、世界の仕組み、気をつけないといけない事。
 私達の伝えられる一通りの事は教えているけど、まだ小さなラーニャには難しくて分かんないわよね。
 思い出したら役に立ててちょうだい。

 最後の最後よ、ワガママなお願いなのは分かっているけど、それでも私達から一つだけラーニャにお願いがあるわ。

『この世界を嫌いにならないで欲しい』

 世界を嫌いになると、生きているのが辛くなる、自分のことも嫌いになる、誰も信じられなくなる。
 それはきっと、ものすごーく大変な道よ。

 私達はそんなラーニャを見たくないわ。

 だってラーニャは笑っている時が一番魅力的だっていう事を、パパもママも知っているもの。
 だからラーニャには、お母さん達の代わりにいろんなものを見て、いろんなことを知って、たくさんの出会いと別れを繰り返して、小さくても良いから、幸せをたっくさん見つけて欲しいの。

『寿命が尽きるまで、明るく笑って生きていてほしい』

 それが、お父さんとお母さんの最後のお願い。

 っあ! ごめんね、もう一つだけ、これはお願いじゃあないわ。
 体には気をつけてね!
 ラーニャは女の子なのに、いっつも傷だらけで帰ってくるから、お母さんは少しだけ心配だわ。
 まぁ強いパパと、なんて言ったって私の子なんだし大丈夫、だからこれはお願いじゃなくて最後の注意よ。

 ほどほどにしなさい!!

 長くなっちゃったけど、お父さんもお母さんも心の底からラーナを愛してるわ。

 この大いなる大地と共に、貴女の生と希望ある未来の支えとならんことを

                          ダリア・ヴォルコヴァ
                          ボリス・ヴォルコフ
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