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25.追放テイマーと勇者様の能力
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グランデル王国の北にある、城塞都市『クルストル』。
私たちは、黒馬のチョコくんを追って、不思議なお店に入っていた。
棚に並んでいた水晶が、怪しい輝きを放っている。
「……呪いですか?」
「ええ。正確には、スキルなんだけどね。こんなの呪いと変わらないわよ……」
黒髪のお姉さんは、帽子を脱ぐと、近くの机に置いた。
長い髪をかき上げると、バラのような香りが流れてくる。
同性の私もドキッとするような美しい仕草に、思わず見とれてしまう。
「……ずいぶん悪質なスキルよね、こういうの嫌いなのよ」
彼女は私の瞳を見つめると、大きなため息をついた。
「あ、あの。スキルってどういうことですか?」
「……ショコラは、ショコラは大丈夫なんですか?!」
王子は真剣な表情でお姉さんにつめよる。
「ふーん? アナタ、そうなのね? うふふ、やっぱり愛って素敵だわ」
「な……!?」
彼女は、王子の肩をぽんと叩くと、嬉しそうな表情で私と王子を見比べている。
……なんだろう?
……なんだか意味ありげに見つめてるけど?
「そうねぇ。できるかわからないけど、やってみましょうか? 本当は術者以外は解除ってできないのよ?」
彼女は呪文を唱えると、手のひらから大量の水があふれ出してきた。
水は彼女の手の中で水晶のように丸くなっていく。
「貴女にかけられているのは、魅了のスキルよ」
「魅了って、魔物と戦う時に使う魔法の?」
「そうね、似てるけど違うわ。あなた方が知っている魅了は人にかからないし、効果時間も短いわ」
『魅了』。
状態魔法の一つで、魔物を惚れさせて、相手の思考や行動を奪う。
相手を倒しやすくするための補助に使われるだよね。
「大体、あの魔法にかかった魔物も、名前の通り惚れてるわけじゃないのよ」
黒髪のお姉さんは、少し怒ったような声で話を続ける。
「ただ身体や頭がマヒさせられておかしな行動をとっているだけなの。勝手に魅了されているなんて失礼な話よね!」
「そうなんですか?」
「ええ、ただし貴女にかけられているのは、別よ。正真正銘、本当の魅了だわ」
水で作られた水晶が輝きを放ちはじめて、私の体を包んでいく。
「……本当に大丈夫ですよね?」
「うふふ、アナタの大切な人なのよね? 傷つけたりしないから安心して?」
「……え? 大事な人って?」
「ちょっと、お姉さん! 魔法に集中してくださいよ!」
王子のうろたえた表情が、なんだかすごく……カワイイ。
大切な人って……別に特別な意味はないんだろうけど。
でもなんだか、嬉しいな。
あれ?
なんで……。
なんで……。
こんな時にも勇者様の顔がちらつくんだろう。
「そのスキルの効果は人によって違うんだけどね。時間をかけてじわじわとその人の心を侵食していくのよ」
「あの私、別に普通ですよ? そんなスキルにかかってないと思うんですけど」
「そうね……それが怖いのよ……。ほんとに卑怯なスキルだわ」
水の光に包まれて視界がぼやけて見えるけど、お姉さんはなんだか泣きそうな顔をしている気がする。
「人間ってなんでこんなに卑怯なのかしら。だから私たち魔王軍が……」
「……魔王軍?」
「いやねぇ、魔法国よ。魔法国。ねぇ、今貴女が想い浮かべている人の名前を言ってみて?」
優しい光につつまれて、だんだん意識が遠くなっていく。
あたたかくて……気持ちいい。
「ねぇ、今貴女を抱きしめてくれている人は誰かしら?」
「勇者様……」
「そう……。はぁ、そいつが元凶だわ……よりによって勇者ねぇ……」
**********
<<勇者目線>>
「勇者様、勇者様。はい、あーん!」
「ずるい、勇者様。こっちも、あーん?」
オレは美女二人に囲まれて豪華な食事中だ。
いやぁ、一時期はどうなるかと思ったけど、やっぱり転生チート人生最高だね!
「勇者よ、そろそろ討伐の旅にもどらないか?」
「何言ってるんだよ、ベルガルト。なんなら一人まわそうか?」
戦士ベルガルド。
勇敢で屈強な男だが、お前も所詮男だしな。
料理人として雇った女の子の一人を指さした。
「いやん、私勇者様とご一緒したいです」
「私もですー」
「ええ、こまったなぁ。そこの大男も相手してやってくれよ」
「勇者様がそういうなら……」
「おねがい」
「もう……」
女の子の一人が、ベルガルドの隣に座った。
くくく。知ってるんだぜオレは。
一見堅物そうなお前が、実は料理女子が大好きなことくらい。
ショコラが料理を担当していたときに、いつも真っ赤になって照れていたからな。
まぁ、オレにかかれば、このレベルの女くらい簡単に調達できる。
嫁候補のその一、その二、その三は渡さないけどな。
……あれは。
……あのレベルの女は、全てオレの嫁だ。
「勇者よ、そういう話ではないのだ! 今こうしている間にも魔王軍が侵攻してるのだぞ!」
「ちょっと、私の勇者様に口答えしないでよね。ほら、さっさと食べなさいよ」
嫁候補その五が、ベルガルドの口にパンを放り込んだ。
あはは、王国最強の戦士が、そんなにうろたえるとはな。
今後の働き次第では、その女はあげてもいいぞ、別に困らんし。
いやぁ、優しいなオレ。
なにせオレは世界で唯一の勇者だからな! この世界でオレに出来ないことは何もない!
「あの……国王様からも追加でお金を頂きましたし……はやく出発した方が……」
「なぁに、平気だよシェラ。オレが本気を出せば魔王なんてひとひねりだからね」
「あん……もう……ダメですよぉ……」
オレは席を立つと、精霊使いのエルフ、シェラを軽く抱きしめた。
目を合わせると、トロンとした表情で見つめ返してきた。
「全てオレにまかせてよ、装備も順調にそろってきたしね!」
オレは壁に置いてあったミスリルの盾に視線をうつす。
いやぁ、美しい輝きだ。
勇者新聞のオークションにでていたものを、国王に買わせたものだ。
魔王討伐の旅をやめるといったら、あっさり軍資金まで送ってきた。
そのうち剣が出たら、それも献上させよう。
今の剣は光らなくなってから役に立たないしな。
そういえば、あの国王の娘……ミルフィナだったか……あの子も可愛かった。
そのうちオレのハーレムに加えよう。
くくくっ、異世界の大国、グランデル王国か。
あの玉座も姫も……いずれ全てオレのものだ!!
私たちは、黒馬のチョコくんを追って、不思議なお店に入っていた。
棚に並んでいた水晶が、怪しい輝きを放っている。
「……呪いですか?」
「ええ。正確には、スキルなんだけどね。こんなの呪いと変わらないわよ……」
黒髪のお姉さんは、帽子を脱ぐと、近くの机に置いた。
長い髪をかき上げると、バラのような香りが流れてくる。
同性の私もドキッとするような美しい仕草に、思わず見とれてしまう。
「……ずいぶん悪質なスキルよね、こういうの嫌いなのよ」
彼女は私の瞳を見つめると、大きなため息をついた。
「あ、あの。スキルってどういうことですか?」
「……ショコラは、ショコラは大丈夫なんですか?!」
王子は真剣な表情でお姉さんにつめよる。
「ふーん? アナタ、そうなのね? うふふ、やっぱり愛って素敵だわ」
「な……!?」
彼女は、王子の肩をぽんと叩くと、嬉しそうな表情で私と王子を見比べている。
……なんだろう?
……なんだか意味ありげに見つめてるけど?
「そうねぇ。できるかわからないけど、やってみましょうか? 本当は術者以外は解除ってできないのよ?」
彼女は呪文を唱えると、手のひらから大量の水があふれ出してきた。
水は彼女の手の中で水晶のように丸くなっていく。
「貴女にかけられているのは、魅了のスキルよ」
「魅了って、魔物と戦う時に使う魔法の?」
「そうね、似てるけど違うわ。あなた方が知っている魅了は人にかからないし、効果時間も短いわ」
『魅了』。
状態魔法の一つで、魔物を惚れさせて、相手の思考や行動を奪う。
相手を倒しやすくするための補助に使われるだよね。
「大体、あの魔法にかかった魔物も、名前の通り惚れてるわけじゃないのよ」
黒髪のお姉さんは、少し怒ったような声で話を続ける。
「ただ身体や頭がマヒさせられておかしな行動をとっているだけなの。勝手に魅了されているなんて失礼な話よね!」
「そうなんですか?」
「ええ、ただし貴女にかけられているのは、別よ。正真正銘、本当の魅了だわ」
水で作られた水晶が輝きを放ちはじめて、私の体を包んでいく。
「……本当に大丈夫ですよね?」
「うふふ、アナタの大切な人なのよね? 傷つけたりしないから安心して?」
「……え? 大事な人って?」
「ちょっと、お姉さん! 魔法に集中してくださいよ!」
王子のうろたえた表情が、なんだかすごく……カワイイ。
大切な人って……別に特別な意味はないんだろうけど。
でもなんだか、嬉しいな。
あれ?
なんで……。
なんで……。
こんな時にも勇者様の顔がちらつくんだろう。
「そのスキルの効果は人によって違うんだけどね。時間をかけてじわじわとその人の心を侵食していくのよ」
「あの私、別に普通ですよ? そんなスキルにかかってないと思うんですけど」
「そうね……それが怖いのよ……。ほんとに卑怯なスキルだわ」
水の光に包まれて視界がぼやけて見えるけど、お姉さんはなんだか泣きそうな顔をしている気がする。
「人間ってなんでこんなに卑怯なのかしら。だから私たち魔王軍が……」
「……魔王軍?」
「いやねぇ、魔法国よ。魔法国。ねぇ、今貴女が想い浮かべている人の名前を言ってみて?」
優しい光につつまれて、だんだん意識が遠くなっていく。
あたたかくて……気持ちいい。
「ねぇ、今貴女を抱きしめてくれている人は誰かしら?」
「勇者様……」
「そう……。はぁ、そいつが元凶だわ……よりによって勇者ねぇ……」
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<<勇者目線>>
「勇者様、勇者様。はい、あーん!」
「ずるい、勇者様。こっちも、あーん?」
オレは美女二人に囲まれて豪華な食事中だ。
いやぁ、一時期はどうなるかと思ったけど、やっぱり転生チート人生最高だね!
「勇者よ、そろそろ討伐の旅にもどらないか?」
「何言ってるんだよ、ベルガルト。なんなら一人まわそうか?」
戦士ベルガルド。
勇敢で屈強な男だが、お前も所詮男だしな。
料理人として雇った女の子の一人を指さした。
「いやん、私勇者様とご一緒したいです」
「私もですー」
「ええ、こまったなぁ。そこの大男も相手してやってくれよ」
「勇者様がそういうなら……」
「おねがい」
「もう……」
女の子の一人が、ベルガルドの隣に座った。
くくく。知ってるんだぜオレは。
一見堅物そうなお前が、実は料理女子が大好きなことくらい。
ショコラが料理を担当していたときに、いつも真っ赤になって照れていたからな。
まぁ、オレにかかれば、このレベルの女くらい簡単に調達できる。
嫁候補のその一、その二、その三は渡さないけどな。
……あれは。
……あのレベルの女は、全てオレの嫁だ。
「勇者よ、そういう話ではないのだ! 今こうしている間にも魔王軍が侵攻してるのだぞ!」
「ちょっと、私の勇者様に口答えしないでよね。ほら、さっさと食べなさいよ」
嫁候補その五が、ベルガルドの口にパンを放り込んだ。
あはは、王国最強の戦士が、そんなにうろたえるとはな。
今後の働き次第では、その女はあげてもいいぞ、別に困らんし。
いやぁ、優しいなオレ。
なにせオレは世界で唯一の勇者だからな! この世界でオレに出来ないことは何もない!
「あの……国王様からも追加でお金を頂きましたし……はやく出発した方が……」
「なぁに、平気だよシェラ。オレが本気を出せば魔王なんてひとひねりだからね」
「あん……もう……ダメですよぉ……」
オレは席を立つと、精霊使いのエルフ、シェラを軽く抱きしめた。
目を合わせると、トロンとした表情で見つめ返してきた。
「全てオレにまかせてよ、装備も順調にそろってきたしね!」
オレは壁に置いてあったミスリルの盾に視線をうつす。
いやぁ、美しい輝きだ。
勇者新聞のオークションにでていたものを、国王に買わせたものだ。
魔王討伐の旅をやめるといったら、あっさり軍資金まで送ってきた。
そのうち剣が出たら、それも献上させよう。
今の剣は光らなくなってから役に立たないしな。
そういえば、あの国王の娘……ミルフィナだったか……あの子も可愛かった。
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