12 / 63
12.報告【リュカ視点】1
しおりを挟む
「リュカ・デ・ロドラです。お呼びにより参上致しました」
「おお、よく来た。婚約式はご苦労だった。急ぎだったので華やかにしてやれなかったのが残念だが、なんとか誕生日のパーティーに間に合って良かった。結婚式は盛大にやるから楽しみにしておれ。今日はカトリーヌから絶対離れるなよ。ルイーズは呼んでおらぬ。どうか、カトリーヌを大事にしてやってくれ。婚約者になった事だし、公の場でも以前のようにカトリーヌを愛称で呼んで構わぬぞ」
「ありがたき幸せ。必ずやカトリーヌ姫を、いやカティを幸せにする事を誓います」
「うむ。その為にもリュカが知っている事を教えてくれ。報告書は読んだが、気になる点がいくつかある。カトリーヌの話では、私はクリストフ様とルイーズが不貞を働いていると分かっていてもカトリーヌの婚約を解消しなかった。カトリーヌは、自分の時戻りの魔法が貴重だから大国の王妃の方が安全だからだと言っておった。だが、未来の私がどんなに愚かでも、カドゥール国の王妃とリュカの側ならリュカの方が安全だと分かっている筈だ。大国の次期王妃は狙われて当然だからな。わざわざリュカをカトリーヌに付けている事から考えても、未来の私がカトリーヌを蔑ろにしていたとは思えない。考えられるのはカトリーヌを国外に出したかった、くらいだが……未来では国内が荒れておったのか?」
「私は騎士ですから、政は分かりません。ただ、特に飢饉などは起きておりませんでしたし、庶民は今と変わらず暮らしておりました。極端な物価の上昇もありませんでした」
「そうか。他に特筆すべきことはあるか?」
「国王陛下は、私にカティを連れて逃げても構わないと仰せになられました。あまりに不憫なら、私の判断で連れ出して良いとのご指示でした。大金を私に預けておられましたから、本気であったと推察されます。私がもっと早く見切りをつけて、ルイーズ様がいらっしゃった時点で姿を消せば良かったのですが、カティがまだ大丈夫だと言うので、クリストフ様を愛しているのだと思って滞在を続けておりました。ルイーズ様がいらしてからはカティの扱いは酷いものでした。ルイーズ様は、侍女に化けた私にも接近しましたが、私は相手にしませんでした。その時、何度もクリストフ様を尊敬していないのかと聞かれましたので不思議に思っていたのですが、今思うと魅了が効いているか確認したかったのでしょう」
「……常識的に考えて、私はあり得ぬ指示をしておるな。自分が怖い。私は何を考えていたんだ」
「申し訳ありません。国王陛下のお考えは私には分かりかねます。ただ、ルイーズ様がいらしたと報告をしたら、すぐにカティを迎えに行くとの事でしたので、カティを大事にしていたのは間違いないと思います。それから、カティがカドゥール国の王妃にならないなら託した手紙を必ず読めとの仰せでした」
「その手紙は、カトリーヌしか読んでおらぬのか?」
「誰も読んでおりません。カドゥール国では、ルイーズ様がいらっしゃってからはカティは虐げられておりました。その為、大事な物は全て私が預かっていたのです。カティが真っ先に私に託したのは国王陛下からの手紙です。未開封でしたからカティも読んでいないと思います。私は、手紙を持ったまま死んだようですから、誰の目にも触れぬままだったのではないでしょうか」
「何?! 手紙に時戻りの魔法の事が書いてあったのではないのか?!」
「カティは、手紙を渡された時には時戻りの魔法の事を知っていました。カドゥール国に私を連れて旅立つ前には知っていたと思われます」
あの時、悪戯っぽい顔でペーパーナイフを要求したカティ。きっとあの時には魔法の事を知っていたんだろう。
俺がさっさとカティを連れて城を出ていれば……あんなにカティは苦しまなかったのに。だけど、何度言ってもカティは俺が居るからまだ大丈夫だと言っていた。そんなにあの男が良いのかと嫉妬で狂いそうだったが、カティが望むならとなんとかあの浮気者を改心させようとしたんだ。
けど、何度か護衛のフリをして話を盗み聞きしたが、延々とカティの悪口を振り撒いていて殺意が増幅するだけで終わってしまった。王子が婚約者を大事にしないものだから、教師はカティに冷たくなるし、使用人も誰もカティを大事にしなかった。ルイーズ様が来てからは気持ち悪いくらいルイーズ様の話しかしなくなり、あのザマだ。
