上 下
2 / 10

1話

しおりを挟む
「んん…」
「レミリア気付いたか?」

少しずつ開けた視界で最初に見えたのは、婚約者の心配そうな顔だった。

「殿下…?私…」
「レミリアが倒れ込むのが見えたから、俺が運んだんだ。大丈夫か?」

やっぱりあれはエリアス様だったのね。

「すみません、ご迷惑をかけて…私は大丈夫です。」

そう言って体を起こして初めて気付いた。
エリアス様以外にも人がいるという事に。

「…あら?」

そこには、私以外に5人がいた。
全員この学園の生徒だ。

私の婚約者であり、この国の第1王子であるエリアス様。
現宰相様が当主であるランドール侯爵家のご令息カイン様。
将来エリアス様の近衛騎士になる事が確実視されているルトヴァス伯爵家のご令息アレクシス様。
そして後の2人は先程見たご令嬢。

どうしてこのお2人までここに…?

その時、意識を失う前に見た映像が蘇る。

「うぁ…」
「レミリア大丈夫か?!」
「頭が…」

あまりの頭の痛さに蹲る。
さっきから流れ込んでくるこの映像は一体何…?


『ねえ優美、あれ何処まで進んでる?』
『えっとね、第1王子をやっと攻略した所。』
『まだそれだけなの?陽菜は?』
『私は最後の1人を攻略中。そういう葵は?』
『もちろん私はもう全員攻略終わったよ!』

仲良さげな女の子3人の会話が耳に聞こえてくる。
攻略…って何かしら。
それに第1王子って…

『お前らまたゲームの話してんのか?』
『本当飽きないな。』
『乙女ゲームってそんな面白いのか?』
『大地、海斗、春樹。おはよう。』
『おはよ、優美。』

優美、葵、陽菜…
大地、海斗、春樹…

知らないはずなのに、聞き覚えのある名前。

『なあ優美。』

呼びかけた男の子を見て、自然と私の口が動いた。

「だい…ち…」
「…レミリア?今…」
「もしかしたら思い出したんじゃない?」
「レミリア、俺達が誰だか分かるか?」

もう1度5人の顔を1人ずつ見ると、不思議な事にさっきまで見ていた映像の顔と重なって見える。

「…葵?」
「!」
「海斗…?」
「…ああ。」
「陽菜…?」
「うん…っ!」
「春樹…?」
「おう。」

そして、私の婚約者として1番近くにいる人を見る。

「大地?」
「やっと思い出したか。相変わらずのんびり屋だな、優美は。」

そう言って、優しく頭を撫でられる。

「思い出してくれないのかと思ってた…」
「本当よ。のんびり屋にも程があるわ。」
「…ごめん。」

私が申し訳なくて謝ると、陽菜と葵に抱きしめられる。

「良かった…優美がちゃんと私達のこと覚えててくれて。」
「ずっと待ってたんだからね…!」
「ありがとう…」

3人で抱き合いながら泣いてるのを、大地達が呆れながらも優しく見守ってくれていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

コンプレックス×コンプレックス!!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:96

溺愛モードな警察官彼氏はチョコレートより甘い!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:177

冬に、とろける。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:26

転生令嬢、目指すはスローライフ〜イベント企画担当者ではないのよ!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:25,234pt お気に入り:2,386

【R18】悪役令嬢三人娘奮闘記

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:546

魔女の酒屋さん

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:87

【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:230

処理中です...