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翌朝の稽古は腕輪を装備したままやってみた。どうやらこっちの方が強くなれるみたいなので、暫くはこれで行こうと思う。
竜王の爺さんが、歯ごたえが無くて詰まらんのぉと言って居たが、爺さんの修行じゃ無いんだからね。
その後、3時までは暇なのでお茶を飲んだり、子供たちの相手をしたりとのんびりと過ごす。
昼を回った辺りでセリーが報告に来た。
「リドリル男爵家ですがやはり無派閥の貴族ですね。クラ―ネルは第2夫人の子供で、長男が家を継いだ後は、男爵家を出る事になる様です。その為に魔法学院へ行ったと言うのが実情の様ですが、思った以上の才能があったため、男爵家では家督争いになりかねないと言う事で、クラ―ネルは事実上居ない子供と言う扱いになって居る様です。」
「ほう?複雑な事情があるんだな。リドリル男爵家の懐事情は?」
「リドリル男爵家は男爵が幾つかの商会を運営して、生計を立てています。男爵としては羽振りの良い方だと言われて居ます。」
そう言えば、男爵家は殆どが貧乏貴族だと誰かが前に言っていた気がするな。
リドリル男爵には商才がある。その男爵をもってしても息子の価値に気が付かないのか、それとも知っていてあえて平民に落としたいのかな?
「セリー、国王派でも公爵派でも構わないが、跡取りが居ない貴族が居たらリストアップして置いてくれ。出来れば子爵以上が望ましい。」
「それは構いませんが、あなたの手持ちの男爵のカードを切ると言う手もありますよ?そうすれば、ゼルマキア侯爵派として取り込めます。」
「うーん。それは最終手段として取って置きたいな。」
「解りました。では、子爵以上で候補を探してみます。」
「悪いな。こう言うのはセリーが一番上手いからな。」
さて、3時まではまだ時間があるな。メイドにお茶を頼み、ソファーに寝転がる。眠い訳では無い。考え事をする時の癖だ。
クラ―ネルは、才能がありそうなら弟子にしても面白いかなと考えている。まあ、実際に会って人柄を確認する必要はあるが、噂を聞く限りでは自分の力を上手くコントロール出来ていない感じだ。
王都の魔法学院は帝都のそれよりはマシだが、枠を飛び出る程優秀な生徒を導く程の器は無い。僕ならそれが可能だ。別に使命感がある訳では無いが、優秀な魔法使いにはある種のシンパシーがある。
まあ、僕の弟子にならなくとも古代の魔法書のコピー位は上げても良いだろう。もちろん時越えの魔法は削除するけどね。
才能によっては応用編の方もコピーしてやるぞ。
あれ?そう言えば、ブラスマイヤーはこの件を、厄介と言って居たが、あれは何の意味があるのだろう?
神になった僕は、これからどう行動するのが正しいのか、一度ブラスマイヤーに聞く必要があるな。
それから、知識が欲しいな。やはり古代の本を集める必要があるのだろうか?神界に行くと言う選択肢は現在の所無い。おそらく行ったら戻れないであろう。
神界に行って戻れる方法が見つかるまで、神界に近づく気は無い。
ローレシアはブラスマイヤーが抑えてくれることを期待している。
おそらくだが、僕は地上に居る事で何か出来る事があるはずだ。それが何かを見極めるまでは神界に行く訳には行かない。
一つ気になる事がある。何時から僕は神だったのだろう?これはキッチリと聞いて置く必要がある。何故ならば、子供の事があるからだ。神の子は一体何になるのだろう?
考え事が一段落着くと紅茶が冷めて居たのでお替りを貰う。
この世界に来る前はコーヒー党だったのだが、何故かこっちに来てから紅茶派になってしまった。これもこの体のせいかな?
