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4話
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状況が大きく変わったのは、それから1ヶ月後の事だった。
エリアスが、あんなに邪険に扱っていたヒロインと目立たない所で密会するようになった。
それも、ゲームの進行通りに。
ゲーム内でも、一応婚約者に気を使っていたのか密会が多かったんだよね…
それでもレミリアには見つかっていたけど。
今も私の視線の先には、エリアスとヒロインのリリーがいる。
2人の表情は見えないし会話も聞こえない。
でもゲーム通りに進んでいるのなら、エリアスはリリーに好意を寄せているんだと思う。
その証拠とでも言うように、最近はリリーから向けられる視線が以前のような鋭い物では無く、勝ち誇ったような目で見られることが多い。
「これがゲームの強制力なのかな…」
あのまま何も無ければいいと思ってたけど、そんなに甘くはなかったみたい。
このままこの2人が順調にいけば、私は断罪されて処刑?
リリーとは、嫌がらせどころか話もした事がないのに?
ゲームの強制力が働くのなら、やってない罪で断罪されたりするのかな…
失恋した上に無実の罪で処刑って、一体私が何をしたっていうんだろう。
そんなに酷い扱いを受けなくちゃいけない様なことをしたのかな。
そう考えると、悪役令嬢に転生してしまった自分の運命が、恨めしくて仕方がなかった。
お昼になり、エリアス以外のメンバーで中庭で昼食を摂っていると、リズが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「レミリア、大丈夫?顔色が悪いわ。」
「…うん、大丈夫。寝不足かな?ちょっと昨日夜更かしし過ぎちゃったみたい。」
皆には心配かけたくなくてそう言ったけど…本当はここしばらく、エリアスとリリーの姿がチラついてあまり眠れていない。
私のクマが酷いのを見た侍女が、よく眠れるようにと香を炊いたりマッサージをしてくれたり…色々してくれているけど、それでも駄目だった。
「レミリア…」
皆が心配そうに顔を見合わせている。
「…私、ちょっと散歩してくるね。」
1人立ち上がった私に一緒に行くとリズ達は言ってくれたけど、それを断って裏庭のベンチにやってきた。
エリアスが昼食を共にしなくなってから、私はなるべく4人から離れるようにしている。
あの4人は婚約者同士だし、邪魔するのは悪い。
それに、私の隣にだけ相手が…エリアスがいない現実をずっと見せつけられているようで、正直辛かった。
それならいっそ1人でいた方が気が楽だと、ここでボーッとするのが最近私の定番になっている。
「エリアス様、どうしたんですか?こんな所に呼び出して。」
この声…リリー?
少し高めの甘えるような声には聞き覚えがある。
裏庭に繋がっている非常階段の方から聞こえた気がして近づくと、階段の影に隠れるようにエリアスとリリーの姿が見えた。
何故かその奥には、さっきまで一緒に居たはずのアレクシスもいる。
「少し大事な話があるんだ。耳を貸してくれるか?」
「はい。」
エリアスがリリーの耳元で何か囁くと、リリーの目が驚きで見開かれた。
一方のエリアスは満面の笑み。
2人の本当に親密そうなそのやり取りをこれ以上見ていられなくて、私はそっとその場を離れた。
最後の講義が終わり帰り支度をしていると、リズとレイラが近付いてきた。
「レミリア様、もうお帰りになりますか?宜しければこの後お茶でも…」
「あ…折角のお誘いですけど、少し疲れているみたいなので、今日はご遠慮しますわ。」
「そうですか…」
「では、また明日。」
「ええ、お気を付けて。」
2人には悪いけど、今日はお茶をするような気分にはなれない。
…あの2人、あの後どうしたのかな。
何の話をしてたんだろう。
エリアスが笑顔だった所を見ると、きっと2人にとって良い話だったんだろうな。
私がボンヤリと廊下を歩いていると、目の前からエリアスが歩いてきているのが目に入った。
真正面からエリアスの顔を見るのはいつぶりだろう。
嬉しいはずなのに、彼はもうリリーの事しか見えていない…そう思うと悲しくて視線を逸らしてしまう。
「…」
少しだけ視線を戻してみると、エリアスが何も言わずそのまま真っ直ぐ歩いてくるのが見えて、私も何食わぬ顔で彼の横を通り過ぎてしまおうと歩き始める。
まだ婚約者だというのに、何も言ってもらえないことにショックを受けていると、丁度横を通り過ぎる瞬間エリアスが私の手に何かを握らせてきた。
「え…?」
思わずエリアスを振り返ったけど、彼は振り返ることなく教室に入っていく。
手に握らされたものを見ると、それは丸められた1枚の紙切れだった。
リリーと密会するようになってから、エリアスが私に接触してきたのは初めてだと思う。
何だろう…?
恐る恐る開けて見ると、そこにはこの世界の文字ではなく前世の文字でたった一言だけ。
"俺を信じて欲しい"
信じてって、どういう意味だろう。
リリーに心を奪われているわけじゃないとでも言うんだろうか。
昼間だってあんなに親密そうにしていたのに…?
