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第2章 ちとせの政信奪還作戦

第10話 元カノと部活は不調街道まっしぐら その4

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 合図とともに飛び出たその演奏に、俺は心のなかで舌を巻いていた。
 なにせ、わずか1日でこちらの予想を遥かに上回るレベルまで到達していたのだ。
 「MEGALOVANIA」はかなり難易度が高めで(そもそも今回の曲は基本全て難易度高め)、なによりもスピードが早い。
 流石に1週間はかかるだろうというレベルまで1日で到達した彼女たちの努力に舌を巻かざるを得ない。
 もちろん、まだまだ直すところはあるが、いずれにせよ、かなりクオリティが高いのは事実。

 演奏が終わり、あえてブチ切れ寸前の空気を出す。
 その雰囲気に全員が固まったところで。

「君たちさ」
「はい」

 あたかも厳しいこといいますよという雰囲気を一瞬でかき消し笑いながら、

「お前ら上達スピード早すぎだろ。練習日程狂うじゃんか。全く、出来るなら最初からやんなさいよ。……というわけで、今日はもう次行きます」

 そのセリフに顔を見合わせ、みるみるうちに笑顔になる彼女たち。

「あーあ、こんなことなら『いーあるふぁんくらぶ』にするべきだったか」

 次の瞬間、全員が顔を横にブンブンと振った。
 当たり前である、聞いただけでは簡単そうだが、結構難しめなのだから。

「まあいいや。えっと、Gripとナイト・オブ・ナイツは練習曲で最近吹いてもらってるから、今日から毎日最後の1時間で見ます。なのでコナンのテーマ行きましょう。今回はこれでちょっとふざけます。楽譜通り、摩天楼系統のイントロを吹いて一旦止めて、そのあと標的系統のイントロを吹いてまた止めます。そのうえで天国へのカウントダウンVerを吹きます。いいですか?」
「はいっ!」

 毎回恒例の定期演奏会は何かしらふざける宣言に嬉しそうな部員たち。
 なにせ、彼女たちは口ではふざけるなとか言うけれど、実際のところはふざけたくてたまらないのだ。
 
「じゃあ始めますよ。準備して」



 そこからみっちり練習すること実に5時間。
 時計を見ればすでに時刻は18時を回っており、解散の宣言を出す。
 なにせ前日より1時間以上もやっていたのだ、部員たちも疲労の色が見えているものがいる。
 自分もだいぶ疲労困憊といった感じであるため、だいぶ体がやばい。
 さっさと解散の指示を出すと、足を微妙にふらつかせながら帰途につく。
 途中何度もちとせに大丈夫かと問われたが、寝れば回復すると答えなんとか家まで帰ってきた。

 結局、今日はそのままお風呂を出た後夕飯を食べ、すぐに寝たのだった。
 幸い、明日は顧問の都合でダンス部の開始時刻を1時間半繰り下げている。
 明日の朝はゆっくりしようと決意し、翌朝まさかいつもの時間に起きざるを得なくなるなんてことは全く知らないまま寝る俺だった。

<ちとせSide>

 ベッドに入るなりすぐに寝てしまった政信の寝顔を見つつ考える。
 絶対に政信が無理してるのは嫌でもわかる。
 今までだとベッドに入るなり寝落ちするなんて考えられなかったし、なにせ今日の帰宅時のこともある。
 結局ずっとフラフラしながら帰ってきたのだ。
 顔色も微妙に悪く、このままじゃ倒れてしまうのではないかという不安にかられる。
 
「杞憂に終わってくれればいいんだけどな……」

 このひとりの恋する独占欲強めなヤンデレ少女もまた、明日政信の身に降りかかることを知ることは出来なかった。




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 『いーあるふぁんくらぶ』の吹奏楽版はYou Tubeで見つけました。
リンク:https://www.youtube.com/watch?v=BhtGlFJ7UHg
 サビが私のお気に入りです。
 ちなみに本家もいいですが個人的にはプロセカ版(リンク:https://www.youtube.com/watch?v=v_VDb-gxF5Y)のほうが好きです。
 本家はこちらからどうぞ→https://www.youtube.com/watch?v=oBgADhsOoog

<今日のキャラ紹介>
三原 和久 (みはら かずひさ、JR山陽新幹線)

 吹奏楽部副部長。数少ない男子部員のひとりで、政信の相談相手。部長の涼乃は和久の彼女。
最近の日課は朝の長電話(相手は涼乃)からの手を繋いでの登下校。担当はチューバ。なかなかの達人で、涼乃と揃って同じ音大(日本だけど)からスカウトが来るほど。よほどのことがない限り同棲する予定。将来の夢は?「涼乃と一生を添い遂げること」 ……涼乃さん、なんか一言無いんですか? 「全く同じ夢だけど?大丈夫、和久と一緒に暮らしたいから海外からの誘いはお断りさせていただいたわ」 ……だめだこりゃ。

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