と、ちょっと時間は早いが、ぶらつきながら出かけてみるかな。
30分程歩いて、商業エリアにやって来る。目的の魔道具屋は近いが、時間がまだちょっと早かったかな?まあいいか。
魔道具屋に入るとお婆さんが珍しくカウンターに座っていた。
「約束の時間にはまだ早く無いかい?」
「流石にまだ来てないか?」
「そろそろ来る頃じゃと思うが、お主もせっかちじゃのぉ。そんなんじゃ出世せんぞ。」
いや、侯爵なんだけどね。
「時間があるなら、何か面白い物でも見せてよ。何時も売ってばかりで買った事無いよね?」
「そうじゃな、お主に売れそうな物は、これかな。」
そう言って後ろの方から何やら箱を持って来た。
古そうな箱だ。お婆さんは結構雑に扱って居るけど、この店にそんなに安い物は売って無いはずだ。
「これは?」
「お主は古代語が読めるんじゃろう?だったら空けてみな。」
箱を開けると、1冊の本が入っていた。古代の文字で『魔法の新解釈』と書かれている。
ん?新解釈って何だ?むちゃ気になるじゃん。手に取ろうとしたらお婆さんがぽつりと言った。
「白金貨200枚。」
なるほど、立ち読み禁止の本屋みたいだな。まあ、お婆さんは僕が古代語を読めるのを知っているからなぁ。ストレージのコピー機能は知らないだろうが、流石にガードが固いな。
僕はストレージから麻袋に白金貨200枚を入れて取り出す。
お金を確認すると、お婆さんは箱ごと本を渡してくれた。
「お主なら、買うと思ったよ。」
「ちなみに、お婆さんは読めるの?」
「いや、私には全部は読めないさ。だが、その本が価値がある事は解る。」
「読めないのに何で?」
「魔法って言う単語は読めるからね。読める人間にはお宝だろう?」
なるほど、本を沢山扱っているうちに、魔法って単語だけ覚えたのか。つまり、この店の客には、この本を読める人間がいるって事だ。
流石は、この魔道具店の店主って所かな。
「ちなみに、僕ならこの本に、白金貨1000枚の値段が付いていても買いますよ。」
「ほう?私の目利きが間違っていたって事かい?」
「そうじゃありませんが、この本は別格です。」
「まあ、良い。お主には稼がせて貰っておるからの、祝儀だと思って置くよ。」
意外に気前が良いな。そんなに儲けたのか?
「そろそろ、時間だと思うんですが、待ち人が来ませんね。」
「あ奴は学院生じゃ、学院が終わってから、ここに来るとすれば3時少し過ぎになる。お主が時間通りに来れば、丁度良いタイミングだったんじゃがな。」
なるほど、学院が終わる時間が3時だったのか、それでこの時間を指定した訳だ。って事は、どっちみち僕は少し待つ事になる。
「僕に何か事前に言いたい事があったんですか?」
「相変わらず抜け目が無いのぉ。あ奴は、ちょっと変わった魔法使いじゃ。扱いに気を付けて欲しい。」
「変わった魔法使いですか?」
「ああ、あ奴はな、初級魔法の威力が普通の魔法使いに比べて弱い。じゃがな、中級魔法以上の威力がとんでもない。」
ん?初級が弱い?何か魔法の使い方を間違って居るんじゃないか?
「ちなみに、その言い方だと上級魔法が使えるんですか?」
「ああ、内密にしておくれよ。」
これは、実際に会って魔法を使って貰わないと判らないが、面白そうだぞ。
と、そこに店の扉が開く音がして、金髪碧眼の可愛らしい女の子が現れた。
ん?なんで、この店に、こんな子が?
「待ち人が来たようじゃな。」
「え?」
「彼が、クラ―ネル・フォン・リドリルじゃよ。」
え?彼?彼女じゃ無くて?
「初めまして。クラ―ネル・フォン・リドリルです。」
いやいや、声も女の子だぞ。
「エイジ・フォン・ゼルマキアだ。よろしく頼む。」
混乱しながらも何とか自己紹介を済ませた。
「ここじゃ、なんじゃから奥を使うとしよう。」
そう言ってお婆さんが奥へと歩いて行く。クラ―ネルも後に続く。僕も行くしか無いよね?
魔道具店の奥には貴族の家の応接室を彷彿とさせる部屋があった。なるほど、貴族相手にはここを使う訳だ。
って、僕も貴族なんだけど、一度もここに来た事が無いぞ?
僕は客じゃ無くて仕入れ業者扱いなのか?
お婆さんに促されて、ソファに座る。クラ―ネルと対面する形になる。
しかし、どう見ても女の子だよな?背も低いし、華奢だ。この子があの魔法陣を作ったのか?
「ゼルマキアって言う家名、何処かで聞いた事があります。僕はあまり貴族社会に詳しく無いのですが、もしかしたら有名人ですか?」
んー、どうなんだろう?答えにくい質問が来たな。
竜王の爺さんが、歯ごたえが無くて詰まらんのぉと言って居たが、爺さんの修行じゃ無いんだからね。
その後、3時までは暇なのでお茶を飲んだり、子供たちの相手をしたりとのんびりと過ごす。
昼を回った辺りでセリーが報告に来た。
「リドリル男爵家ですがやはり無派閥の貴族ですね。クラ―ネルは第2夫人の子供で、長男が家を継いだ後は、男爵家を出る事になる様です。その為に魔法学院へ行ったと言うのが実情の様ですが、思った以上の才能があったため、男爵家では家督争いになりかねないと言う事で、クラ―ネルは事実上居ない子供と言う扱いになって居る様です。」
「ほう?複雑な事情があるんだな。リドリル男爵家の懐事情は?」
「リドリル男爵家は男爵が幾つかの商会を運営して、生計を立てています。男爵としては羽振りの良い方だと言われて居ます。」
そう言えば、男爵家は殆どが貧乏貴族だと誰かが前に言っていた気がするな。
リドリル男爵には商才がある。その男爵をもってしても息子の価値に気が付かないのか、それとも知っていてあえて平民に落としたいのかな?
「セリー、国王派でも公爵派でも構わないが、跡取りが居ない貴族が居たらリストアップして置いてくれ。出来れば子爵以上が望ましい。」
「それは構いませんが、あなたの手持ちの男爵のカードを切ると言う手もありますよ?そうすれば、ゼルマキア侯爵派として取り込めます。」
「うーん。それは最終手段として取って置きたいな。」
「解りました。では、子爵以上で候補を探してみます。」
「悪いな。こう言うのはセリーが一番上手いからな。」
さて、3時まではまだ時間があるな。メイドにお茶を頼み、ソファーに寝転がる。眠い訳では無い。考え事をする時の癖だ。
クラ―ネルは、才能がありそうなら弟子にしても面白いかなと考えている。まあ、実際に会って人柄を確認する必要はあるが、噂を聞く限りでは自分の力を上手くコントロール出来ていない感じだ。
王都の魔法学院は帝都のそれよりはマシだが、枠を飛び出る程優秀な生徒を導く程の器は無い。僕ならそれが可能だ。別に使命感がある訳では無いが、優秀な魔法使いにはある種のシンパシーがある。
まあ、僕の弟子にならなくとも古代の魔法書のコピー位は上げても良いだろう。もちろん時越えの魔法は削除するけどね。
才能によっては応用編の方もコピーしてやるぞ。
あれ?そう言えば、ブラスマイヤーはこの件を、厄介と言って居たが、あれは何の意味があるのだろう?
神になった僕は、これからどう行動するのが正しいのか、一度ブラスマイヤーに聞く必要があるな。
それから、知識が欲しいな。やはり古代の本を集める必要があるのだろうか?神界に行くと言う選択肢は現在の所無い。おそらく行ったら戻れないであろう。
神界に行って戻れる方法が見つかるまで、神界に近づく気は無い。
ローレシアはブラスマイヤーが抑えてくれることを期待している。
おそらくだが、僕は地上に居る事で何か出来る事があるはずだ。それが何かを見極めるまでは神界に行く訳には行かない。
一つ気になる事がある。何時から僕は神だったのだろう?これはキッチリと聞いて置く必要がある。何故ならば、子供の事があるからだ。神の子は一体何になるのだろう?
考え事が一段落着くと紅茶が冷めて居たのでお替りを貰う。
この世界に来る前はコーヒー党だったのだが、何故かこっちに来てから紅茶派になってしまった。これもこの体のせいかな?
と、ちょっと時間は早いが、ぶらつきながら出かけてみるかな。
30分程歩いて、商業エリアにやって来る。目的の魔道具屋は近いが、時間がまだちょっと早かったかな?まあいいか。
魔道具屋に入るとお婆さんが珍しくカウンターに座っていた。
「約束の時間にはまだ早く無いかい?」
「流石にまだ来てないか?」
「そろそろ来る頃じゃと思うが、お主もせっかちじゃのぉ。そんなんじゃ出世せんぞ。」
いや、侯爵なんだけどね。
「時間があるなら、何か面白い物でも見せてよ。何時も売ってばかりで買った事無いよね?」
「そうじゃな、お主に売れそうな物は、これかな。」
そう言って後ろの方から何やら箱を持って来た。
古そうな箱だ。お婆さんは結構雑に扱って居るけど、この店にそんなに安い物は売って無いはずだ。
「これは?」
「お主は古代語が読めるんじゃろう?だったら空けてみな。」
箱を開けると、1冊の本が入っていた。古代の文字で『魔法の新解釈』と書かれている。
ん?新解釈って何だ?むちゃ気になるじゃん。手に取ろうとしたらお婆さんがぽつりと言った。
「白金貨200枚。」
なるほど、立ち読み禁止の本屋みたいだな。まあ、お婆さんは僕が古代語を読めるのを知っているからなぁ。ストレージのコピー機能は知らないだろうが、流石にガードが固いな。
僕はストレージから麻袋に白金貨200枚を入れて取り出す。
お金を確認すると、お婆さんは箱ごと本を渡してくれた。
「お主なら、買うと思ったよ。」
「ちなみに、お婆さんは読めるの?」
「いや、私には全部は読めないさ。だが、その本が価値がある事は解る。」
「読めないのに何で?」
「魔法って言う単語は読めるからね。読める人間にはお宝だろう?」
なるほど、本を沢山扱っているうちに、魔法って単語だけ覚えたのか。つまり、この店の客には、この本を読める人間がいるって事だ。
流石は、この魔道具店の店主って所かな。
「ちなみに、僕ならこの本に、白金貨1000枚の値段が付いていても買いますよ。」
「ほう?私の目利きが間違っていたって事かい?」
「そうじゃありませんが、この本は別格です。」
「まあ、良い。お主には稼がせて貰っておるからの、祝儀だと思って置くよ。」
意外に気前が良いな。そんなに儲けたのか?
「そろそろ、時間だと思うんですが、待ち人が来ませんね。」
「あ奴は学院生じゃ、学院が終わってから、ここに来るとすれば3時少し過ぎになる。お主が時間通りに来れば、丁度良いタイミングだったんじゃがな。」
なるほど、学院が終わる時間が3時だったのか、それでこの時間を指定した訳だ。って事は、どっちみち僕は少し待つ事になる。
「僕に何か事前に言いたい事があったんですか?」
「相変わらず抜け目が無いのぉ。あ奴は、ちょっと変わった魔法使いじゃ。扱いに気を付けて欲しい。」
「変わった魔法使いですか?」
「ああ、あ奴はな、初級魔法の威力が普通の魔法使いに比べて弱い。じゃがな、中級魔法以上の威力がとんでもない。」
ん?初級が弱い?何か魔法の使い方を間違って居るんじゃないか?
「ちなみに、その言い方だと上級魔法が使えるんですか?」
「ああ、内密にしておくれよ。」
これは、実際に会って魔法を使って貰わないと判らないが、面白そうだぞ。
と、そこに店の扉が開く音がして、金髪碧眼の可愛らしい女の子が現れた。
ん?なんで、この店に、こんな子が?
「待ち人が来たようじゃな。」
「え?」
「彼が、クラ―ネル・フォン・リドリルじゃよ。」
え?彼?彼女じゃ無くて?
「初めまして。クラ―ネル・フォン・リドリルです。」
いやいや、声も女の子だぞ。
「エイジ・フォン・ゼルマキアだ。よろしく頼む。」
混乱しながらも何とか自己紹介を済ませた。
「ここじゃ、なんじゃから奥を使うとしよう。」
そう言ってお婆さんが奥へと歩いて行く。クラ―ネルも後に続く。僕も行くしか無いよね?
魔道具店の奥には貴族の家の応接室を彷彿とさせる部屋があった。なるほど、貴族相手にはここを使う訳だ。
って、僕も貴族なんだけど、一度もここに来た事が無いぞ?
僕は客じゃ無くて仕入れ業者扱いなのか?
お婆さんに促されて、ソファに座る。クラ―ネルと対面する形になる。
しかし、どう見ても女の子だよな?背も低いし、華奢だ。この子があの魔法陣を作ったのか?
「ゼルマキアって言う家名、何処かで聞いた事があります。僕はあまり貴族社会に詳しく無いのですが、もしかしたら有名人ですか?」
んー、どうなんだろう?答えにくい質問が来たな。
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