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9.自覚した気持ち
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「あちらの城では、ルイーズが来てからはわたくしは犯罪者扱いでした。わたくしを慮る必要はないと、王妃教育は食事も休憩もなしで早朝から深夜まで行われました。侍女に扮したリュカが先生の入れ替わりのタイミングでこっそり飲み物や食べ物を与えてくれたのでなんとかなりましたけど、あれもルイーズの魅了の影響だったのかもしれませんね」
「貴方、ルイーズの魅了を封じましょう。王女を地下牢に入れようとするなんて、ルイーズは何を考えているのよ。大方、見た目だけは派手だから自分の方が王女に相応しいとでも思っているのでしょう。教養もないのにふざけているわ。そのせいで全てカトリーヌに押し付ける事になったのよ。カトリーヌが貴方の手紙を読んでいなかったら、リュカは死んだまま。カトリーヌは地下牢に閉じ込められたままになっていたのよ! 国の危機になるまで出来れば読むな、なんて中途半端な手紙を渡すなんて貴方も甘いわ! カトリーヌは我慢強いの! そのカトリーヌが手紙を読んだのなら、余程辛かった筈よ! そもそも、カトリーヌの魔法を温存しようとするからこんなややこしい事になったんじゃないの! わたくしは言いましたわよね! カトリーヌに備わった力なのだから、カトリーヌの好きな時に使えば良いと! 何かあった時の為に娘の力を当てにするなんて、貴方は愚王になるおつもり?!」
娘と妻に冷たい視線を浴びせられたお父様は、どんどん小さくなっていきます。でも、嫌味くらい許して下さいまし。魅了の事さえ知っていれば、わたくしはさっさとリュカと城を出ていました。
ああ……わたくしもお父様と同じですわね。それに、リュカの言う事を聞いて彼から離れなければきっとリュカはわたくしを抱えて逃げられたと思います。お父様にそう言って謝れば、何故かますますお父様が小さくなっていきます。
「すまない……カトリーヌ……」
「謝らないで下さいまし。どうか、わたくしが時を戻した事をお許し下さいませ」
「私が許す権利はない。だけど、礼を言わせてくれ。時を戻してくれてありがとう。カトリーヌ、もう私は間違えない。クリストフ様のと婚約話は今のところ来ていないから安心してくれ。誕生日パーティーにクリストフ様が来るから、その時に婚約の打診をされそうな予感はしているが……絶対に断る。それには、カトリーヌが誕生日の前までに婚約していないといけないのだが……」
確かに、国力が違いますからあちらから婚約を打診されたら断れません。その前に、婚約者を大々的に発表する必要があるでしょう。
そうそう、少々意地悪ですが、お母様がわたくしに時戻しの魔法を教えてくれた事は絶対に言いません。あくまでもお父様からの手紙を読んだ事にしますわ。お母様にだけは、後でこっそりお伝えしますけど。
わたくしの婚約の話が出ると、お母様は両手をわたくしの頬に当てて慈しみながら仰いました。
「カトリーヌ、辛かったわね。わたくしはカトリーヌの婚約者にリュカを推薦するわ。命懸けでカトリーヌを守るなんて素敵じゃない。浮気なんて、リュカなら絶対しないわよ!」
「……でも、ルイーズの魅了は、魅了した者を大事に思う者にも効くようです。リュカは騎士の信頼も厚く、令嬢にも人気があります。わたくしと婚約をすれば、ルイーズはきっとリュカを魅了しようとしますわ」
リュカがクリストフ様のようになるなんて、耐えられません。
「……それは厄介ね……。貴方、どうしますか? すぐにルイーズの魔法を封じますか? だけど、封じる者を魅了されると困るわね……」
「私に考えがある。すぐにリュカをカトリーヌの婚約者にするよう伯爵に打診する」
「どうしてですか! クリストフ様の時はなんとか耐えましたけど、リュカがあんな風になったら耐えられません!!!」
今でも覚えています。クリストフ様が急に豹変した日の事を。昨日までわたくしと仲良くしてくれていたのに、急に……。クリストフ様は、婚約までに数回会った程度でしたから、そんなものかとなんとか割り切れました。だけど……リュカがわたくしを蔑んだら、あの時の比ではないくらい悲しいでしょう。たとえ、ルイーズの魅了だと分かっていても絶対に嫌です。