エリアスの行動に謎を抱えたまま、私は帰路についた。
エリアスが、あんなに邪険に扱っていたヒロインと目立たない所で密会するようになった。
それも、ゲームの進行通りに。
ゲーム内でも、一応婚約者に気を使っていたのか密会が多かったんだよね…
それでもレミリアには見つかっていたけど。
今も私の視線の先には、エリアスとヒロインのリリーがいる。
2人の表情は見えないし会話も聞こえない。
でもゲーム通りに進んでいるのなら、エリアスはリリーに好意を寄せているんだと思う。
その証拠とでも言うように、最近はリリーから向けられる視線が以前のような鋭い物では無く、勝ち誇ったような目で見られることが多い。
「これがゲームの強制力なのかな…」
あのまま何も無ければいいと思ってたけど、そんなに甘くはなかったみたい。
このままこの2人が順調にいけば、私は断罪されて処刑?
リリーとは、嫌がらせどころか話もした事がないのに?
ゲームの強制力が働くのなら、やってない罪で断罪されたりするのかな…
失恋した上に無実の罪で処刑って、一体私が何をしたっていうんだろう。
そんなに酷い扱いを受けなくちゃいけない様なことをしたのかな。
そう考えると、悪役令嬢に転生してしまった自分の運命が、恨めしくて仕方がなかった。
お昼になり、エリアス以外のメンバーで中庭で昼食を摂っていると、リズが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「レミリア、大丈夫?顔色が悪いわ。」
「…うん、大丈夫。寝不足かな?ちょっと昨日夜更かしし過ぎちゃったみたい。」
皆には心配かけたくなくてそう言ったけど…本当はここしばらく、エリアスとリリーの姿がチラついてあまり眠れていない。
私のクマが酷いのを見た侍女が、よく眠れるようにと香を炊いたりマッサージをしてくれたり…色々してくれているけど、それでも駄目だった。
「レミリア…」
皆が心配そうに顔を見合わせている。
「…私、ちょっと散歩してくるね。」
1人立ち上がった私に一緒に行くとリズ達は言ってくれたけど、それを断って裏庭のベンチにやってきた。
エリアスが昼食を共にしなくなってから、私はなるべく4人から離れるようにしている。
あの4人は婚約者同士だし、邪魔するのは悪い。
それに、私の隣にだけ相手が…エリアスがいない現実をずっと見せつけられているようで、正直辛かった。
それならいっそ1人でいた方が気が楽だと、ここでボーッとするのが最近私の定番になっている。
「エリアス様、どうしたんですか?こんな所に呼び出して。」
この声…リリー?
少し高めの甘えるような声には聞き覚えがある。
裏庭に繋がっている非常階段の方から聞こえた気がして近づくと、階段の影に隠れるようにエリアスとリリーの姿が見えた。
何故かその奥には、さっきまで一緒に居たはずのアレクシスもいる。
「少し大事な話があるんだ。耳を貸してくれるか?」
「はい。」
エリアスがリリーの耳元で何か囁くと、リリーの目が驚きで見開かれた。
一方のエリアスは満面の笑み。
2人の本当に親密そうなそのやり取りをこれ以上見ていられなくて、私はそっとその場を離れた。
最後の講義が終わり帰り支度をしていると、リズとレイラが近付いてきた。
「レミリア様、もうお帰りになりますか?宜しければこの後お茶でも…」
「あ…折角のお誘いですけど、少し疲れているみたいなので、今日はご遠慮しますわ。」
「そうですか…」
「では、また明日。」
「ええ、お気を付けて。」
2人には悪いけど、今日はお茶をするような気分にはなれない。
…あの2人、あの後どうしたのかな。
何の話をしてたんだろう。
エリアスが笑顔だった所を見ると、きっと2人にとって良い話だったんだろうな。
私がボンヤリと廊下を歩いていると、目の前からエリアスが歩いてきているのが目に入った。
真正面からエリアスの顔を見るのはいつぶりだろう。
嬉しいはずなのに、彼はもうリリーの事しか見えていない…そう思うと悲しくて視線を逸らしてしまう。
「…」
少しだけ視線を戻してみると、エリアスが何も言わずそのまま真っ直ぐ歩いてくるのが見えて、私も何食わぬ顔で彼の横を通り過ぎてしまおうと歩き始める。
まだ婚約者だというのに、何も言ってもらえないことにショックを受けていると、丁度横を通り過ぎる瞬間エリアスが私の手に何かを握らせてきた。
「え…?」
思わずエリアスを振り返ったけど、彼は振り返ることなく教室に入っていく。
手に握らされたものを見ると、それは丸められた1枚の紙切れだった。
リリーと密会するようになってから、エリアスが私に接触してきたのは初めてだと思う。
何だろう…?
恐る恐る開けて見ると、そこにはこの世界の文字ではなく前世の文字でたった一言だけ。
"俺を信じて欲しい"
信じてって、どういう意味だろう。
リリーに心を奪われているわけじゃないとでも言うんだろうか。
昼間だってあんなに親密そうにしていたのに…?
エリアスの行動に謎を抱えたまま、私は帰路についた。
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