「おお、よく来た。婚約式はご苦労だった。急ぎだったので華やかにしてやれなかったのが残念だが、なんとか誕生日のパーティーに間に合って良かった。結婚式は盛大にやるから楽しみにしておれ。今日はカトリーヌから絶対離れるなよ。ルイーズは呼んでおらぬ。どうか、カトリーヌを大事にしてやってくれ。婚約者になった事だし、公の場でも以前のようにカトリーヌを愛称で呼んで構わぬぞ」
「ありがたき幸せ。必ずやカトリーヌ姫を、いやカティを幸せにする事を誓います」
「うむ。その為にもリュカが知っている事を教えてくれ。報告書は読んだが、気になる点がいくつかある。カトリーヌの話では、私はクリストフ様とルイーズが不貞を働いていると分かっていてもカトリーヌの婚約を解消しなかった。カトリーヌは、自分の時戻りの魔法が貴重だから大国の王妃の方が安全だからだと言っておった。だが、未来の私がどんなに愚かでも、カドゥール国の王妃とリュカの側ならリュカの方が安全だと分かっている筈だ。大国の次期王妃は狙われて当然だからな。わざわざリュカをカトリーヌに付けている事から考えても、未来の私がカトリーヌを蔑ろにしていたとは思えない。考えられるのはカトリーヌを国外に出したかった、くらいだが……未来では国内が荒れておったのか?」
「私は騎士ですから、政は分かりません。ただ、特に飢饉などは起きておりませんでしたし、庶民は今と変わらず暮らしておりました。極端な物価の上昇もありませんでした」
「そうか。他に特筆すべきことはあるか?」
「国王陛下は、私にカティを連れて逃げても構わないと仰せになられました。あまりに不憫なら、私の判断で連れ出して良いとのご指示でした。大金を私に預けておられましたから、本気であったと推察されます。私がもっと早く見切りをつけて、ルイーズ様がいらっしゃった時点で姿を消せば良かったのですが、カティがまだ大丈夫だと言うので、クリストフ様を愛しているのだと思って滞在を続けておりました。ルイーズ様がいらしてからはカティの扱いは酷いものでした。ルイーズ様は、侍女に化けた私にも接近しましたが、私は相手にしませんでした。その時、何度もクリストフ様を尊敬していないのかと聞かれましたので不思議に思っていたのですが、今思うと魅了が効いているか確認したかったのでしょう」
「……常識的に考えて、私はあり得ぬ指示をしておるな。自分が怖い。私は何を考えていたんだ」
「申し訳ありません。国王陛下のお考えは私には分かりかねます。ただ、ルイーズ様がいらしたと報告をしたら、すぐにカティを迎えに行くとの事でしたので、カティを大事にしていたのは間違いないと思います。それから、カティがカドゥール国の王妃にならないなら託した手紙を必ず読めとの仰せでした」
「その手紙は、カトリーヌしか読んでおらぬのか?」
「誰も読んでおりません。カドゥール国では、ルイーズ様がいらっしゃってからはカティは虐げられておりました。その為、大事な物は全て私が預かっていたのです。カティが真っ先に私に託したのは国王陛下からの手紙です。未開封でしたからカティも読んでいないと思います。私は、手紙を持ったまま死んだようですから、誰の目にも触れぬままだったのではないでしょうか」
「何?! 手紙に時戻りの魔法の事が書いてあったのではないのか?!」
「カティは、手紙を渡された時には時戻りの魔法の事を知っていました。カドゥール国に私を連れて旅立つ前には知っていたと思われます」
あの時、悪戯っぽい顔でペーパーナイフを要求したカティ。きっとあの時には魔法の事を知っていたんだろう。
俺がさっさとカティを連れて城を出ていれば……あんなにカティは苦しまなかったのに。だけど、何度言ってもカティは俺が居るからまだ大丈夫だと言っていた。そんなにあの男が良いのかと嫉妬で狂いそうだったが、カティが望むならとなんとかあの浮気者を改心させようとしたんだ。
けど、何度か護衛のフリをして話を盗み聞きしたが、延々とカティの悪口を振り撒いていて殺意が増幅するだけで終わってしまった。王子が婚約者を大事にしないものだから、教師はカティに冷たくなるし、使用人も誰もカティを大事にしなかった。ルイーズ様が来てからは気持ち悪いくらいルイーズ様の話しかしなくなり、あのザマだ。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
2,431
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる