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⑫クリストフの気持ち【リュカ視点】
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「どういうことだ。父上がイザベラを利用していると?」
クリストフは、憮然とした顔をしている。ま、自分の父親を悪く言われてるんだから当然だよな。パーティを無事に終えてカティと今後の話し合いをしていると、クリストフが訪ねてきた。
使用人も付いていたから、いつものようにクリストフにメモを渡し夜にこっそり会っている。場所は俺に用意された部屋のすぐ近くのバルコニーだ。当然、会話は漏れないよう魔法をかけてある。
少し雑談をしてから本題に入る。カティによるとイザベラ様に付けられた侍女は国王陛下の紹介だったらしい。もう黒幕決定だろ。過去のクリストフは国王陛下に大事にされていた。理想の息子だっていつも言っていた。
けど、今はそんな事言わねぇ。胸糞悪いが、国王陛下はクリストフ自身を大事にしていたわけじゃねぇんだろうな。
うちの父上達を見習って欲しいもんだぜ。
「おう、そうみたいだぜ。信じるか信じないかはクリストフ次第だけどな。なぁ、ブエ公爵は国王陛下と仲が悪いのか?」
「良いとは言えないな。ブエ公爵は僕の教師もしてくれた優秀な方だが、最近は父上とぶつかる事も多い。父上はもっと民を厳しく管理する事をお望みなんだが、宰相であるブエ公職は反対なさっている。急に厳しくすれば民の反発を招くとな。その頃くらいからだろうか、父上は僕に怒鳴ることが増えた。上に立つものはもっと強く、冷酷でないといけない、僕は優しすぎると言われているよ」
「確かに王に冷酷さは必要だけど、クリストフが俺にした事を考えると優しすぎるとは言えねぇなぁ」
「う……すまない。反省しているよ」
「からかって悪い。なぁ、クリストフが俺にブエ公職を紹介した理由を聞いていいか? わざわざ、人目につかないよう遊戯室まで連れて行ったろ?」
「リュカとブエ公職は気が合うと思ったという理由では納得しないよな」
「しねぇな」
「彼が亡命しようとしたら助けてもらえないかと思ってな」
「亡命って……危ないのか?」
「父上はブエ公爵を解任しようてしている。だが、彼はとても優秀でな。理由もなく解任など出来ないんだ。冤罪を作り出すかもしれない。だけど、ブエ公爵なら事前に気がつくことは可能だ。その時、匿って貰えないかと思っている。僕が王になってから彼を呼び戻したいんだ」
「冤罪を作り出すのは確定か?」
「父上がそんな事をするとは信じたくないから見ないふりをしていたが、リュカが教えてくれただろう? 疑問に目を背ける事は出来ない。僕は王になるんだ。僕の行動で何千人、何万人の生活や命が左右される。少しでも違和感を感じたのなら、徹底的に調べるべきだとな。だから調べた。結果、父上がブエ公爵を陥れようと、あちこちに罠を張ろうとしている事が分かった。おそらく一刻の猶予もない。出来るなら、君たちが帰る時にブエ公爵を連れて帰って欲しいくらいだ」
「そこまで分かってたんなら、イザベラ様を利用されると予想しなかったのか?」
「すまない。イザベラを利用するとは考えてなかった。父上はイザベラを気に入っている様子だったからな」
「彼女に付けられた侍女は国王陛下の紹介だそうだ。カティによると、礼儀もなっていない無礼な侍女らしいぜ。そんな人、気に入っている令嬢につけるか?」
「付けないな。侍女の罪はそのまま主人の罪になる。だから、きちんと教育した者だけを供に付ける」
「きちんと教育されていると紹介された場合はどうだ?」
「それは、信用できる者の紹介なら……そういう事か。父上め……イザベラを利用しようとしたんだな」
「相変わらず理解が早いな。なんでイザベラ様の気持ちには鈍感なんだよ……」