リュカが、ルイーズに甘い言葉を吐く姿を想像すると、吐き気がします。悲しくて、嫌で、わたくしを好きと言ったじゃないかと思ってしまいます。
ああ、そうか。
そんな事を思うなんて、わたくしはリュカが好きなのですね。友人としてではなく、ひとりの男性として。
「貴方、ルイーズの魅了を封じましょう。王女を地下牢に入れようとするなんて、ルイーズは何を考えているのよ。大方、見た目だけは派手だから自分の方が王女に相応しいとでも思っているのでしょう。教養もないのにふざけているわ。そのせいで全てカトリーヌに押し付ける事になったのよ。カトリーヌが貴方の手紙を読んでいなかったら、リュカは死んだまま。カトリーヌは地下牢に閉じ込められたままになっていたのよ! 国の危機になるまで出来れば読むな、なんて中途半端な手紙を渡すなんて貴方も甘いわ! カトリーヌは我慢強いの! そのカトリーヌが手紙を読んだのなら、余程辛かった筈よ! そもそも、カトリーヌの魔法を温存しようとするからこんなややこしい事になったんじゃないの! わたくしは言いましたわよね! カトリーヌに備わった力なのだから、カトリーヌの好きな時に使えば良いと! 何かあった時の為に娘の力を当てにするなんて、貴方は愚王になるおつもり?!」
娘と妻に冷たい視線を浴びせられたお父様は、どんどん小さくなっていきます。でも、嫌味くらい許して下さいまし。魅了の事さえ知っていれば、わたくしはさっさとリュカと城を出ていました。
ああ……わたくしもお父様と同じですわね。それに、リュカの言う事を聞いて彼から離れなければきっとリュカはわたくしを抱えて逃げられたと思います。お父様にそう言って謝れば、何故かますますお父様が小さくなっていきます。
「すまない……カトリーヌ……」
「謝らないで下さいまし。どうか、わたくしが時を戻した事をお許し下さいませ」
「私が許す権利はない。だけど、礼を言わせてくれ。時を戻してくれてありがとう。カトリーヌ、もう私は間違えない。クリストフ様のと婚約話は今のところ来ていないから安心してくれ。誕生日パーティーにクリストフ様が来るから、その時に婚約の打診をされそうな予感はしているが……絶対に断る。それには、カトリーヌが誕生日の前までに婚約していないといけないのだが……」
確かに、国力が違いますからあちらから婚約を打診されたら断れません。その前に、婚約者を大々的に発表する必要があるでしょう。
そうそう、少々意地悪ですが、お母様がわたくしに時戻しの魔法を教えてくれた事は絶対に言いません。あくまでもお父様からの手紙を読んだ事にしますわ。お母様にだけは、後でこっそりお伝えしますけど。
わたくしの婚約の話が出ると、お母様は両手をわたくしの頬に当てて慈しみながら仰いました。
「カトリーヌ、辛かったわね。わたくしはカトリーヌの婚約者にリュカを推薦するわ。命懸けでカトリーヌを守るなんて素敵じゃない。浮気なんて、リュカなら絶対しないわよ!」
「……でも、ルイーズの魅了は、魅了した者を大事に思う者にも効くようです。リュカは騎士の信頼も厚く、令嬢にも人気があります。わたくしと婚約をすれば、ルイーズはきっとリュカを魅了しようとしますわ」
リュカがクリストフ様のようになるなんて、耐えられません。
「……それは厄介ね……。貴方、どうしますか? すぐにルイーズの魔法を封じますか? だけど、封じる者を魅了されると困るわね……」
「私に考えがある。すぐにリュカをカトリーヌの婚約者にするよう伯爵に打診する」
「どうしてですか! クリストフ様の時はなんとか耐えましたけど、リュカがあんな風になったら耐えられません!!!」
今でも覚えています。クリストフ様が急に豹変した日の事を。昨日までわたくしと仲良くしてくれていたのに、急に……。クリストフ様は、婚約までに数回会った程度でしたから、そんなものかとなんとか割り切れました。だけど……リュカがわたくしを蔑んだら、あの時の比ではないくらい悲しいでしょう。たとえ、ルイーズの魅了だと分かっていても絶対に嫌です。
リュカが、ルイーズに甘い言葉を吐く姿を想像すると、吐き気がします。悲しくて、嫌で、わたくしを好きと言ったじゃないかと思ってしまいます。
ああ、そうか。
そんな事を思うなんて、わたくしはリュカが好きなのですね。友人としてではなく、ひとりの男性として。
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