「む。僕は察しは良いほうだぞ」
「知ってる。けど、ある一部分に関してはものすごく鈍感だな。カティも似たような所があったし、王族ってそんなもんなのか?」
「どういう意味だ」
「なぁ、昼間になんでイザベラ様が泣きそうになっていたか分かるか?」
「僕の婚約者候補の話になった時だったな。イザベラは愛らしいがあまり賢くはないからな。最近はその事に悩んでいるようだった。もしかして、僕の発言で劣等感を刺激してしまったか?」
「近い、けど違う」
「む、何故リュカがイザベラのことを分かっているんだ。イザベラとリュカは初対面だろう。カトリーヌ王女のように長く話して友人になった訳でもないではないか」
面白くなさそうな顔をしているクリストフ。こりゃ、カティと同じで自覚してないだけか。
「初対面でも見りゃ分かんだろ。イザベラ様は可憐な方だからさぞかし人気があるんだろうな」
「リュカにはカトリーヌ王女が居るだろう! いくらモテるからってイザベラに手を出そうとするな!」
「俺はカティ以外の女性に興味はねぇよ。知ってんだろ」
「なら、何故イザベラを褒める!!!」
「クリストフこそ、なんでそんなにムキになってんだよ。俺は彼女の容姿を褒めただけだぜ。そもそも彼女はクリストフの婚約者でも恋人でもねぇだろ」
「それは……そうなんだが……」
「イザベラ様が自分以外の男に褒められたりすんのが気に入らねぇんだろ?」
クリストフは無言だ。あんま人の色恋沙汰を刺激すんのは俺の趣味じゃねぇんだが仕方ねぇ。今のとこクリストフに婚約者は居ないから自覚するなら今しかねぇ。
それにしても、国王は息子の気持ちを知ってたのかね。知っててイザベラ様を息子に処刑させたんだとしたら、だいぶやばい父親だな。
過去のこの国は今よりも民の統率が取れていた。俺には作り物みたいに見えて気持ち悪かったけどな。今は国民が生き生きしているしてるし賑やかだ。俺は今のカドゥール国の方が好きだ。
宰相一家を処刑した事で国の運営が変わったんだろうな。
クリストフは、憮然とした顔をしている。ま、自分の父親を悪く言われてるんだから当然だよな。パーティを無事に終えてカティと今後の話し合いをしていると、クリストフが訪ねてきた。
使用人も付いていたから、いつものようにクリストフにメモを渡し夜にこっそり会っている。場所は俺に用意された部屋のすぐ近くのバルコニーだ。当然、会話は漏れないよう魔法をかけてある。
少し雑談をしてから本題に入る。カティによるとイザベラ様に付けられた侍女は国王陛下の紹介だったらしい。もう黒幕決定だろ。過去のクリストフは国王陛下に大事にされていた。理想の息子だっていつも言っていた。
けど、今はそんな事言わねぇ。胸糞悪いが、国王陛下はクリストフ自身を大事にしていたわけじゃねぇんだろうな。
うちの父上達を見習って欲しいもんだぜ。
「おう、そうみたいだぜ。信じるか信じないかはクリストフ次第だけどな。なぁ、ブエ公爵は国王陛下と仲が悪いのか?」
「良いとは言えないな。ブエ公爵は僕の教師もしてくれた優秀な方だが、最近は父上とぶつかる事も多い。父上はもっと民を厳しく管理する事をお望みなんだが、宰相であるブエ公職は反対なさっている。急に厳しくすれば民の反発を招くとな。その頃くらいからだろうか、父上は僕に怒鳴ることが増えた。上に立つものはもっと強く、冷酷でないといけない、僕は優しすぎると言われているよ」
「確かに王に冷酷さは必要だけど、クリストフが俺にした事を考えると優しすぎるとは言えねぇなぁ」
「う……すまない。反省しているよ」
「からかって悪い。なぁ、クリストフが俺にブエ公職を紹介した理由を聞いていいか? わざわざ、人目につかないよう遊戯室まで連れて行ったろ?」
「リュカとブエ公職は気が合うと思ったという理由では納得しないよな」
「しねぇな」
「彼が亡命しようとしたら助けてもらえないかと思ってな」
「亡命って……危ないのか?」
「父上はブエ公爵を解任しようてしている。だが、彼はとても優秀でな。理由もなく解任など出来ないんだ。冤罪を作り出すかもしれない。だけど、ブエ公爵なら事前に気がつくことは可能だ。その時、匿って貰えないかと思っている。僕が王になってから彼を呼び戻したいんだ」
「冤罪を作り出すのは確定か?」
「父上がそんな事をするとは信じたくないから見ないふりをしていたが、リュカが教えてくれただろう? 疑問に目を背ける事は出来ない。僕は王になるんだ。僕の行動で何千人、何万人の生活や命が左右される。少しでも違和感を感じたのなら、徹底的に調べるべきだとな。だから調べた。結果、父上がブエ公爵を陥れようと、あちこちに罠を張ろうとしている事が分かった。おそらく一刻の猶予もない。出来るなら、君たちが帰る時にブエ公爵を連れて帰って欲しいくらいだ」
「そこまで分かってたんなら、イザベラ様を利用されると予想しなかったのか?」
「すまない。イザベラを利用するとは考えてなかった。父上はイザベラを気に入っている様子だったからな」
「彼女に付けられた侍女は国王陛下の紹介だそうだ。カティによると、礼儀もなっていない無礼な侍女らしいぜ。そんな人、気に入っている令嬢につけるか?」
「付けないな。侍女の罪はそのまま主人の罪になる。だから、きちんと教育した者だけを供に付ける」
「きちんと教育されていると紹介された場合はどうだ?」
「それは、信用できる者の紹介なら……そういう事か。父上め……イザベラを利用しようとしたんだな」
「相変わらず理解が早いな。なんでイザベラ様の気持ちには鈍感なんだよ……」
「む。僕は察しは良いほうだぞ」
「知ってる。けど、ある一部分に関してはものすごく鈍感だな。カティも似たような所があったし、王族ってそんなもんなのか?」
「どういう意味だ」
「なぁ、昼間になんでイザベラ様が泣きそうになっていたか分かるか?」
「僕の婚約者候補の話になった時だったな。イザベラは愛らしいがあまり賢くはないからな。最近はその事に悩んでいるようだった。もしかして、僕の発言で劣等感を刺激してしまったか?」
「近い、けど違う」
「む、何故リュカがイザベラのことを分かっているんだ。イザベラとリュカは初対面だろう。カトリーヌ王女のように長く話して友人になった訳でもないではないか」
面白くなさそうな顔をしているクリストフ。こりゃ、カティと同じで自覚してないだけか。
「初対面でも見りゃ分かんだろ。イザベラ様は可憐な方だからさぞかし人気があるんだろうな」
「リュカにはカトリーヌ王女が居るだろう! いくらモテるからってイザベラに手を出そうとするな!」
「俺はカティ以外の女性に興味はねぇよ。知ってんだろ」
「なら、何故イザベラを褒める!!!」
「クリストフこそ、なんでそんなにムキになってんだよ。俺は彼女の容姿を褒めただけだぜ。そもそも彼女はクリストフの婚約者でも恋人でもねぇだろ」
「それは……そうなんだが……」
「イザベラ様が自分以外の男に褒められたりすんのが気に入らねぇんだろ?」
クリストフは無言だ。あんま人の色恋沙汰を刺激すんのは俺の趣味じゃねぇんだが仕方ねぇ。今のとこクリストフに婚約者は居ないから自覚するなら今しかねぇ。
それにしても、国王は息子の気持ちを知ってたのかね。知っててイザベラ様を息子に処刑させたんだとしたら、だいぶやばい父親だな。
過去のこの国は今よりも民の統率が取れていた。俺には作り物みたいに見えて気持ち悪かったけどな。今は国民が生き生きしているしてるし賑やかだ。俺は今のカドゥール国の方が好きだ。
宰相一家を処刑した事で国の運営が変わったんだろうな。
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